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第一部 名家の暴走と傀儡となった女王
VSロイ
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「何……? あの黒い炎は……?」
「あれではまるで、騎士王ロイが魔王みたいじゃないか……」
「恐ろしい……ベッツ家はこんな代物を若人達に使わせようとしていたのか……」
親父との戦いに備えて、既にダリアの魔法でいつものように俺の能力を限界まで引き上げているため、女王様とダリアを守ろうと残った連中の会話が聞こえてしまう。
相変わらず聴覚強化は凄いな。
離れた人間の会話すら耳に入るのだから。
……魔王みたいか。
騎士達を大量虐殺するとか、今までの振る舞いも含めたら、魔王なんかよりも悪質なんじゃないのか?
これで人間なんだぜ? 一応。
……まあ、魔王ですら呆れるだろ。
この男の愚行には。
自分の部下を金の為に大量虐殺するなんて魔王だってやらねえよ。
会ったことも見たこともねえから勝手なイメージだけどな。
「騎士王という、一国の騎士達を纏めている地位の人間とは思えない程の禍々しさだな。人間を辞める気か?」
「黙れ! 人間を辞めるのはお前だァ! 私に殺されて亡霊となるがいい!」
「それはこっちのセリフだ! 灰にしてやるよ! 聖火《トーチ》!」
正々堂々戦うなんて事はしない。
どんな手を使おうが、この男はここで殺さなければいけない。
聖剣の切先をロイに向けて、聖火を放った。
互いに剣を持っているからといって、剣を交える必要などは無い。
確実に勝てるなら、どんな汚い手でも使うさ。
先制攻撃に加えて、不意打ち。
まして攻撃は聖火。
さあ、どうする?
セリーナは、防ぐ事が出来ずに聖火をモロに喰らって戦闘不能になった。
ロイもセリーナ同様魔法に優れている訳じゃない。
いけるはずだ。
聖火を防ぐ力などロイにはない!
「小賢しい! 甘いわァ!」
ロイは大剣と化した魔剣で聖火を斬り、俺の攻撃は防がれた。
おいおい、冗談だろ?
聖火をぶった斬るって、どうやってんだ?
「流石にセリーナ程度の雑魚とは違うか、あいつは聖火すら防げずに俺に負けたからな」
「黙れ! セリーナをバカにするな! たまたま聖剣に選ばれただけのお前と違い、セリーナには未来があったんだ! それなのにお前は……! お前はァァァァァ!!!!!」
動揺を悟られない為の挑発だったが、逆に神経を逆撫でしてしまったようだ。
一直線にロイは俺の元へ突っ込んでくる。
「音速《ソニック》」
バカな男だ。
魔法も使えないくせに正面から突っ込んでくるなんてな。
俺の事をまだ甘くみているようだ。
高速移動魔法でロイの後ろに俺は回った。
大剣使いが背後を取られれば、即ちそれは死。
反応したとしても、背後の攻撃を大剣で防ぐのは難しいからな。
しかもロイは俺が自分の背後にいる事など気付いていないはず。
聖火を防ぐというのなら聖剣でこいつをぶった斬るまで!
「遅い! 遅いぞぉ! バカが!」
「!?」
ギィィィィィン!!!!!
ロイは俺の攻撃を大剣で受け止める。
聖剣と魔剣がぶつかり合った為、周囲には物凄い音と衝撃波が発生した。
完全に俺はロイの背後を取ることに成功し、その事にロイは気付いていないはずだった。
それなのに、防がれただと?
反応が良すぎる。
人間離れし過ぎている。
「ハッハッハ! お前が真正面からぶつかって来ないことなど織り込み済みだ! 魔剣は持ち主の反応速度すら引き上げられるんだよ! お前の剣技程度、防げない訳が無いだろう!」
マズい。
いくら聖剣とはいえ、相手は魔剣。
しかもこちらは片手剣クラスの大きさに対し、相手は大剣。
正面からぶつかれば、俺が不利だ。
「音速!」
一度距離を取ろう。
大丈夫だ、隙ならすぐに見つけられる。
「ちょこまかと動きおって! 喰らえ! 黒き炎に焼かれ、自らの罪を悔いて苦しみながら死ね! 黒炎煉獄《ブラック・パーガトリー》!」
距離を取って向かってこないプライスに、痺れを切らしたのか、ロイは魔力を剣に込め、大剣を地面に振り下ろした。
すると、魔力が込められた大剣から黒く禍々しい炎が地を這いながら、プライスに向かっていく。
これにはプライスも予想外だった。
ロイは魔法が使えないはず。
なのに何故、魔剣の力とはいえ、上級魔法と遜色の無い、いやそれ以上の威力のある火属性魔法が使えるのか分からなかったからだ。
更に、もう一つの懸念があった。
別に避けられない訳ではない。
だが、このクラスの火属性魔法を自分が避けて、この黒い炎が街に向かえば、大惨事は免れないだろう。
多くの人間が、またロイの手によって死ぬ可能性がある。
それだけは避けたかったのだ。
「神聖火炎《ホーリー・フレイム》!」
プライスは、自らも聖剣によって使えるようになった同じクラスの火属性魔法を放ち、ロイの火属性魔法を打ち消した。
だが、ロイはプライスがそう選択すると読んでいたかのように、魔法を放った後プライスとの距離を詰めていた。
大剣がプライスに向かって振り下ろされる。
「!?」
ギィィィィィン!!!!!
