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第81話 スパリゾート共和国が出来るまで⑲

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「陛下、フリオニール様から連絡が入りました。帝城は制圧をして皇帝と宰相の二人を処刑したと」
「ほう、甘ちゃんのフリオニールにしては上出来じゃねぇか。アスカに連絡して終戦だって言ってやれ。もう少しだけ見張りを頼むと伝えろ。パトリオット達が戻って来たら一緒に帝城に向かう」

 それから1週間をかけ、戦後処理に奔走し、今日は帝国の帝都ゾイドーラにこの大陸中の国の国家元首と宰相が集められた。

「いつまでも国同士で争っている時代は終わりだ。これからはまずこの大陸で新しい秩序を作り上げる」

 ギルノア王国のペルセウス国王が高らかに宣誓した。

 まず新しい秩序として、大陸政府を立ち上げる。
 初代大統領として、ペルセウス・ギルノアが就任する。

 それに伴いギルノア王国は、第1王子フリオニールが即位してギルノア王国の国王となると発表された。

 同時に、ユグドラ王国の王女であるキャサリンとの婚姻も発表された。

「へぇ、フリオニール様いつの間にそんな事になったんだろ? マリアンヌと比べたら月とスッポンだね」
「だよね。イスメラルダ。あなたもそろそろ嫁ぎ先決めないと、ずっと私の側に居ると行き遅れちゃうよ?」

「そう言うアスカはどうなのよ? もう20歳になっちゃうんだよ?」
「私は、ミカ様にジャンガードの事もお願いされてるし、まだ当分忙しいよ」

 イスメラルダと今回の事を、他人事の様に話していると、聖教国のヘルメス教皇が話し掛けて来た。
「アスカ様、イスメラルダ様お久しぶりです」
「どうしたんですか? 教皇猊下に様付で呼ばれる程偉くは無いですよ私達は? ただの引退した元聖女なだけですから」

「何を仰ってるんですか? 本当に力を持つものが誰なのかは、私は履き違えませんよ? アスカ様は戦争の起きない情況を望まれるのでしょう?」
「勿論そうです」

「それでしたら私の提案を受け入れるべきです。聖教国は皇都以外のすべての領土の主権を放棄し、スパリゾート国へ併合されることを望みます」
「ちょ、ちょっと何言われてるんですか? スパリゾートはギルノアの領地で国ではありませんし、あり得ないです」

「アスカ、俺が既に認めた。ギルノアだけが力を持ち過ぎる状態は望ましくない。ビスティアもあるが、ゼクスはフリオニールに強く文句を言う事は性格上しないだろう。アスカには流石にフリオニールも今更頭が上がらん。大陸政府の公認の下スパリゾート国として独立しろ。旧帝国は東部をビスティア。帝都を含む中央部分をスパリゾート。西部をギルノアが管轄し、替りに今回我がギルノアに協力してくれた、西部の6か国にスイーティオの開発していた辺境領と敵対した4か国の国土と共に分け与え、協力体制を固める」

「陛下…… そんな、帝国の3分の1とかどれだけ広大なのですか?」
「中央部だから帝都を含めて5000万の国民を有する。帝国は国として残らぬから300あった貴族家も全て廃止だ。スパリゾート領と同じような州知事制を導入して。国民の直接選挙で州知事を選任する事になる」

「ギルノアやビスティアの貴族家はどうされるのですか?」
「現状はまだ手を付けぬが、貴族制度自体が大陸では必要なくなっていくであろうな。これからは民族の垣根を超えた差別の無い制度を作り上げて行く為に、協力してくれアスカ」

「ヘルメス教皇はどうなさるのですか?」
「アスカ様、世界の流れの中で戦争の一番の原因は宗教で御座います。大陸政府の唯一の公認宗教として我が女神聖教が公認される事になり、大陸中で3億の信者を持つ事になります。とても国の政治などやっている場合じゃございません。聖教国の国民たちはみな、アスカ様とイスメラルダ様の2大聖女を、尊敬しておりますのですぐに馴染んでいただける筈です。私自身も皇都からスパリゾートの聖地まで1年に一度は大巡礼と称して訪れる様にしますから、その時期は大陸中から巡礼者が訪れる事になるでしょう」

「なんだかうまく、利用されちゃってますね。大人って怖いわ」


 ◇◆◇◆ 


 ビスティアと帝国の国境で行われていた戦闘においては、ゼクス君が飛空船で向かって、帝国兵に対して戦争の終結を宣言する事で収まりを見せた。

 100万の帝国兵は半数が失われ、武装解除を施されて放逐された。
 その、指揮力の高さが国民からも認められ、まだ成人前ではあったがビスティア王国を正式に相続する事になった。


 ◇◆◇◆ 


 ギルノア王国は、オリオン公爵を宰相として、セーバー君、ゲイル君、ブルック君の3人と、兄弟では実弟のフルフト様だけが残り、他の兄弟は広大になり過ぎたスパリゾート共和国をお手伝いして貰う事になった。
 ハーフエルフのアレキサンダー様と、半獣人のゼータ様は、差別の無い大陸政府のお手伝いの為に、ペルセウス大統領をサポートされている。

 ミカ様は「失われた住民や部下に誓いを立てたから」と言って、陛下に頼み、ジャンガード領を、独立国として納める事になった。

 大きく住民の数は減ってしまったが、帝国が無くなった事により、軍人に大量の失業者が出た事で、家族ぐるみの移民を求める事になり、一気に20万人も流入してきた。
 家や土地の整備が流石に間に合わないので、私も結構フルでお手伝いしたよ!

 ジャンガードは開発が出来れば、南の大陸へ向かう為の要所となる為に、今後の発展は楽しみな土地ではあるからね。


 ◇◆◇◆ 


「スープラ君、ダルド君。今後の飛空船の運用についてなんだけどさ」
「アスカ様、その件は我々も色々と思う所があり、考えました」

「へぇ、どんな風に?」
「悪用を避けるために、すべての飛空船には自爆装置を付けるべきだという結論に達しました」

「それはまた極端だね……」
「自爆装置は、誰が管理するの?」

「大陸政府大統領と、飛空船の所有者であるアスカ様の合意の上でが望ましいと思います」
「成程ね、異論は無いわよ。それでねダルド君。ブリュンヒルドと、ライトニングアローを新しく作りたいの。素材は大体回収してあるけど、今度は砲撃に対しての自動結界を、飛空船に直接組み込みたいんだよね。出来るだけ早く艦隊を完成したいんだけど頼んでも良いかな?」

「お任せくださいアスカ様。大陸全体と言う事なら今後は交戦能力の無い、客船としての大型飛空船も作りたいと思いますが、進めてもよろしいでしょうか?」
「そうだね、今回の戦争で他国の人達にも、飛空船の存在だけは知られちゃってるし、平和利用であるなら良いと思うよ」

「アスカ様…… その肩に乗ってるのってシルバですよね?」
「うんそうだよ?」

「見る度に小型化してるのは何故ですか?」
「さぁ?」

 そう返事をするとシルバがペロッと、ほっぺたを舐めてくれた。
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