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ローズマリア編1.アランと婚約
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ローズマリアが魔力判定を受ける一年前、9歳の時に同じ年齢のフォード伯爵家のアラン・フォードとの婚約が決まった。
アランは伯爵家の嫡男で、公爵家二女であるローズマリアが嫁入りするには家格が合わないと思われたが、王妃様のお茶会に参加した際、ローズマリアがアランを気に入り、アランの伯爵家が公爵家からの打診を受けるかたちで婚約が決まった。
王子妃様のお茶会で初めて出会い、同じテーブルで隣だった2人は、特に話すこともなかった。
ただ、アランが持っていた本にローズマリアが驚き、アランに声をかけた。
それは、今よりさらに幼い頃に読んでもらった本だった。
また読んで欲しかったのに、幼いローズマリアには題名が思い出せなかった。
王子様だけが描かれた表紙だと思い込んでいたが、メインは竜だった。
大きな竜の横に小さく記憶にあった王子様が描かれていた。
本の題名は、竜と秘密の冒険者だった。秘密の冒険者が王子様だったという話しだ。
だから王子様の本って言っても、誰もわかってくれなかったのね…
アランに声をかけ、その本が好きなのか聞いた。するとそうでもないと言う。
アランは、この王子様のように、竜に助けてもらいながら悪事を裁き、悪者を剣でやっつける事は自分には出来ない、でもこの竜のような優しさは好きだと言った。
おっとりした、どこか頼りない雰囲気のアランに、ローズマリアは一緒にいて心が温かく穏やかになるのを感じた。
年に2回の王妃様のお茶会、次の会にもアランはいた。
前回のお茶会のあと、お父様にアランにまた会いたいと何度か伝えた。お父様はフォード伯爵家の事を秘密裏に調べていたようだ。
表向きは問題が無い貴族でも、裏を調べると暗い部分があることはよくあった。しかし、フォード家に後ろめたいことは欠片もなかった。
公爵家からの、次のお茶会も必ず参加して欲しいという要望に、伯爵家が否と言えるわけもなく、必要以上に緊張したフォード伯爵夫人と、その母の様子を気にするアラン少年は、案内された席に着いた。
しばらくするとローズマリアがやってきた。
なぜか前回と同じく、ローズマリアが隣だったアランはどこかホッとした。
「こんにちはアラン様。今日もお隣の席で嬉しいわ」
ローズマリアがアランを見て微笑んだ。
前回も少し思ったが、ローズマリアの若草色の瞳がとても綺麗だった。
ご挨拶は、必ず自分よりも家格が上位の貴族から声をかけられてからだ。
「こんにちはローズマリア様、今日も隣ですね。今日は花の図鑑を持ってきてみました」
アランは少し伺うようにローズマリアを見る。
「まあ!前回の私の話しを覚えてくれていたの?」
ローズマリアの驚く顔も可愛いと思った。
「この庭の薔薇の品種が多くて、僕もわからなかったので。それとローズマリア様が知りたいと言っていた薔薇も、この図鑑に載っていました」
「まあ!それも覚えていて調べてくれたのね!嬉しいわ!」
アランは、ローズマリアが自分で椅子を動かし、アランの椅子の横に近づけたのも嬉しかった。
ローズマリアの母で、ダルトン公爵夫人が、
「まあローズマリア、はしたないのでは?」
とローズマリアに声をかけると、
「はいお母様、ごめんなさい。メイドが来てくれるのを待ちきれなくて」
公爵令嬢らしからぬ行動だったのだろう、だがアランは、ローズマリアがこういった枠にとどまらない行動をすることに興味を持った。
ダルトン公爵夫人からは見えないように、アランにふふふっと笑顔を見せると、アランの椅子の横にぴったりと付けた自分の椅子にヒラリと座って、
「アラン様、図鑑の薔薇のところを見せて下さい!」と言った。
図鑑を覗き込む2人の時間は楽しかった。
たまにローズマリアのフワフワの髪が、自分の頬や手に触れるのがくすぐったくて、胸がトクトクと鳴った。
そのあとは、図鑑を持って広い庭に行き、花の名前や花言葉を調べながら、2人で時間も忘れて楽しんだ。
夢中で花を探していると突然後ろから、俺は伯爵家だというアランより少し体の大きな男の子が声をかけてきた。
そんな花に興味のある弱いやつより、武術の訓練をしている俺の方が強くてカッコいいからと、ローズマリアの手を引こうとした。
ローズマリアを見ると、顔が強張っていたので慌てて間に入った。
「なんだよお前、どけよ。弱いくせに」
このお茶会に護衛は大勢いるが、王子殿下の婚約者や側近、優秀な官僚を見出だす目的もある。
この場での子息令嬢の揉め事には、本人たちの解決能力も見定めたいため、余程の事がない限り静観するよう指示されている。
