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「どーぞ」
貴斗は玄関のドアを開け碧を招き入れた。
「お邪魔します...」
碧はおずおずと玄関に入り見覚えのある豪華な室内に懐かしい気持ちになり思わず周りを見渡した。
「キヨさんはもう帰っちゃってるんだよね?」
「そうだね、この時間だともういないかな...完治するまでは夜も世話するって言ってくれたんだけどキヨさんの家の事情とかもあるからあまり長引かせるのは申し訳ないし断ったんだ」
「そっか」
貴斗は玄関先で立ち止まったままキョロキョロと見渡す碧を自分の部屋へと誘導しドアを開けた。
そこは先日連れ込まれた離れにある部屋とは違い、シンプルな勉強机と厚めの参考書などが詰められた本棚、小さなテーブルとその側にあるソファ、離れにあったベッドよりは小さいがセミダブルのベッド...必要最低限と言っていい程の簡素な室内となっていた。
「こっちは昔とそんなに変わんないだろ?こっちはあまり人を入れないから物がなくてね」
貴斗は碧の顔を見ず床に散乱した雑誌を左手で拾いながら気まずそうに片づけていた。
「私やるから、ほらっ先リュックおろすよ」
碧は自身の鞄を床に置き、右側をなるべく庇うように貴斗が背負っているリュックをそっと肩から下ろした。
「ありがと、でもそんな慎重にしなくても大丈夫」
「でも、ちょっとの振動とかでも痛み伝わったりするでしょ?」
碧はその流れで貴斗のブレザーに手を掛けようとすると再度「大丈夫」と行動を遮られ貴斗自身でゆっくりと脱ぎ、その制服を碧は預かりクローゼットの中へ掛けた。
「そしたらとりあえず私ができるのは今日のノートの写しとあとは課題だね」
碧は自身の鞄と貴斗のリュックから今日の授業で使ったノートなどを取り出しテーブルに並べた。
「少しは書けたけど早い先生のはなかなか難しくて、ほら山センとかバーッて書いてすぐ消しちゃうだろ、利き手じゃないから追いつかなくて」
「そっか、でもノートなら私に無理して頼まなくても友だちとかに頼んでもいいんだよ、寧ろ喜んでやってくれる子だっているだろうし」
「んー、まぁ...ってかやっぱ迷惑?」
「そういうわけじゃないけど私のノートそんなにわかりやすく書いてないし」
しょげた表情を向けられ碧は慌てるように弁明しながら授業で取ったノートを開き貴斗のノートに書き写す作業に取り掛かった。
「碧のノート見やすいし要点もちゃんと書かれててわかりやすいよ」
対面に座った貴斗が前のめりになり碧のノートに目をやると貴斗から不意に香る香水が鼻腔を擽り碧の心拍数が徐々に上がり始めた。
(集中、集中...)
碧は自分に何度も頭の中で言い聞かせ散漫にならないよう一心不乱に次々とノートを写していった。その姿に貴斗は嬉しそうに優しく微笑みながら眺めていた。
☆☆☆
「今日の分終了ーっと、あとは出された課題のプリントだけど今日はそんなになかったし先に明日の時間割の教科書とかリュックに纏めて入れておくね」
「ありがとう、助かる。ゆっくりなら左でも書けるから課題は一緒にやろっか」
貴斗はリュックに入れてあったファイルと筆記用具を取り出し中からプリントをテーブルに置き準備を始める。その間に碧は明日の準備を済ませ、碧も自身の鞄から課題のプリントを出し広げた。
元々超が付く程の進学校に中学時代まで通い、高校でも学年トップをキープしている貴斗だけあってゆっくりではあったがスラスラと問題を解き回答欄を埋めていく。向かいに座る碧はその光景を見つめ、身なりは変わってしまったが勉強する姿は中学生の頃の貴斗をチラつかせ懐かしさを覚える。
「んっ?どうした?どっかわかんないとこあった?」
視線を感じたのか貴斗が不思議そうに碧を見つめると誤魔化すように視線を泳がせながら碧は首を横に振った。
「なんか懐かしいよね...中学の時、碧がここに来て勉強一緒にしてさー、俺その日に告って...まっ、振られたけど」
照れ笑いをしながら貴斗は床からソファに座り直し懐かしそうに目を細め碧に微笑みかけた。碧はその表情を直視できず更に視線を彷徨わせていると貴斗のリュックの中からスマホの着信音が鳴り出した。貴斗は小さく息を吐き中から取り出しディスプレイに映し出された着信元を見ると一瞬鬱陶しそうな表情になり、なかなかタップせず見つめていた。
「出ないの?私のことは気にせず話していいから」
碧は自分に気を遣って出るのを躊躇っているのだと思い貴斗にそう促すと「あぁ...うん、ごめん、ちょっと待ってて」そう申し訳なさそうに言うと部屋から出て行き下の階に下りる足音が少しずつ小さくなっていった。
部屋に一人残された碧は緊張の糸が切れたかのようにドッと身体中の力が抜けテーブルに突っ伏した。
(一日目でこれじゃあ先が思いやられる...)
