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同期が暴露した性癖の話(2)
しおりを挟む「俺はお前に惚れていたが実際お前には彼氏がいて、俺はこの気持ちを秘めることなった。そのうち彼女もできてお前への気持ちを忘れられると思っていた。それなりに上手くやっていたんだ。だが、セックスがいまいちノらなくてな」
「ノらないって、相性が悪かったってこと?」
「違う。俺の気持ちが盛り上がらなかった。それで悩んでいたんだ」
おぉ……それは何ともデリケートな問題。
真面目な外崎のことだ。相当悩みに悩みぬいたことだろう。
「そんなときにな、外回りしていたときに森村が言ってきたんだ。『この間彼女にコスプレさせたんですけどとてもよかったです』って」
「森村……」
あの子は相も変わらず明け透けと言うか、恥じらいが一切ない。
今はもう手を離れているけれど森村の入社当初の教育係が外崎で、何かと二人で行動することが多かった。
だからそういう話をする機会が多くあったのだろう。
加えて森村は相手が外崎であろうと部長相手であろうと、下ネタを平然とぶっこんでくる強者だ。話す内容もそういうのが多かったんだろうなと推測される。
けど、森村のコスプレ話が外崎に何かしらの変化をもたらしたのであれば、案外あなどれない。
「そのときスマホの写真で見せてもらったのが、彼女の猫のコスプレでな。これだ、とピンときたんだ」
「ピンときちゃったんだ……」
「こういうスパイスを加えれば俺も興奮できるんじゃないかと。そう思って俺は猫のコスプレについてネットや雑誌で徹底的に調べた。猫のコスプレと一言で言ってもその形態はそれぞれ違う。お前が今着ているもののようにネグリジェに耳を着けたものもあれば、下着姿に猫耳、裸に猫耳と尻尾、着ぐるみというものまであった。また色によってもどんな猫になるか変わっていく。その中で俺が一番興奮できるものを厳選に厳選を重ねて、最高の猫のコスプレ姿を決定させた。これならイケる確信を持ったんだ。実際にその姿を想像して興奮もした」
何だろう……。
私の腰に手を回しながら話す外崎の顔はいたって真面目なんだけど、話の内容が内容なだけにギャグで言っているように思えてしまう。
多分本気で言っているんだろうけれど。
いや、絶対に本気なんだろうけれど。
でも、私、今何を聞かされているんだろうって気持ちになる。
「それでいざ彼女に猫のコスプレをしてくれと言ったら、壮大に引かれてな。『そういう趣味だったなんて知らなかった』と軽蔑の目を送られた」
「それは不憫な……」
「別にいい。それは想定内だ。だが、俺は食い下がってどうにか猫のコスプレをしてもらったんだ」
外崎の元カノ、頑張った。
「だが、実際に着たところを見ても興奮しなくてな」
「えー」
「それどころかコレジャナイ感が増して、だんだんと萎えてきて……」
「えぇー」
人の性癖に文句とか異議を申し立てる気はさらさらないけれども、今は不服を申し上げたい。
何故そのあなたが萎えたものを私に着させているのだと。
そんな恥ずかしい思いをして着た彼女も不憫だけど、今の私のこの状況も十分不憫じゃない?
「それで森村に聞いてみたんだ。他にやってみてよかったプレイはなかったのかと。目隠し、緊縛、ナース服、ソフトSM。森村から聞いたあらゆるプレイを調べて彼女に提案して実行した。だが、ことごとく萎えて気持ちが盛り上がらないまま終わってしまってな。とうとう『あなたの変態な趣味にはついてはいけない。他の人を探して』と言われて振られたんだ」
「なるほどねぇ」
うーん……この場合は慰めの言葉が必要だろうか。
外崎も彼女のために一生懸命だったとはいえ、結局空回りしちゃったんだもんなぁ。
「俺は考えた。あれだけイケると思ったはずのプレイが、いざ本番になると萎えてしまうのか。リサーチが足りなかったのか。それとも期待が大きすぎていざ本番で委縮してしまうのか。ありとあらゆる理由を考えたが結論に至らなかったが、彼女が去ったときの言葉を思い出して、ようやく合点がいったんだ」
私は無意識に息を呑み込んでいた。
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