アランは自分が弱いことは知っている。
でも、この目の前の無礼者に負けたくなかった。
「なぜ退かないといけないの?君は勝手にダルトン公爵令嬢に触ろうとしただろ?」
「うるさい、お前みたいなやつとじゃ退屈だから、俺が相手をするんだ。そんなつまらない本しか知らないのか?そんなもの見てなんの役に立つ?マヌケめ」
今の時まで、ローズマリアと夢のように楽しい時間を過ごしていたのに、この令息に台無しにされアランは腹が立っていた。
「なんの役に立つか?教えてあげるよ。ここに咲いている薔薇の名前を知っているか?」
「ははは!こんな花の名前を知って強くなれるのか?興味ないね」
「知らないのか?とても大切な知識だから教えてあげるよ。
この薔薇は薄い黄金色に咲く、花弁の多い薔薇だけど、大輪を開いてから少しずつ中心から若草色に染まっていく、とても珍しい薔薇だ。
花言葉は、愛を捧げるだ。
そしてこの薔薇の名前は、ローズマリアだ」
「…っ!おっ、お前なんかっ…!」
顔を真っ赤にして、芝生を土ごとアランに蹴りあげると、振り返ってお茶会会場の方に戻っていった。
戻った先に、彼の母親らしき夫人がその息子の話しを聞いたのだろう。驚いたように両手を口にあて、こちらを睨むように見ていた。
後日、アランのフォード伯爵家にその伯爵令息の家から抗議の手紙が届いた。
仲良く遊ぼうとした我が家の息子を侮辱し嘲笑った、初等部に通うようになったら気を付けるようにと、暗に脅すようなことも書かれていた。
アランを大切に育てているフォード夫妻は、アランがそんなことをするとは信じられず、本人もそんなことはしていないという言葉を信じている。
この一方的な物言いの相手に、言った言わないのやり取りをしても埒が明かないだろうと思ったフォード伯爵は、ダルトン公爵家からお茶会に参加して欲しいと言われ参加したのもあり、ダルトン公爵に相談した。
手紙を送ってすぐに、何も心配ない、この件は公爵家に任せて欲しい、アランの名誉が傷付くことはないとすぐに返事が届いた。
この一件を忘れた頃に、その伯爵家の一族全員が、隣国トルランのさらに向こうの国へ移住したと噂に聞いた。
この伯爵家の末端の商会が、違法薬物の輸入に携わっていたことが明るみになり、一族全員国外追放処分となり、その伯爵の5代先までこの国カイザルへの入国は禁止となった。
もともと黒い噂があったが、ここにきて突然捜査対象になったそうだ。
そして、ダルトン公爵家からの打診があり、それを受けたフォード伯爵家のアランとローズマリアは婚約したのだ。
アランは伯爵家の嫡男で、公爵家二女であるローズマリアが嫁入りするには家格が合わないと思われたが、王妃様のお茶会に参加した際、ローズマリアがアランを気に入り、アランの伯爵家が公爵家からの打診を受けるかたちで婚約が決まった。
王子妃様のお茶会で初めて出会い、同じテーブルで隣だった2人は、特に話すこともなかった。
ただ、アランが持っていた本にローズマリアが驚き、アランに声をかけた。
それは、今よりさらに幼い頃に読んでもらった本だった。
また読んで欲しかったのに、幼いローズマリアには題名が思い出せなかった。
王子様だけが描かれた表紙だと思い込んでいたが、メインは竜だった。
大きな竜の横に小さく記憶にあった王子様が描かれていた。
本の題名は、竜と秘密の冒険者だった。秘密の冒険者が王子様だったという話しだ。
だから王子様の本って言っても、誰もわかってくれなかったのね…
アランに声をかけ、その本が好きなのか聞いた。するとそうでもないと言う。
アランは、この王子様のように、竜に助けてもらいながら悪事を裁き、悪者を剣でやっつける事は自分には出来ない、でもこの竜のような優しさは好きだと言った。
おっとりした、どこか頼りない雰囲気のアランに、ローズマリアは一緒にいて心が温かく穏やかになるのを感じた。
年に2回の王妃様のお茶会、次の会にもアランはいた。
前回のお茶会のあと、お父様にアランにまた会いたいと何度か伝えた。お父様はフォード伯爵家の事を秘密裏に調べていたようだ。
表向きは問題が無い貴族でも、裏を調べると暗い部分があることはよくあった。しかし、フォード家に後ろめたいことは欠片もなかった。
公爵家からの、次のお茶会も必ず参加して欲しいという要望に、伯爵家が否と言えるわけもなく、必要以上に緊張したフォード伯爵夫人と、その母の様子を気にするアラン少年は、案内された席に着いた。
しばらくするとローズマリアがやってきた。
なぜか前回と同じく、ローズマリアが隣だったアランはどこかホッとした。
「こんにちはアラン様。今日もお隣の席で嬉しいわ」
ローズマリアがアランを見て微笑んだ。