頬杖を付きながら溜息を吐き、貴斗と初めて出会った頃から現在の関係まで走馬灯のように記憶を辿っていた。自分の中で何度も何度も貴斗との関係はもう“過ぎた過去”と脳内に刻み、迷わないように...もう間違えないようにと思いながらなんとか踏ん張りながら過ごしてきたが、碧がどんなに突き放しても貴斗はするりと簡単に心をかき乱してゆく...。
「はぁー...」
碧はこの状況で乱れる気持ちを落ち着かせるべく一旦部屋から出ることにし序でにトイレを借りようと廊下に出た。
トイレを済ませ部屋に戻ろうとした時、階段を上ってくる足音が聞こえ電話を終えた貴斗が戻って来たのかと思い部屋のドアノブに手を添えた時「あれ?女の子がいる」貴斗の声よりも軽めの声が後ろから聞こえ振り向くと貴斗を更に大人っぽくさせた風貌の男が人懐っこそうな表情を碧に向けていた。
「お、お邪魔してます。私、阿部くんと同じ高校でクラスメイトの桐野碧と申します。この度は私の不注意で阿部くんに怪我を負わせてしまい大変申し訳ございませんでした」
碧は目の前まで来た男性に深々と頭を下げ謝罪すると男性は慌てたように碧の両肩に手を置き顔を上げるよう促した。
「あー、きみが...大変だったね。あの日俺ゼミで友だちの家で寝泊まりしてて連絡気づかなくて...本当だったら俺が碧ちゃんのご両親と話さなきゃいけなかったのにごめんね。でも碧ちゃんに何もなかったみたいでほんと良かったよ、女の子が怪我するくらいならあいつの腕の一本や二本折れても問題ないから♪」
「い、いや、それは、よくないと...」
(...なんか今の貴斗を更にチャラくしちゃった感じだな)
「あっ、自己紹介するの忘れてた。俺は貴斗の兄で阿部智広です、よろしくね♪...でもなんでうちに?」
「よ、よろしくお願いします、実は私のせいで利き手を負傷したのでしばらくの間身の回りのことをお手伝いすることに、あっ...」
「何やってんの?ってか触んないでくれる?」
冷たく突き刺さるような声色と視線で貴斗は智広を睨みつけ碧の肩に触れている手を跳ね除けた。
「おいおい、久々に会った兄貴に冷たくね?にしてもお前がこっちに連れてくるなんて珍しいねー、いくらこんな状況でも家に女の子なんて入れないのに...まぁ庇って自分の骨ヒビいれるくらいだからよっぽど熱を上げてんのか...でも前に来た子とタイプとちが」
「智広には関係ないだろ、大体普段帰ってこないのに今日に限って何しに帰って来たんだよ」
いつもは兄の智広のような振る舞いの貴斗が智広に対して感情をぶつけるように苛立ちながら会話する姿に碧はどうしていいかわからず二人のやり取りをただ見守るしかできなかった。
「とにかく俺ら勉強してるから邪魔しないでくれる?」
不機嫌な態度を智広に振り撒き自身の部屋のドアを開けると今度はテーブルに置いていた碧のスマホからアラーム音が鳴り出した。
「あっ、一応帰る時間設定してたんだ。今日は初日だし弟が煩いから早めに帰ろうと思って...とりあえず今日はお兄さんもいるし私がいなくても大丈夫そうだね。ノートの写しは全部終わってるし明日の準備も大丈夫そうだし課題もさっきの感じだとこっちも問題なさそうだしね」
「あ......うん、まぁ......」
歯切れが悪い口調で貴斗はせっせと帰る準備をする碧の後ろ姿を憂いの表情で見つめ軽く溜息をついた。
「...そしたら今送る手配す、「碧ちゃんなら俺送るよ」
「「はっ?!」」
智広の思いもよらない発言に碧と貴斗は同時に声を上げ二人は智広の方へ視線を向ける。
「友だちン家に忘れ物取りに戻んなきゃいけなかったからついでに送るし乗っていきなよ」
貴斗の部屋にずかずかと入り機嫌よさげな表情で笑みを向けながら碧の手から鞄を取り上げ部屋から出ようとする智広の肩を貴斗はぐいっと掴み歩みを止めた。
