婚約破棄から始まるバラ色の異世界生活を謳歌します。

TB

文字の大きさ
36 / 58
連載

第75話 スパリゾート共和国が出来るまで⑮

しおりを挟む
「アスカよ。飛空船同士の戦闘になった場合は、勝ち目はあるのか?」
「ゼクス君がアダムスと1対1であれば、いい勝負になるかも知れませんが、狂った射手が無差別で攻撃をしてくる危険性が高いので、味方を守ろうとするゼクス君は本来の実力を出し切れないかも知れませんね」

「フリオニールの艦はどうなんだ?」
「艦体の性能は高いですけど…… パイロットがフリオニール様かブルック君だとアダムス相手には厳しいかもしれませんね…… ただ……」

「ただ、どうした?」
「魔導砲の射手を、もしキャサリンさんがやるなら、あり得ない威力の攻撃をする可能性がありますから。一撃勝負なら十分勝負になるかも」

「そうか、取り敢えずは国境に急ごう」
「了解です陛下」


 スパローがビスティア国境に向かい、ゼクス君に念話を入れる。
『そっち方面にライトニングアローが向かってるそうだけど、確認できてる?』
『えっ、情報ありがとうございます。まだ視認は出来ていません』

 そう返事をした直後に、上空から魔導砲による攻撃があった。
 僚艦である王国空軍の飛空船に直撃して、一隻が墜落して行く。
『カール、墜落艦の救助に向かってくれ。俺はライトニングアローを撃ち落とす』
『了解です。すぐに向かいます』

 飛空船は結界を展開すると魔導砲の砲撃も出来ない為に、戦闘中は基本的に結界を張らない為に、上空からの奇襲は防ぐ手立てが無かったのが災いしてしまった。

 ゼクシードはすぐに高度を上げると、戦闘態勢に入った。
「サバド、魔導砲を頼む」
「了解です王子」

 一気に上空へ向かいながら、サバドの得意属性である風属性の攻撃を繰り広げるが、敵艦の巧みな操縦により、躱される。

 ゼクシードとライトニングアローはほぼ同型の艦で、魔導砲の砲門も前後に1門ずつ備わっている。
 激しく位置取りを争いながら、空中戦が繰り広げられた。

 どちらも、相当に素早く決定打にかけていたが、マリアンヌの砲撃手としては下手くそすぎる攻撃が明暗を分けた。

「マリアンヌお前は何処を狙らっているんだ。まったく見当はずれな攻撃ばかりしやがって」
「ダニエル様だって全然当たらないじゃ無いですか。文句言わないで下さい」

 そう言いながらヤケクソで放った攻撃が、セオリー道理に避けるゼクス艦の意表を突き、後部魔導砲に着弾して破損させた。
「砲手の救護を優先だ。一度上空に退避する」

「ほらー当たったじゃ無いのよ。狙っても当たらないんだから、この方が良いんだって」
「くっ…… まぁそれもありなのか……」

「早く、とどめを刺してよダニエル様」
「アダムス、艦首をまっすぐゼクシードに向けろ。撃ち落とす!」

 そして素早く、アダムスが、艦首の向きを調整した時に遥か遠距離からの魔導砲が発射され、今度は、アダムス艦の主砲に直撃した。

 梟雄ダニエルを巻き込んで……

「えっ? ええっ? ダニエル消えちゃったじゃ無いのよ。どうするのアダムス」
「あれは、スパローからの攻撃ですね。あの距離から攻撃を当てるなど、恐らく砲手がアスカ様でしょう。主砲が無いこの状態では、対応は難しい」

 そう会話をしているうちに、今度はゼクス艦からの攻撃により、ライトニングアローの船体部分に、直撃弾を受けた。

「だめだ、不時着します」
「ええっ? そんな逃げれるの?」

「この状態では、ゼクシードとスパローを相手取るのは無理です。艦を放棄して、通商国の傭兵団に紛れ込む方が、生き残れる可能性は上がります」
「何よ、口ばっかりの役立たずね。早く降ろしなさい」

 その時だった。
 東の空から、もう一隻の飛空船。
 エレガントフリルが現れ、特大の聖属性の魔導砲が、打ち出された。

 アダムスは反射的に、マリアンヌの手を引き飛空船から飛び降り、パラシュートによる下降を始める。

 ライトニングアローは、前半分を消失させて、墜落して行った。
「どうやら、ギリギリ間に合ったようだな。主役の登場よ!」

 そう言いながら、パラシュートで下降する2人の側にブルックが艦を着陸させる。

「マリアンヌ、派手にやってくれたな。ギルノア王国第1王子フリオニールがお前を滅する」
「ハッ? あんた、フリオニール様なの? 気持ち悪い女装集団の変態じゃない? 私に捨てられてそっちの道に目覚めちゃったのね。可哀そう~。今なら私を助ければ、また前の様に好きなだけ抱かせてあげるし、男に戻してあげるよ?」

「……黙れ、雌豚。この高貴なる姿を理解も出来ないとは、お前を野放しにしてしまった責任は俺にある。大人しく首を差し出せ」
「誰が変態にやられるもんですか、逃げるに決まってるでしょ?」

 その時になると、ゼクシードとスパローも辿り着き、周りに着陸をした。
「この状態で逃げれる訳無いだろ。それにお前を一番憎んでいるのはこの俺だ」
「なっ、アダムス…… あんた…… この裏切り者……」

 アダムスが、腰に着けていた剣でマリアンヌの胸を突き刺し、そのまま自分の首筋に刃を当てると思い切り、剣を引き抜いた。

 アダムスの首は、体から離れ転がり、マリアンヌもその場で大きな腹を抱えたまま死に絶えた。

「陛下、ライトニングアローの討伐完了いたしました」
「うむ、フリオニール確かに確認した。だがまだ戦は終わっておらぬぞ。帝国を殲滅する。ゼクスはこのままビスティアを守り抜け。帝国北部とビスティア南部の国境線がかなりの兵力が出ておった。しかも民が戦っている。戦に民を巻き込む物では無い」

「はっ、ご助言痛み入ります」
「フリオニール様は、そのまま帝都へ向かって下さい。私はスープラ君とイービル領の守りを確認した後に、向かいます」

「さぁ皇帝の首を引っこ抜きに行くわよ! フリルちゃん」
「はい! カトリーヌお姉様」


 その場に転がる2つの遺体を眺めていた、ミカ様が私と陛下に訴えかけて来た。

「アダムスは、きっとマリアンヌとダニエルに騙されて嵌められたんだと思います。私の大切な部下を、弔う事をお許しいただけませんか?」

「ミカ、お前を窮地に追い込んだ相手であっても許すのか? お前の大切な領民も大勢巻き込まれたんだぞ?」
「はい、領民の方々と共に弔いたいと思います。すべては私の責任です」

「解ったお前のしたいようにしなさい」
「ありがとうございます陛下」

 ミカにより、アダムスの遺体は回収され、アスカはライトニングアローの機体をマジックバッグへと収納して、イービル領の国境へと飛び立った。
しおりを挟む
感想 183

あなたにおすすめの小説

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。