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しおりを挟む夏らしい(?)お話が書きたくなったので書きました。
ほのぼのラブコメディです。
よろしければ~!
˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚
——『これはね、淫魔の胤で作った金平糖だよ。これを食べれば、想い人の淫らな妄想を覗き見ることができるんだ』
——『人間ってのは、自らの欲を虚空に描いて盛るもの。それがあればきっと、想い人の淫らな癖へきがわかりましょうや』
赤い着物を身に纏ったあやしいおばさんから渡された青色の小さな小瓶の中には、薄桃色の金平糖が入っていた。
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軽快な祭囃子を左から右へと聞き流しながら、俺——日野千夏は憂鬱な顔でりんご飴をかじっていた。
高二の夏、17歳の夏といえば、恋人と満喫するキラキラした夏が待っているもんだと思ってた。
だけど、俺のすぐそばを歩くのは、同じバレー部仲間の田沼と林田。
こいつらは、地元の祭りに行く相手のいない独り身の仲間たち。寂しさを紛らわせるためにこうして集まり、男だらけの夏祭りと決め込んでいる。虚しいにもほどがある。
「あ、あいつ隣のクラスの秀才くんじゃん。彼女いたんかよ……」
「マジか。なんか急激に負けた気分だな」
「いや、俺らに勝てる要素あったっけ?」
カップルを羨む声を耳にした俺は、のろのろと視線をそちらに向けた。
知的な銀縁ハーフリム眼鏡をかけた秀才くんが手を繋いで歩いているのは、大人びた容姿の浴衣美人だ。
一見おとなしそうで、学校では勉学以外これといって目立つところがないやつだが、ああして美人な彼女がいるというだけで、圧倒的な差を見せつけられてしまったように感じてしまう。
「いいないいなあ。祭のあととかどうすんのかな……」
「そりゃ……決まってんだろ」
「だよなぁ、いいなあ」
俺と同じく童貞の二人がどんな妄想をしているのかはわからないが、俺にとってはどうでもいいことだ。
——あーあ……俺も諒太郎と手ぇ繋いで祭とか来てみたいなぁ。
俺はりんご飴が刺さっていた棒を咥えたまま、橙色の灯りに照らされた夜空を見上げた。
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