「智広には関係ない、それに碧のご両親にもう一度ちゃんと挨拶したいし」
「そもそも今お前の責任者代理は俺なんだし俺が顔出すのが常識だろ?実際俺が立ち会うはずだったのにお前勝手に色々決めやがって、ってことで碧ちゃんおいで」
「えっ?!、あっ」
「じゃあ俺も「そうそう、もうちょっとしたら俺宛の荷物届くから留守番して貰っといてー」
貴斗の手を振り解き智広は碧に手招きしながら碧の鞄を持ったまま再び歩き出したため碧は慌てて立ち上がった。ドアの前で立ち尽くす貴斗のかなり不満げな表情を目の当たりにし碧はつつ...と傍に歩み寄り貴斗に視線を合わせた。
「なんかあんまり役に立てなくてごめんね、今日は帰るけどまた明日も手伝うから...」
「ん...あのさ、もし智広になんかされたら絶対言って!俺が言うのもなんだけどあいつ、女なら見境ないし手早いから......やっぱ俺も」
「ちょっ、落ち着いて!大丈夫だから、流石にこの状況で私には手出さないよ」
碧は貴斗を宥めていると下から智広に呼ばれ二人は玄関へと向かい、三人は智広の車が停まっているガレージに行き碧は助手席に乗り込んだ。納得いかない表情の貴斗に見送られ碧は貴斗の兄、智広とのしばしの時間を耐えれるか不安になりながらこの急展開の出来事に碧は居心地の悪さを抱えていた。
貴斗は玄関のドアを開け碧を招き入れた。
「お邪魔します...」
碧はおずおずと玄関に入り見覚えのある豪華な室内に懐かしい気持ちになり思わず周りを見渡した。
「キヨさんはもう帰っちゃってるんだよね?」
「そうだね、この時間だともういないかな...完治するまでは夜も世話するって言ってくれたんだけどキヨさんの家の事情とかもあるからあまり長引かせるのは申し訳ないし断ったんだ」
「そっか」
貴斗は玄関先で立ち止まったままキョロキョロと見渡す碧を自分の部屋へと誘導しドアを開けた。
そこは先日連れ込まれた離れにある部屋とは違い、シンプルな勉強机と厚めの参考書などが詰められた本棚、小さなテーブルとその側にあるソファ、離れにあったベッドよりは小さいがセミダブルのベッド...必要最低限と言っていい程の簡素な室内となっていた。
「こっちは昔とそんなに変わんないだろ?こっちはあまり人を入れないから物がなくてね」
貴斗は碧の顔を見ず床に散乱した雑誌を左手で拾いながら気まずそうに片づけていた。
「私やるから、ほらっ先リュックおろすよ」
碧は自身の鞄を床に置き、右側をなるべく庇うように貴斗が背負っているリュックをそっと肩から下ろした。
「ありがと、でもそんな慎重にしなくても大丈夫」
「でも、ちょっとの振動とかでも痛み伝わったりするでしょ?」
碧はその流れで貴斗のブレザーに手を掛けようとすると再度「大丈夫」と行動を遮られ貴斗自身でゆっくりと脱ぎ、その制服を碧は預かりクローゼットの中へ掛けた。
「そしたらとりあえず私ができるのは今日のノートの写しとあとは課題だね」
碧は自身の鞄と貴斗のリュックから今日の授業で使ったノートなどを取り出しテーブルに並べた。
「少しは書けたけど早い先生のはなかなか難しくて、ほら山センとかバーッて書いてすぐ消しちゃうだろ、利き手じゃないから追いつかなくて」
「そっか、でもノートなら私に無理して頼まなくても友だちとかに頼んでもいいんだよ、寧ろ喜んでやってくれる子だっているだろうし」
「んー、まぁ...ってかやっぱ迷惑?」
「そういうわけじゃないけど私のノートそんなにわかりやすく書いてないし」
しょげた表情を向けられ碧は慌てるように弁明しながら授業で取ったノートを開き貴斗のノートに書き写す作業に取り掛かった。
「碧のノート見やすいし要点もちゃんと書かれててわかりやすいよ」
対面に座った貴斗が前のめりになり碧のノートに目をやると貴斗から不意に香る香水が鼻腔を擽り碧の心拍数が徐々に上がり始めた。
(集中、集中...)
