あなたのすべてが性癖なのです。

ちろりん

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同期に告白された残業の夜(3)

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「でもさ、……セックスまでする必要ある?」
「身体の相性は重要だろ? それともあれか? もしかしてお前は心が繋がらなければ身体は繋げないという口か?」
「いやぁ、この年になってそれはないけどさ。でも、……あんたと? マジで?」

 外崎とセックスとか全然想像できないんだけど!
 むしろ彼にセクシャリティを感じたことがほぼない私が、裸になってあーんなことやこーんなことをするとか……想像力の限界を感じてしまう。

「外崎さ、私の裸見たら萎えちゃうんじゃない?」
「お前が昼間机の上で白目剥きながら寝ていても俺は愛おしいと思ったぞ」
「それは私が私にドン引きだわ……」

 何その鋼のメンタル、ぶれない愛情。
 改めて驚きだし、自分が白目剥いていたことにも驚きだわ。

「実は……身体の相性もそうなんだが、ひとつ確かめたいことがあってな」
「確かめたいこと?」

 外崎は椅子ごとこちらを向いて、膝に肘を置いて顎の下で手を組んで難しい顔をした。
 彼がここまで思い悩むような顔をするのは珍しい。

「俺はお前と付き合いたいしセックスもしたい。だが、俺はどうやら人とは違う性癖があるようでな」
「性癖?」

 外崎の口から『性癖』という言葉が出る破壊力、半端ない。
 セックスとかセオリー通りのドノーマルなものしかしませんって顔をしてんのに、変な性癖隠し持ってるの? 本当に?
 語彙力なくすほどに驚いた。

「前付き合っていた彼女がおかしいおかしいって言っていたから、俺はどこか変なのだと思う。いわゆる変態ってやつか?」
「外崎が変態?!」

 さすがにこれには噴き出した。
 変態から一番ほど遠そうな顔をして何を言うのか。

「だから、本格的にお前と付き合う前に、お前の許容できるものなのか確かめてほしいというのもある」
「あーそういうこと」

 笑いを噛み殺しながら彼を見ると、相も変わらず真剣な顔だ。
 大真面目に言ってるんだろうなぁ。絶対に冗談とかじゃなく、本気の本気。嘘偽りのない、外崎の本心。

 そのせいかなぁ。
 私の心の中でそれでもいいかなぁって思い始めているのは。

 たしかに外崎は恋愛対象外だし変な性癖があると言われても半信半疑だ。
 でも、一方で外崎ならいいかなって。
 話も合うし一緒にいて苦じゃないし真面目で誠実。今まで意識してなかったけど優良物件だし。
 一度そのチャンスを使って考えてみるのもいいのかもしれないな。

「分かった。お試ししよう。いつがいい?」
「二十三、二十四日のクリスマスイブ」
「あぁ~たしかにちょうどいいね」
「もうホテルも予約取ってある」
「準備万端過ぎない?」
「お前を全力で口説くためだ。抜かりはない」

 だから!
 そういう歯の浮くようなセリフを全力で言うな!

 私はまんまと赤面させられてしまう。
 正直、私だけがしてやられるのは面白くない。


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