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同期が暴露した性癖の話(5)
しおりを挟む「外崎……それはやめておこう? 耳だけにしておこう?」
「それはできない。猫のコスプレはその耳と尻尾が合わさって初めて完璧なコスプレと言えるんだ」
「いや、無理だから。これはもう悲惨な未来しか見えないから」
私は首を横に振った。
それに外崎は『そんな!』と衝撃を受けたような顔をしていた。
いや、多分さっき私も同じような顔をして驚いたからね?
自然とここまで受け入れられると思っているあんたに私はびっくりだよ。
けれども彼は諦めなかった。
鬼気迫る勢いで私に力説してきたのだ。
「人間にはない三角耳と尻尾を生やしてこその猫のコスプレなんだ。尻尾は必要不可欠であり、絶対に必要な要素だ。もちろん、パンツにつけるタイプのものもあるが、それでは陳腐過ぎて完璧には程遠い。やはりお尻から生えてこそが猫の尻尾なんだ! 俺はそんな完璧な猫になり切った羽和子が見たい! ずっとお前の猫のコスプレを妄想している時にはこの尻尾がお前の可愛いお尻から生えていたんだ! 絶対にその姿を見たい! 絶対に可愛い! いや、可愛いに決まっているんだ! これだけは譲れない!!」
譲って!
名前の通りそこは譲ってよ! 外崎!!
そこはまったくもってこだわらなくていいところだから!!
「って言うかさ! コスプレとかの話じゃなくてあんたのそういうところが元カノに変態って呼ばれる理由なんじゃないの?! コスプレに自分の理想をどこまでも求め続けて妥協を一切赦さないから変人に見えるんだって!」
仕事も真面目だけど、まさか己の性癖にも真面目な性格を反映さているとは。その真面目さが転じて変態性を醸し出してしまっている悲劇。
「だから少しは頭を柔らかくしてさ!」
私はとにかく説得に走った。
この男の固い脳をどうにか柔らかくできないかと試みてみたのだ。
外崎は私の言葉に耳を傾けて『ううーん』と唸りながら考えてはくれたものの、結局は真面目な顔で私にトドメを指す。
「やはり尻尾はどうあっても必要だと思うんだ。猫だから。…………ダメか?」
私はその棄てられた子犬のような目を見て、どうしようもなくなって脱力した。
名前に反してまったく譲らない彼に完敗である。
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