ロイの攻撃をプライスはギリギリで聖剣で防いだ。
が、大剣と片手剣サイズの剣。
片手剣サイズの聖剣で大剣サイズの魔剣を受け止めているプライスは明らかに不利だった。
「ハッハッハ!!!!! どうしたどうしたァァァァァ!!!!! 大剣相手に片手剣で受け止めるのはさぞやキツいだろう! ほら早く距離を取れ! そして、また私の黒炎煉獄を喰らうが良いさ!」
「ロイ……! 聖火とは違い、お前の火属性魔法は王都の民や街に被害が出るって分かっていないのか!? それが騎士王という地位に就く人間のする事なのか!? お前はこの国の人間を何だと思っているんだ!」
「綺麗言を抜かすなァァァァァ!!!!! この国の人間? 掃いて捨てる程ある存在に何の価値がある? 私達はそいつらとは違うレベルの存在なんだ! 何しても良いに決まっているだろう? それは、セリーナもだった! なのにお前は……お前は……お前はァァァァァ!!!!!」
金切り声を出し始めたロイの目が、黒く染まりつつあった。
プライスはそんなロイを見て焦る。
セリーナは魔法を使えなかった為、魔剣に自我を乗っ取られていても、周りに大きな被害を出さずにプライスが対処出来た。
だが、ロイの場合は違う。
魔剣によってロイが使えるようになった魔法は、上級魔法以上の威力のある火属性魔法。
魔剣に自我を完全に乗っ取られて、先程の魔法を考え無しに使われれば、城どころか王都が火の海になる可能性がある。
更に、ロイが言っていたように、いつマリーナとエリーナが戻って来るか分からない。
三対一なら勝ち目は無い。
このままなら負けた挙げ句、王都が壊滅するという最悪の事態。
プライスはそういった状況に追い込まれてた。
……一か八かやるしかねえな。
「音速!」
プライスは高速移動魔法で先程よりも長く距離を取った。
門ギリギリまで移動していた。
これ以上下がれば、街。
つまり、ここで決着をつけなければ、王都の街も民も終わり。
「ハッハッハ!!!!! 長く距離を取った所で、何も意味は無いぞバカが! 喰らえ! 黒き炎に焼かれ、自らの罪を悔いて苦しみながら死ね! 黒炎煉獄!」
先程と同じようにロイは火属性魔法を放ち、放った後プライスとの距離を詰める。
「神聖火炎!」
「ハッハッハ!!!!! さっきと同じ事の繰り返し! 終わりだァァァァァ!!!!! プライスゥゥゥゥゥ!!!!!」
「竜巻《トルネード》!」
「!?」
「融合《フュージョン》!」
「何ィ!?」
プライスが先程とは違う事をしているので、ロイは思わず足を止める。
ロイが予想していたのは、聖剣を持つプライスの右手から強大な火属性魔法が放たれ、自分の魔法を打ち消している間に、距離を詰めて剣技での戦いに持ち込むという先程の展開。
だが、プライスは更に左手から風属性の魔法を出し、更に別の魔法を詠唱し始めた。
ロイは直感した。
長年戦場に立ち続けた騎士の勘で。
これ以上プライスに近付けば、殺されるのは自分だと。
だが、既に遅かった。
「聖炎竜巻《ホーリーフレイムネード》!!!!!」
プライスの新たな魔法が放たれた。
「喰らえ! ロイ・ベッツ!」
「大丈夫だ! 私の黒炎煉獄と相殺……されてない!? ヒッヒィィィィィ!!!!! し、仕方ない魔剣! 魔剣で防いでやるゥゥゥゥゥ!!!!!」
ロイの魔法は撃ち破られ、プライスの魔法がロイを襲った。
「あれではまるで、騎士王ロイが魔王みたいじゃないか……」
「恐ろしい……ベッツ家はこんな代物を若人達に使わせようとしていたのか……」
親父との戦いに備えて、既にダリアの魔法でいつものように俺の能力を限界まで引き上げているため、女王様とダリアを守ろうと残った連中の会話が聞こえてしまう。
相変わらず聴覚強化は凄いな。
離れた人間の会話すら耳に入るのだから。
……魔王みたいか。
騎士達を大量虐殺するとか、今までの振る舞いも含めたら、魔王なんかよりも悪質なんじゃないのか?