碧は自分に何度も頭の中で言い聞かせ散漫にならないよう一心不乱に次々とノートを写していった。その姿に貴斗は嬉しそうに優しく微笑みながら眺めていた。
☆☆☆
「今日の分終了ーっと、あとは出された課題のプリントだけど今日はそんなになかったし先に明日の時間割の教科書とかリュックに纏めて入れておくね」
「ありがとう、助かる。ゆっくりなら左でも書けるから課題は一緒にやろっか」
貴斗はリュックに入れてあったファイルと筆記用具を取り出し中からプリントをテーブルに置き準備を始める。その間に碧は明日の準備を済ませ、碧も自身の鞄から課題のプリントを出し広げた。
元々超が付く程の進学校に中学時代まで通い、高校でも学年トップをキープしている貴斗だけあってゆっくりではあったがスラスラと問題を解き回答欄を埋めていく。向かいに座る碧はその光景を見つめ、身なりは変わってしまったが勉強する姿は中学生の頃の貴斗をチラつかせ懐かしさを覚える。
「んっ?どうした?どっかわかんないとこあった?」
視線を感じたのか貴斗が不思議そうに碧を見つめると誤魔化すように視線を泳がせながら碧は首を横に振った。
「なんか懐かしいよね...中学の時、碧がここに来て勉強一緒にしてさー、俺その日に告って...まっ、振られたけど」
照れ笑いをしながら貴斗は床からソファに座り直し懐かしそうに目を細め碧に微笑みかけた。碧はその表情を直視できず更に視線を彷徨わせていると貴斗のリュックの中からスマホの着信音が鳴り出した。貴斗は小さく息を吐き中から取り出しディスプレイに映し出された着信元を見ると一瞬鬱陶しそうな表情になり、なかなかタップせず見つめていた。
「出ないの?私のことは気にせず話していいから」
碧は自分に気を遣って出るのを躊躇っているのだと思い貴斗にそう促すと「あぁ...うん、ごめん、ちょっと待ってて」そう申し訳なさそうに言うと部屋から出て行き下の階に下りる足音が少しずつ小さくなっていった。
部屋に一人残された碧は緊張の糸が切れたかのようにドッと身体中の力が抜けテーブルに突っ伏した。
(一日目でこれじゃあ先が思いやられる...)
頬杖を付きながら溜息を吐き、貴斗と初めて出会った頃から現在の関係まで走馬灯のように記憶を辿っていた。自分の中で何度も何度も貴斗との関係はもう“過ぎた過去”と脳内に刻み、迷わないように...もう間違えないようにと思いながらなんとか踏ん張りながら過ごしてきたが、碧がどんなに突き放しても貴斗はするりと簡単に心をかき乱してゆく...。
「はぁー...」
碧はこの状況で乱れる気持ちを落ち着かせるべく一旦部屋から出ることにし序でにトイレを借りようと廊下に出た。
トイレを済ませ部屋に戻ろうとした時、階段を上ってくる足音が聞こえ電話を終えた貴斗が戻って来たのかと思い部屋のドアノブに手を添えた時「あれ?女の子がいる」貴斗の声よりも軽めの声が後ろから聞こえ振り向くと貴斗を更に大人っぽくさせた風貌の男が人懐っこそうな表情を碧に向けていた。
「お、お邪魔してます。私、阿部くんと同じ高校でクラスメイトの桐野碧と申します。この度は私の不注意で阿部くんに怪我を負わせてしまい大変申し訳ございませんでした」
碧は目の前まで来た男性に深々と頭を下げ謝罪すると男性は慌てたように碧の両肩に手を置き顔を上げるよう促した。
「あー、きみが...大変だったね。あの日俺ゼミで友だちの家で寝泊まりしてて連絡気づかなくて...本当だったら俺が碧ちゃんのご両親と話さなきゃいけなかったのにごめんね。でも碧ちゃんに何もなかったみたいでほんと良かったよ、女の子が怪我するくらいならあいつの腕の一本や二本折れても問題ないから♪」
「い、いや、それは、よくないと...」
