あなたのすべてが性癖なのです。

ちろりん

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同期に大好きと言った日(2)

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「私としては……樫原さんの方が好みなんですけどねぇ」
「森村……」

 ゾクッとするような艶のある声を出しながら、森村は私の手を握ってきた。
 本当、顔とのギャップがあり過ぎるこの色気がヤバい。これに堕ちる人が多いのだろう。
 私は惚れたりはしないけれど。

「樫原さんはなんだかんだ言ってどんな変態なプレイでも受け入れてくれると思うんですよねぇ。潜在的なM? いいですねぇ。外崎さんも女性の趣味はいいと見える。どうですか? もしこのまま外崎さんを振るのであれば、私と私の彼氏と三人で……」
「やめろ森村。樫原に変なことを吹き込むな」

 何か恐ろしい誘いを受けようとしているとき、後ろから外崎の声が聞こえてきた。
 二人で後ろを振り返ると、ちょうどイヤホンを外しながら呆れたような顔をしている彼が。

「おはよう、樫原」
「お、おはよう」

 ちょっと顔を合わせるのは照れくさい。昨日の今日だから何となく意識してしまう。
 けれども外崎はさすがと言うべきか、ポーカーフェイスは完璧だ。いつもと変わり映えしない表情。私だけが意識しているようで悔しい。

「変なことって失礼な。自分だってその変なことを似たようなこと、樫原さんにしたんでしょう?」
「だとしても、こいつは今俺が口説いているんだ。横槍するなよ」
「はぁい」

 二人の会話を横で聞いていて、顔を赤らめるのを必死に抑えた。
 口説いてるって……たしかに外崎に口説いていいかと聞かれたけれど、改めて聞くと凄いことだなとドキドキしてしまう。本当に外崎は私を彼女に望んでいるんだと。
 そして、私は外崎を彼氏にするか、それとも同期のままでいるか決めることができるのだと。

「樫原? どうした?」

 ボーっとして考えていた私の顔を外崎が覗き込む。
 間近で見てもいい男だ。
 以前から色男とは知っていたけど、彼を男と意識しだしたらさらに男っぷりが増して見える。

 この人が、私の彼氏に?
 ――――あの変態的なリストを持った彼が?

 やはり私はそこに引っかかりを覚えて一歩踏み切れずにいた。

 一昨日は猫のコスプレをして彼のこだわりを受け入れたとはいえ、あれが付き合ったら毎回とかになると考えると付き合いきれるのだろうかと心配になる。普通にセックスをしてくれるのであれば最高なんだけどな。全然普通のでも気持ちよかったし、身体の相性は悪くないはず。

 きっと外崎のことだから、あのピンクのリストを消化させようとするんだろうけれどどうなんだろうか。
 私は彼の期待に応えられるのかな?

 私は最後の一押しがなくて決めかねていた。


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