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ありのままの貴方で
ありのままの貴方で3
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「よ、悠人。調子はどうだ?」
道尾さんへの依頼が入った翌日、僕は恭太とファミレスで昼食を食べていた。昨夜、ふと思い出したことを確かめるために会えないか相談したところ、昼飯のドリンクバーを僕が奢るという条件で来てもらった。
「まあまあ慣れてきたよ」
「だよな。前に会った時よりも顔色いいし」
「この前会ったときって、そんなに死にかけてた?」
「ぼちぼちな」
確かに前回恭太と会った頃はバイトを始めたばっかりでちょっと自信を無くしていた時期だったけど、そこまでひどい自覚はなかった。朗読がメインとはいえ対面で仕事をするわけだし、気をつけた方がいいかもしれない。
「恭太は相変わらず練習に熱が入ってそうだね」
以前会った時より恭太は日焼けが濃くなっている気がするし、体もさらに引き締まったんじゃないだろうか。
「もうすぐ駅伝だしな。冬の駅伝の方が本番っちゃ本番だけど、その前哨戦みたいなところあるからさ」
恭太はニッと笑ってハンバーグを一かけ口に運ぶ。そう、駅伝だ。前回会った時、『エースの先輩が不調でその枠に滑り込んだ』と言っていたことを思いだした。それは今回の依頼と重なる部分が多くて、実際に道尾さんのところに宅配に行く前に参考になる情報がないか知りたくて恭太を呼び出した。
「あのさ、恭太。陸上部に道尾翔って人いる?」
「ん、翔先輩? 同じ長距離の先輩だけど、なんで?」
「ああ、いや。お客さんと話したときに道尾さんの話になって。どんな人なのかなっていう興味本位」
基本的に依頼に関する情報は他言無用だけど、ギリギリ嘘にならなさそうな聞き方をしてみる。じゃないと、僕が急に道尾さんのことを尋ねるのは不自然過ぎるし。
「どんな人っていってもなあ。とにもかくにもうちのエースだよ。入部した頃から部内じゃ圧倒的だったらしくて、翔先輩が入ってから、うちの部は駅伝で勝負できるチームになったってくらいだし」
幸い恭太は僕の説明にあまり疑問を抱かなかったようで、サラダを頬張りながら説明をしてくれる。
「やっぱり長距離のエースって、かなりストイックな感じの人なの?」
「長距離選手は多かれ少なかれストイックな人が集まる種目だと思うけど。確かに翔先輩はその中でも自分に厳しい部分は強い気がするな」
なるほど。自分に厳しい人だから不調になった自分を許せないという流れはあるのかもしれない。思い描いていた道尾さんの人物像を少しずつ切り替えていく。
「今も実力は部内じゃ頭一つ抜けてるんだけど、今年は春から調子悪くてさ。それで今度の駅伝メンバーに入れなくて」
複雑そうな面持ちの恭太のフォークが鉄板の上の何もないところをカツカツと叩く。
「それで俺がメンバー枠に滑り込めたわけだけど、やっぱり本当は全員が万全の状態で自分で勝ち取りたかったよな。翔先輩の代わりは俺じゃまだ全然務まらないわけだし」
「なるほど。それじゃあ、流石の道尾さんも凹んでる感じなの?」
何も刺さっていないフォークを口元に運びつつ、恭太はんー、と小さく天井の方を見る。
「いや。怪我をしたわけじゃないからずっと練習には来てるし、調子悪いなりに練習を引っ張ってくれたりするし、いつもの翔先輩って感じだな」
おや。それだと木下さんから聞いている話と少し違う気がする。当然、後輩に見せる姿と幼馴染に見せる姿は違うだろうけど、恭太はその辺りの勘は鋭い。だからわざわざ事前に話を聞いておこうと思ったのだし。
「ああ、でも、最近は合練後に来て一人で練習するみたいなのが増えた気がするな。就活が忙しいのかもしれないけど。でも、次の長距離パート長は間違いなく翔さんなんだよな」
最終的に恭太はフォークを皿の上に置いて、らしくないため息をついた。