これで人間なんだぜ? 一応。
……まあ、魔王ですら呆れるだろ。
この男の愚行には。
自分の部下を金の為に大量虐殺するなんて魔王だってやらねえよ。
会ったことも見たこともねえから勝手なイメージだけどな。
「騎士王という、一国の騎士達を纏めている地位の人間とは思えない程の禍々しさだな。人間を辞める気か?」
「黙れ! 人間を辞めるのはお前だァ! 私に殺されて亡霊となるがいい!」
「それはこっちのセリフだ! 灰にしてやるよ! 聖火《トーチ》!」
正々堂々戦うなんて事はしない。
どんな手を使おうが、この男はここで殺さなければいけない。
聖剣の切先をロイに向けて、聖火を放った。
互いに剣を持っているからといって、剣を交える必要などは無い。
確実に勝てるなら、どんな汚い手でも使うさ。
先制攻撃に加えて、不意打ち。
まして攻撃は聖火。
さあ、どうする?
セリーナは、防ぐ事が出来ずに聖火をモロに喰らって戦闘不能になった。
ロイもセリーナ同様魔法に優れている訳じゃない。
いけるはずだ。
聖火を防ぐ力などロイにはない!
「小賢しい! 甘いわァ!」
ロイは大剣と化した魔剣で聖火を斬り、俺の攻撃は防がれた。
おいおい、冗談だろ?
聖火をぶった斬るって、どうやってんだ?
「流石にセリーナ程度の雑魚とは違うか、あいつは聖火すら防げずに俺に負けたからな」
「黙れ! セリーナをバカにするな! たまたま聖剣に選ばれただけのお前と違い、セリーナには未来があったんだ! それなのにお前は……! お前はァァァァァ!!!!!」
動揺を悟られない為の挑発だったが、逆に神経を逆撫でしてしまったようだ。
一直線にロイは俺の元へ突っ込んでくる。
「音速《ソニック》」
バカな男だ。
魔法も使えないくせに正面から突っ込んでくるなんてな。
俺の事をまだ甘くみているようだ。
高速移動魔法でロイの後ろに俺は回った。
大剣使いが背後を取られれば、即ちそれは死。
反応したとしても、背後の攻撃を大剣で防ぐのは難しいからな。
しかもロイは俺が自分の背後にいる事など気付いていないはず。
聖火を防ぐというのなら聖剣でこいつをぶった斬るまで!
「遅い! 遅いぞぉ! バカが!」
「!?」
ギィィィィィン!!!!!
ロイは俺の攻撃を大剣で受け止める。
聖剣と魔剣がぶつかり合った為、周囲には物凄い音と衝撃波が発生した。
完全に俺はロイの背後を取ることに成功し、その事にロイは気付いていないはずだった。
それなのに、防がれただと?
反応が良すぎる。
人間離れし過ぎている。
「ハッハッハ! お前が真正面からぶつかって来ないことなど織り込み済みだ! 魔剣は持ち主の反応速度すら引き上げられるんだよ! お前の剣技程度、防げない訳が無いだろう!」
マズい。
いくら聖剣とはいえ、相手は魔剣。
しかもこちらは片手剣クラスの大きさに対し、相手は大剣。
正面からぶつかれば、俺が不利だ。
「音速!」
一度距離を取ろう。
大丈夫だ、隙ならすぐに見つけられる。
「ちょこまかと動きおって! 喰らえ! 黒き炎に焼かれ、自らの罪を悔いて苦しみながら死ね! 黒炎煉獄《ブラック・パーガトリー》!」
距離を取って向かってこないプライスに、痺れを切らしたのか、ロイは魔力を剣に込め、大剣を地面に振り下ろした。
すると、魔力が込められた大剣から黒く禍々しい炎が地を這いながら、プライスに向かっていく。
これにはプライスも予想外だった。
ロイは魔法が使えないはず。
なのに何故、魔剣の力とはいえ、上級魔法と遜色の無い、いやそれ以上の威力のある火属性魔法が使えるのか分からなかったからだ。
更に、もう一つの懸念があった。
別に避けられない訳ではない。
だが、このクラスの火属性魔法を自分が避けて、この黒い炎が街に向かえば、大惨事は免れないだろう。
多くの人間が、またロイの手によって死ぬ可能性がある。
それだけは避けたかったのだ。
「神聖火炎《ホーリー・フレイム》!」
プライスは、自らも聖剣によって使えるようになった同じクラスの火属性魔法を放ち、ロイの火属性魔法を打ち消した。
だが、ロイはプライスがそう選択すると読んでいたかのように、魔法を放った後プライスとの距離を詰めていた。
大剣がプライスに向かって振り下ろされる。
「!?」
ギィィィィィン!!!!!