前回も少し思ったが、ローズマリアの若草色の瞳がとても綺麗だった。
ご挨拶は、必ず自分よりも家格が上位の貴族から声をかけられてからだ。
「こんにちはローズマリア様、今日も隣ですね。今日は花の図鑑を持ってきてみました」
アランは少し伺うようにローズマリアを見る。
「まあ!前回の私の話しを覚えてくれていたの?」
ローズマリアの驚く顔も可愛いと思った。
「この庭の薔薇の品種が多くて、僕もわからなかったので。それとローズマリア様が知りたいと言っていた薔薇も、この図鑑に載っていました」
「まあ!それも覚えていて調べてくれたのね!嬉しいわ!」
アランは、ローズマリアが自分で椅子を動かし、アランの椅子の横に近づけたのも嬉しかった。
ローズマリアの母で、ダルトン公爵夫人が、
「まあローズマリア、はしたないのでは?」
とローズマリアに声をかけると、
「はいお母様、ごめんなさい。メイドが来てくれるのを待ちきれなくて」
公爵令嬢らしからぬ行動だったのだろう、だがアランは、ローズマリアがこういった枠にとどまらない行動をすることに興味を持った。
ダルトン公爵夫人からは見えないように、アランにふふふっと笑顔を見せると、アランの椅子の横にぴったりと付けた自分の椅子にヒラリと座って、
「アラン様、図鑑の薔薇のところを見せて下さい!」と言った。
図鑑を覗き込む2人の時間は楽しかった。
たまにローズマリアのフワフワの髪が、自分の頬や手に触れるのがくすぐったくて、胸がトクトクと鳴った。
そのあとは、図鑑を持って広い庭に行き、花の名前や花言葉を調べながら、2人で時間も忘れて楽しんだ。
夢中で花を探していると突然後ろから、俺は伯爵家だというアランより少し体の大きな男の子が声をかけてきた。
そんな花に興味のある弱いやつより、武術の訓練をしている俺の方が強くてカッコいいからと、ローズマリアの手を引こうとした。
ローズマリアを見ると、顔が強張っていたので慌てて間に入った。
「なんだよお前、どけよ。弱いくせに」
このお茶会に護衛は大勢いるが、王子殿下の婚約者や側近、優秀な官僚を見出だす目的もある。
この場での子息令嬢の揉め事には、本人たちの解決能力も見定めたいため、余程の事がない限り静観するよう指示されている。
アランは自分が弱いことは知っている。
でも、この目の前の無礼者に負けたくなかった。
「なぜ退かないといけないの?君は勝手にダルトン公爵令嬢に触ろうとしただろ?」
「うるさい、お前みたいなやつとじゃ退屈だから、俺が相手をするんだ。そんなつまらない本しか知らないのか?そんなもの見てなんの役に立つ?マヌケめ」
今の時まで、ローズマリアと夢のように楽しい時間を過ごしていたのに、この令息に台無しにされアランは腹が立っていた。
「なんの役に立つか?教えてあげるよ。ここに咲いている薔薇の名前を知っているか?」
「ははは!こんな花の名前を知って強くなれるのか?興味ないね」
「知らないのか?とても大切な知識だから教えてあげるよ。
この薔薇は薄い黄金色に咲く、花弁の多い薔薇だけど、大輪を開いてから少しずつ中心から若草色に染まっていく、とても珍しい薔薇だ。
花言葉は、愛を捧げるだ。
そしてこの薔薇の名前は、ローズマリアだ」
「…っ!おっ、お前なんかっ…!」
顔を真っ赤にして、芝生を土ごとアランに蹴りあげると、振り返ってお茶会会場の方に戻っていった。
戻った先に、彼の母親らしき夫人がその息子の話しを聞いたのだろう。驚いたように両手を口にあて、こちらを睨むように見ていた。
後日、アランのフォード伯爵家にその伯爵令息の家から抗議の手紙が届いた。
仲良く遊ぼうとした我が家の息子を侮辱し嘲笑った、初等部に通うようになったら気を付けるようにと、暗に脅すようなことも書かれていた。
アランを大切に育てているフォード夫妻は、アランがそんなことをするとは信じられず、本人もそんなことはしていないという言葉を信じている。
この一方的な物言いの相手に、言った言わないのやり取りをしても埒が明かないだろうと思ったフォード伯爵は、ダルトン公爵家からお茶会に参加して欲しいと言われ参加したのもあり、ダルトン公爵に相談した。
手紙を送ってすぐに、何も心配ない、この件は公爵家に任せて欲しい、アランの名誉が傷付くことはないとすぐに返事が届いた。
この一件を忘れた頃に、その伯爵家の一族全員が、隣国トルランのさらに向こうの国へ移住したと噂に聞いた。
この伯爵家の末端の商会が、違法薬物の輸入に携わっていたことが明るみになり、一族全員国外追放処分となり、その伯爵の5代先までこの国カイザルへの入国は禁止となった。
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