「いつまでも翔さんに頼ってるんじゃなくて、翔さんを支えられるようにならないといけないんだろうな」
道尾さんへの依頼が入った翌日、僕は恭太とファミレスで昼食を食べていた。昨夜、ふと思い出したことを確かめるために会えないか相談したところ、昼飯のドリンクバーを僕が奢るという条件で来てもらった。
「まあまあ慣れてきたよ」
「だよな。前に会った時よりも顔色いいし」
「この前会ったときって、そんなに死にかけてた?」
「ぼちぼちな」
確かに前回恭太と会った頃はバイトを始めたばっかりでちょっと自信を無くしていた時期だったけど、そこまでひどい自覚はなかった。朗読がメインとはいえ対面で仕事をするわけだし、気をつけた方がいいかもしれない。
「恭太は相変わらず練習に熱が入ってそうだね」
以前会った時より恭太は日焼けが濃くなっている気がするし、体もさらに引き締まったんじゃないだろうか。
「もうすぐ駅伝だしな。冬の駅伝の方が本番っちゃ本番だけど、その前哨戦みたいなところあるからさ」
恭太はニッと笑ってハンバーグを一かけ口に運ぶ。そう、駅伝だ。前回会った時、『エースの先輩が不調でその枠に滑り込んだ』と言っていたことを思いだした。それは今回の依頼と重なる部分が多くて、実際に道尾さんのところに宅配に行く前に参考になる情報がないか知りたくて恭太を呼び出した。
「あのさ、恭太。陸上部に道尾翔って人いる?」
「ん、翔先輩? 同じ長距離の先輩だけど、なんで?」
「ああ、いや。お客さんと話したときに道尾さんの話になって。どんな人なのかなっていう興味本位」
基本的に依頼に関する情報は他言無用だけど、ギリギリ嘘にならなさそうな聞き方をしてみる。じゃないと、僕が急に道尾さんのことを尋ねるのは不自然過ぎるし。
「どんな人っていってもなあ。とにもかくにもうちのエースだよ。入部した頃から部内じゃ圧倒的だったらしくて、翔先輩が入ってから、うちの部は駅伝で勝負できるチームになったってくらいだし」
幸い恭太は僕の説明にあまり疑問を抱かなかったようで、サラダを頬張りながら説明をしてくれる。
「やっぱり長距離のエースって、かなりストイックな感じの人なの?」
「長距離選手は多かれ少なかれストイックな人が集まる種目だと思うけど。確かに翔先輩はその中でも自分に厳しい部分は強い気がするな」
なるほど。自分に厳しい人だから不調になった自分を許せないという流れはあるのかもしれない。思い描いていた道尾さんの人物像を少しずつ切り替えていく。
「今も実力は部内じゃ頭一つ抜けてるんだけど、今年は春から調子悪くてさ。それで今度の駅伝メンバーに入れなくて」
複雑そうな面持ちの恭太のフォークが鉄板の上の何もないところをカツカツと叩く。
「それで俺がメンバー枠に滑り込めたわけだけど、やっぱり本当は全員が万全の状態で自分で勝ち取りたかったよな。翔先輩の代わりは俺じゃまだ全然務まらないわけだし」
「なるほど。それじゃあ、流石の道尾さんも凹んでる感じなの?」
何も刺さっていないフォークを口元に運びつつ、恭太はんー、と小さく天井の方を見る。
「いや。怪我をしたわけじゃないからずっと練習には来てるし、調子悪いなりに練習を引っ張ってくれたりするし、いつもの翔先輩って感じだな」
おや。それだと木下さんから聞いている話と少し違う気がする。当然、後輩に見せる姿と幼馴染に見せる姿は違うだろうけど、恭太はその辺りの勘は鋭い。だからわざわざ事前に話を聞いておこうと思ったのだし。
「ああ、でも、最近は合練後に来て一人で練習するみたいなのが増えた気がするな。就活が忙しいのかもしれないけど。でも、次の長距離パート長は間違いなく翔さんなんだよな」
最終的に恭太はフォークを皿の上に置いて、らしくないため息をついた。
「いつまでも翔さんに頼ってるんじゃなくて、翔さんを支えられるようにならないといけないんだろうな」
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