ロイの攻撃をプライスはギリギリで聖剣で防いだ。
が、大剣と片手剣サイズの剣。
片手剣サイズの聖剣で大剣サイズの魔剣を受け止めているプライスは明らかに不利だった。
「ハッハッハ!!!!! どうしたどうしたァァァァァ!!!!! 大剣相手に片手剣で受け止めるのはさぞやキツいだろう! ほら早く距離を取れ! そして、また私の黒炎煉獄を喰らうが良いさ!」
「ロイ……! 聖火とは違い、お前の火属性魔法は王都の民や街に被害が出るって分かっていないのか!? それが騎士王という地位に就く人間のする事なのか!? お前はこの国の人間を何だと思っているんだ!」
「綺麗言を抜かすなァァァァァ!!!!! この国の人間? 掃いて捨てる程ある存在に何の価値がある? 私達はそいつらとは違うレベルの存在なんだ! 何しても良いに決まっているだろう? それは、セリーナもだった! なのにお前は……お前は……お前はァァァァァ!!!!!」
金切り声を出し始めたロイの目が、黒く染まりつつあった。
プライスはそんなロイを見て焦る。
セリーナは魔法を使えなかった為、魔剣に自我を乗っ取られていても、周りに大きな被害を出さずにプライスが対処出来た。
だが、ロイの場合は違う。
魔剣によってロイが使えるようになった魔法は、上級魔法以上の威力のある火属性魔法。
魔剣に自我を完全に乗っ取られて、先程の魔法を考え無しに使われれば、城どころか王都が火の海になる可能性がある。
更に、ロイが言っていたように、いつマリーナとエリーナが戻って来るか分からない。
三対一なら勝ち目は無い。
このままなら負けた挙げ句、王都が壊滅するという最悪の事態。
プライスはそういった状況に追い込まれてた。
……一か八かやるしかねえな。
「音速!」
プライスは高速移動魔法で先程よりも長く距離を取った。
門ギリギリまで移動していた。
これ以上下がれば、街。
つまり、ここで決着をつけなければ、王都の街も民も終わり。
「ハッハッハ!!!!! 長く距離を取った所で、何も意味は無いぞバカが! 喰らえ! 黒き炎に焼かれ、自らの罪を悔いて苦しみながら死ね! 黒炎煉獄!」
先程と同じようにロイは火属性魔法を放ち、放った後プライスとの距離を詰める。
「神聖火炎!」
「ハッハッハ!!!!! さっきと同じ事の繰り返し! 終わりだァァァァァ!!!!! プライスゥゥゥゥゥ!!!!!」
「竜巻《トルネード》!」
「!?」
「融合《フュージョン》!」
「何ィ!?」
プライスが先程とは違う事をしているので、ロイは思わず足を止める。
ロイが予想していたのは、聖剣を持つプライスの右手から強大な火属性魔法が放たれ、自分の魔法を打ち消している間に、距離を詰めて剣技での戦いに持ち込むという先程の展開。
だが、プライスは更に左手から風属性の魔法を出し、更に別の魔法を詠唱し始めた。
ロイは直感した。
長年戦場に立ち続けた騎士の勘で。
これ以上プライスに近付けば、殺されるのは自分だと。
だが、既に遅かった。
「聖炎竜巻《ホーリーフレイムネード》!!!!!」
プライスの新たな魔法が放たれた。
「喰らえ! ロイ・ベッツ!」
「大丈夫だ! 私の黒炎煉獄と相殺……されてない!? ヒッヒィィィィィ!!!!! し、仕方ない魔剣! 魔剣で防いでやるゥゥゥゥゥ!!!!!」
ロイの魔法は撃ち破られ、プライスの魔法がロイを襲った。
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