灰燼の少年

櫻庭雪夏

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本編【シャーロット】

昇進祝いパーティー3

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 建物の中も相変わらず人がひしめき合っている。 
 パトリックと同様、軍の礼服を着ている軍人も多くいる。
 その奥に、一際目立つシャーロットの姿があった。
 金髪碧眼。長い髪を後ろでまとめ、薄ピンク色のドレスを着ている。
 「これじゃあ近づけないねぇ」
 パトリックが言う。
 「そうですね」
 カレンが答える。
 この間もパトリックの様子を観察していたロイとアリスは、意外と普通の兄妹の会話が行われていることに驚いた。
 「仕方ないから、並ぼうか」
 パトリックは、にっこりとしながらシャーロットまでの長蛇の列を指さして言った。
 三人は同意し、列に並んだ。
 待ち時間の間、四人は他愛もない会話を交わした。
 「二人はどうやって仲良くなったの?」
 パトリックが訊ねる。
 「カレンさんの転校初日に、僕が貧血で倒れて、それで医務室まで来てくれたカレンさんと意気投合したんです」
 「ふーん。そんな感じだったんだ~。もしかして、付き合ってるの?」
 パトリックが微笑む。
 ロイは小さく頷いた。
 「え? 本当に?!」
 ところが、カレンがそれを否定する。
 「兄さん、違います! 付き合ってるっていうか……!」
 「なに?」
 「本当ですよ、パトリックさん。僕とカレンさん、付き合っているんです」
 (あ~っ……)
 カレンは顔から火が出る思いだった。
 そして何より、パトリックの反応に怯えた。
 カレンがまだ教えていない秘密について、ロイはまだ知らない。
 パトリックは驚きの言葉を口にする。
 「そうかぁ。そうなんだあ~。でもロイくん、一応言っておくんだけど、僕とカレンは許嫁みたいなもんなんだよ」
 パトリックは祝福しているとも言えないような薄ら笑みを浮かべている。
 「……は?」
 「え?」
 ロイもアリスも絶句した。
 兄と結婚だなんて。
 「そ、そうなの……、実は家だとそういう扱いっていうか……」
 カレンはバツが悪そうに弁明した。
 「なんだよ、カレン? 全然教えてあげてないじゃないか~」
 パトリックは陽気にカレンの肩をポンと叩いた。
 「兄さん……」
 「別にいいんだよ? 厳密には、オレはあくまで『候補』ってことになってるし、まだ分からないしね」
 「どうして結婚できるんですか? 兄妹でしょう?」
 アリスが訊ねる。
 「ああ、それはね、オレとカレンは血が繋がってない、腹違いの兄妹だから、親戚扱いなんだよ」
 「親戚か……」
 「二人が付き合うことに関しては、オレは異論ないから大丈夫だよ。そのままお付き合いを楽しんでね」
 パトリックは余裕の表情で言うと、にっこりと微笑んだ。
 パトリックの言うことが本当なら、今のロイはパトリックの恋のライバルということになる。 
 ロイは、それに従うかのようにカレンの腕を掴んで「ちょっと来てください」と強引に列を抜け、人目につかない場所を目指して去っていった。
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