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19.ご褒美にテンションが上がるのは自然の摂理なので許してください。
翌朝の目覚めは爽快だった。朝の冷水での禊ぎもすっかり慣れたもので、むしろ此の所など禊の後は体が軽く感じる様にすらなってきていた。
連結した扉から隣の浴室へ移り、湯で体を温め浴室から出るとリオルが待ち構えていて、夜と同じルーティンをこなす。
神官服を着せられ身嗜みを整えたら朝食をとり、棟内の祈りの間へ。
扉から出たら騎士様がいて驚いたけれど、今日から着いてくれるのだったと思い出しながら挨拶する。
「改めましてギルベルト・フェルスタと申します」
あれ、もう一度名乗ってくれるなんて、もしかして名前覚えきれなかったのバレてますか?
ギルベルト様は銀髪にグレイの目のシュッとしたイケメンだ。元クルト様の騎士の一人で、三人の中で一人だけ若い。確か23歳とか言ってたかな。若くでクルト様のお眼鏡に適ったのだから凄いよね。僕の中では真面目くんな印象。
「私はリヒャルト・サムデレリ」
こちらは金髪に緑の目。見た目は20代後半だけど正確には分かりません。少し垂れ目で目の下にほくろがあって、こちらもめちゃくちゃ女の子泣かせてそうなイケメンだ。すみません、完全な偏見です。
てか何なの? 騎士って顔選考があるの? イケメンしか騎士になれないのか。今この4人の顔面偏差値を僕一人で下げてる事実が悲し過ぎる。泣いていいですか?
「僕はユーリ・サトウです。ユーリとお呼びください。こちらは側仕えのリオル。よろしくお願いしますね」
リオルが軽い礼をとると、大きな声で返事を返される。今僕とリオル二人して、ひえ、ってなってたよ。
気を取りなおす様にリオルが行き先を告げると、僕達が前後に挟まれる形で移動する事になった。
祈りの間に着くと騎士様は扉前に陣取り、リオルと中に入る。いつも通りリオルが敷いてくれたクッションに膝をつき、祈りの姿勢をとった。
暫くしてリオルが出て行った事を確認して、昨日あったことや今日の予定、ちょっとした愚痴や感謝、楽しかった事など、ユグ様に小さな声で祈りとは名ばかりの一方的なお喋りをする。
取り留めもなく10分程話し、ユグ様に行ってきますと挨拶をして扉から出ると、待っていてくれた三人と共に調薬室に向かった。
この時点でまだ7時過ぎ。9時半頃にはいつもリオルがお茶に呼びにくるので、それまで中級ポーションの量産をする事にした。
昨日使った刻んだ薬草もまだ全然残っている。インベントリの時間停止様さまだ。時間停止じゃなかったら使い切らないとダメになっちゃってただろうし、本当に有難い機能。関繋材もたっぷりあるし、魔力は全回復してるだろうから体感では4回はいけそうな気がする。
普通のネトゲみたいにステ振りがあったら、魔力回復力みたいなのに全振りするのにな。まぁそんなのは無いのでやれる範囲で頑張って行くしかないけどね。
必要な道具を取りに行き作業台に並べ、早速取り掛かる。
集中していたのか気付けば4回分、新しい大瓶いっぱいに出来ていた。試験管換算で80本分!
魔力残量は多分あと一回出来るかどうかなんだけど、足りなくて具合悪くなったりしたら心配かけるだろうしやめておくことにしよう。
時計を確認するとまだ8時を少し過ぎた所だ。お茶の時間まで本で勉強して、お茶の時にクルト様に忙しくないか聞いて大丈夫そうなら、例の面倒そうな書簡を見に行っておこう。
ないと思うけど、もしもその内の一通が滝沢くんだったら申し訳ないし。
滝沢くんは、ポッドが隣室の同年代の男の子。噂に困惑して隣の僕に聞きに来た人。
接した感じは極々普通の人で明る過ぎず暗過ぎない、僕と同じ人種な気がして仲良く出来そうだったから、万が一にも無視とかしたくなかった。
本を一冊読んだ所でリオルが呼びに来てくれた。なんか、読む速度が上がってる気がするんだけど気のせいかな。植物の挿絵が多かったからか。
電球を確認すると低級の痛み止めに追記がされていた。痛み止めに言及した内容は無かった気がしたけれど、と確認してみると追記されていたのは、痛み止めの材料の一つに使われるハーブの正しい処理の仕方だった。
詳しいことは後で読み込む事にして、休憩室からクルト様の執務室へ誘いに行く。
「おはようございます、クルト様。お忙しいですか? お茶の時間ですよ」
「おはよう。もうそんな時間か。今行く」
クルト様はそう言いながらサラサラと何かを書いたあと、ペンをガラス製のお高そうなペンスタンドに戻し席を立った。
たったの其処からそこの距離なのに腰を抱かれ席までエスコートされる。貴族男子やべえ。そんな教育されなかったぞ僕は。
休憩室に入り席に着くと、クラウスさんがクロッシュが被せられたお皿を持ってきた。いつもお茶請けは先に用意されているので、後から持って来るのは珍しいなと思ったのも束の間、不思議そうにする僕にクスクスと笑うクルト様がクロッシュを取る様に促してくる。
不思議に思いながらも開けて目に入ったのは、食べたかった件のベリーのムースだった。瞬間、内心でテンションがマックスまで爆上がりして、心の中だけお祭り騒ぎだ。
「やったー!!」
ごめんなさい嘘をつきました。内心どころか、行儀悪く椅子を鳴らして立ち上がってしまう程喜んでしまっています。
「ご褒美の! うわー、え、まさか1ホール!? うそっ、いいんですか!??」
ムースに釘付けだった視線を無理やり剥がしクルト様を見ると、慈愛の目で見られており、自身の奇行に我に返る。
めちゃくちゃ恥ずかしい。僕は赤ちゃんか??? 我ながら成人男性のしていい喜び方じゃなかった。
恥ずかしがっている間に切り分けられ、目の前にサーブされた。
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