(...なんか今の貴斗を更にチャラくしちゃった感じだな)
「あっ、自己紹介するの忘れてた。俺は貴斗の兄で阿部智広です、よろしくね♪...でもなんでうちに?」
「よ、よろしくお願いします、実は私のせいで利き手を負傷したのでしばらくの間身の回りのことをお手伝いすることに、あっ...」
「何やってんの?ってか触んないでくれる?」
冷たく突き刺さるような声色と視線で貴斗は智広を睨みつけ碧の肩に触れている手を跳ね除けた。
「おいおい、久々に会った兄貴に冷たくね?にしてもお前がこっちに連れてくるなんて珍しいねー、いくらこんな状況でも家に女の子なんて入れないのに...まぁ庇って自分の骨ヒビいれるくらいだからよっぽど熱を上げてんのか...でも前に来た子とタイプとちが」
「智広には関係ないだろ、大体普段帰ってこないのに今日に限って何しに帰って来たんだよ」
いつもは兄の智広のような振る舞いの貴斗が智広に対して感情をぶつけるように苛立ちながら会話する姿に碧はどうしていいかわからず二人のやり取りをただ見守るしかできなかった。
「とにかく俺ら勉強してるから邪魔しないでくれる?」
不機嫌な態度を智広に振り撒き自身の部屋のドアを開けると今度はテーブルに置いていた碧のスマホからアラーム音が鳴り出した。
「あっ、一応帰る時間設定してたんだ。今日は初日だし弟が煩いから早めに帰ろうと思って...とりあえず今日はお兄さんもいるし私がいなくても大丈夫そうだね。ノートの写しは全部終わってるし明日の準備も大丈夫そうだし課題もさっきの感じだとこっちも問題なさそうだしね」
「あ......うん、まぁ......」
歯切れが悪い口調で貴斗はせっせと帰る準備をする碧の後ろ姿を憂いの表情で見つめ軽く溜息をついた。
「...そしたら今送る手配す、「碧ちゃんなら俺送るよ」
「「はっ?!」」
智広の思いもよらない発言に碧と貴斗は同時に声を上げ二人は智広の方へ視線を向ける。
「友だちン家に忘れ物取りに戻んなきゃいけなかったからついでに送るし乗っていきなよ」
貴斗の部屋にずかずかと入り機嫌よさげな表情で笑みを向けながら碧の手から鞄を取り上げ部屋から出ようとする智広の肩を貴斗はぐいっと掴み歩みを止めた。
「智広には関係ない、それに碧のご両親にもう一度ちゃんと挨拶したいし」
「そもそも今お前の責任者代理は俺なんだし俺が顔出すのが常識だろ?実際俺が立ち会うはずだったのにお前勝手に色々決めやがって、ってことで碧ちゃんおいで」
「えっ?!、あっ」
「じゃあ俺も「そうそう、もうちょっとしたら俺宛の荷物届くから留守番して貰っといてー」
貴斗の手を振り解き智広は碧に手招きしながら碧の鞄を持ったまま再び歩き出したため碧は慌てて立ち上がった。ドアの前で立ち尽くす貴斗のかなり不満げな表情を目の当たりにし碧はつつ...と傍に歩み寄り貴斗に視線を合わせた。
「なんかあんまり役に立てなくてごめんね、今日は帰るけどまた明日も手伝うから...」
「ん...あのさ、もし智広になんかされたら絶対言って!俺が言うのもなんだけどあいつ、女なら見境ないし手早いから......やっぱ俺も」
「ちょっ、落ち着いて!大丈夫だから、流石にこの状況で私には手出さないよ」
碧は貴斗を宥めていると下から智広に呼ばれ二人は玄関へと向かい、三人は智広の車が停まっているガレージに行き碧は助手席に乗り込んだ。納得いかない表情の貴斗に見送られ碧は貴斗の兄、智広とのしばしの時間を耐えれるか不安になりながらこの急展開の出来事に碧は居心地の悪さを抱えていた。
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