あなたのすべてが性癖なのです。

ちろりん

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同期に大好きと言った日(1)

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「わぁ~凄い疲れた顔~。もしかして昨日は性なる夜だったんですか?」

 聞き覚えのあるセクハラまがいの声に振り返る。
 予想通りの人物がそこにいて、私はさらにげっそりとした顔をした。

「何だ……森村か」
「何だってなんですか? 樫原さん酷いなぁ」

 口を尖らせながら私の横にやってきた森村は顔を近づけて、こっそりと耳打ちしてくる。

「どうせ外崎さんにねっとりと激しく攻め立てられたんでしょ? あの人、樫原さんに対してはしつこそうだもん」
「あんたが変なこと外崎に教えたからでしょう?」
「元々外崎さんは興味のあるものは突き詰めるタイプじゃないですか。たしかにきっかけは私と私のせいかもしれないけど、ここまで拗らせたのは鈍い樫原さんせいでもあると思うけどなぁ」

 たしかに森村の言っているのは当たりだ。が、半分は納得がいかない。私が外崎の気持ちに気付かなかったのって、私のせいか? 外崎もさっさと腹を括って告白してくれればよかったのに。まぁ、それでも当時彼氏持ちの私は断っていただろうけれど。

「それで? 何のプレイをしたんですか?」
「…………猫」
「あぁ! 原点から試したんですね!」

 森村は何故か嬉しそうにガッツポーズを取っていた。

 森村雛子は見た目大人しそうな女性ながらも、その実中身はドSのおじさんだ。しかも胸もでかい。
 本人はバイを公言していて、外崎とは正反対の開けっ広げな性格。
 彼女、もしくは彼氏ができたら即幸せ報告。
 別れたら悲報を部署の皆に触れ回って、そしてまたいつの間にか恋人を作っているようなタイプだ。
 どこで見つけてくるのかは詳しくは聞いてはいないがその恋人たちはいずれもドMで、森村はその恋人がどれほど可愛いのかを語ってくる。とても幸せそうに。ついでにどれほどドSに愛でているのかも。

 言うなれば、外崎ともまた違ったタイプのキワモノだ。

「それで? 晴れて同期から彼氏に昇格した外崎さんはどうです?」
「…………まだ彼氏じゃない」
「わぁお! セックスはしたのにまだ付き合ってない? 焦らしプレイとは樫原さんもなかなかですね」

 別に焦らしプレイをしているわけじゃないんだけどね。
 けれど私は昨日、ホテルで一緒に朝を迎えてその後ランチして別れるときも答えを出さなかった。外崎も急かさなかったし、答えをすぐに出してくれとも言わない。ただ、じっくり考えてくれと。
 私はそれに甘えて二人の関係を宙ぶらりんにしているのだ。

「って言うか、森村は外崎の気持ち知ってたんだ」
「直接聞いたわけじゃないですけどね。でも外崎さんを見ていれば分かりますよ。樫原さんをねっとりとした視線をいつも送ってますもん」
「…………よく分かったね」
「分かりますよぉ。外崎さんは私似たタイプですからねぇ。だからそういう話も合うし。あ! 誤解がなきよう言っておきますけど外崎さんとはそういう話はしますけど、肉体関係とかはいっさい持ったことはありませんので。似すぎて合わないって言いますかね。それに今私彼氏いるんで」
「いや、大丈夫。そこはまったくもって心配はしていないから」

 森村の歴代恋人たちを見れば分かる。
 どう考えても外崎がそれに当てはまるわけがない。


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