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28.同じ神殿に所属するリベルなのに差をつけるのは良くないと思います
しおりを挟む話は終わったので、お帰りいただいてくださいと騎士様に頼むと、鮮やかとしか言えない程流れる様に若様を拘束し退出させてくれた。二名ほど一緒に出て行ったので出口まで送ってくれるんだと思う。
扉から出る直前まで、罵倒されましたけどね。股がゆるいだのブスだのなんだのって男の僕に言われてもな。侮辱が見当違い過ぎて、は?って感じだし、内容が僕の事だけだったから反論するのも面倒なので黙っていたら、若様は去り際に澤村さんからキッツい一言を刺されました。
「何度も言いましたが、俺は貴方を好いていません。婚約も結婚も幾度申し込まれてもお断りします。・・・・・・貴方がやっている事は、貴方が嫌っていた、若い娘や少年を金と権力で無理やり手にするヒヒジジイとやらと、何が違うのか? 悪いが俺にとっては同じにしか見えない。生活の助けへの感謝はとうに消え、今は只々不快だ。ああ、それとこれ、ずっと受け取っていただけなかった生活費です。多めに入ってる筈なので、もう関わらないでください」
ですってよ。若様は呆然と目を見開き絶句していて、差し出された袋を思わず受け取った従者さんが慌てるその隙を逃さず騎士様が二人を連れ出したので、悪役令嬢(男)の退場はアッサリ終わりました。
というか渡したあの大金どうしたの? 袋には金貨がずしっと入ってるように見えましたけど。こっち来てこの二週間足らずで、もうそんなに稼いだの??? もしかしてキミも隠れチート野郎なの?
と、言う疑問は一旦置いておいて。
悪役令嬢に対抗するポジションとして上がるのはヒロインだけど、僕、痛ヒロインにはなってないよね? 誰も虜にしてないからセーフなはず。
ここはBL時空じゃないから逆ハーとかも無いし、ラノベ主人公さんムーブもできそうな様子はない。むしろ周りにはやたらと有能人間が多いくらい。虚しい。
・・・・・・何はともあれ、取り敢えず一見落着? かな?
「「はぁ」」
思わずため息が重なって、顔を見合わせると何方からともなく笑ってしまった。
「一先ず身の安全は確保出来ましたね」
「助力いただいて本当にありがとうございます。なんとお礼を言っていいか」
「いいえ。僕はついて来ただけですし。貴方を受け入れて良いと許可を下さった枢機卿様のおかげですよ。なのでそのお礼はその方に伝えておきますね。それに、貴方が逃げたいと、ちゃんと足掻いたからこそ助ける事ができたのです。頑張れて偉かったですね」
そう言うとまた、じわっと澤村くんの目が潤んだので頭を撫でておく。なんか僕も条件反射になっちゃってない? これ。
彼は潤んだ目をぎゅっと瞑った後、これからよろしくお願いしますと頭を下げて来た。こちらこそよろしくね、と返すと長い腕が体にまわって、ぎゅっと抱きしめられる。もう大丈夫ですよ、と背中をポンポンと叩くと暫くしてそろ、と離してくれた。この子中々にスキンシップ過多だね?
ソファに戻りお茶で喉を潤してから、リオルに頼んで澤村くんの部屋へ先導してもらっている道中、澤村くんがいる逆隣に何故かクロード様がピッタリ張り付いてくる。なにこれ??
「あの、クロード様?」
「はい。どうかなさいましたか?」
「いえ、そのー、少し近くありませんか・・・・・・?」
「おや、クルト様とはいつももっとくっついてらっしゃるじゃないですか」
「ええ? そうでしたでしょうか・・・・・・」
そうか? エスコートして貰ってる時でもそんなにくっ付いてないと思うんだけど。
と、思ったら澤村くんに突然手を繋がれました。流れる様な動作に、これだからモテる奴はよ! と思いつつ、そもそもなんでってなったので見上げると、知らない場所で人の目が少し不安になって・・・、だってさ。
ならまぁ仕方ないか。だって、しょんぼりしたワンコがクーンて鳴いてるのを幻視してしまったのだもの。
・・・・・・と、思ったら。なんか僕のはるか頭上で二人、バチバチしてない?
えっ。まじでどう言う事。
僕は鈍感系主人公じゃ無いので、澤村くんが僕に懐いたのは何となく分かったけれど、クロード様はおかしいでしょ。
そんな素振り見た事ないし。クロード様に気にされる理由もない。
・・・・・・どうしよう、クロード様の考えが分からなさ過ぎてめんどくさくなってきた。この二人、今度からあんまり会わないようにしてもらうのが一番楽かも知れない。
この奇妙な一団を通りすがる神官様達に凝視されながら暫く歩き、男性神官の住まいのある棟へ着いた。
この棟の一階は食堂や浴場など公共のもの以外の部分は、神殿に入ったばかりの者が滞在する仮の部屋が占めているらしく、澤村くんは自身のやりたい事が見つかるまでここに住む事になるらしい。
「お部屋はこちらです」
位置的には、僕のお世話になっているクルト様の棟に繋がる渡り廊下にほど近い場所だ。クロード様達の部屋もこの棟の最上階にあるらしい。リオルは僕のお世話係なのでクルト様の棟の下の方の階に部屋がある。
どんな部屋か好奇心半分、不便が無いか確認半分で一緒に部屋に入る。まぁ、手が繋がれたままなので入るしか無いんだけど。
部屋は寝室と居間のふた部屋のようだ。歩きながら見てきた感じだと、扉のある間隔が狭いとこから段々広くなって来ていたので、ここは多分広い方なんだろう。大まかにだけれど、寝室が十畳、居間が十五畳くらいだと思う。
クロード様と騎士様は扉の外で待機しているのをいい事に、二人で探検する。マンションの内見をしてるみたいでちょっと楽しい。
寝室にあるクローゼットも広いしベッドもそこそこ大きい。居間はリビングダイニング見たいに、寛ぐ部分と食事が出来そうなスペースと小さなキッチンがあったりして、本当に一人暮らしのマンションみたいだった。基本的に必要な家具も全部揃っている様だ。
「こちらに居るのはそう長い間ではないと思うので、趣味の物などは自身の部屋に移ってから購入された方がいいでしょう」
「食事や湯浴みはどうするの」
「基本的に食堂で取っていただくことになるかと。湯浴みも一階の大浴場で。食事は食堂で受け取りこちらへ持ってきてここでいただく事も出来ます」
なんか、悪い意味で僕と待遇が違い過ぎない? モヤモヤする。でも自分もお世話になってる身で澤村さんにも同じ様にしろって言うのは、さすがに図々しすぎるし。あ、なら、
「それなら、僕も部屋じゃなくてそろそろ食堂へ行く様にした方がいいね。澤村くんも一人で知らない人の中に放り込まれるより、その方が安心でしょ?」
そう熟慮せず言うと、リオルにぎょっとした様に振り返られた。
「いえ、それは、その、クルト様に伺ってみないと、僕からは、なんとも」
めっちゃ歯切れ悪くなったね。だけど僕と澤村さんは同じリベルなのよ。ログインの条件も同じで、更に神殿に来たなら差をつけるのはどうなんでしょう。
まぁでも、ここでリオルにぶつけるのは違うっていうのは分かるので、後でクルト様に聞いてみないとだ。
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