トランプデスゲーム

ホシヨノ クジラ

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デスゲーム

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「遊ぼうよ、エルラ」
優しい光が差している
小さい頃よく遊んだ君はいつの日か居なくなってしまった
どんな子だったか
どこに行ったのだろう
私にはわからない
ただこの温かい光にもっと包まれていたい

「エルラ」
意識は戻される、冷たい空間へと
ランが向かいにあるソファに座っている
どうやら机に突っ伏して寝ていたらしい
「夢、見てた?」
ランが私が起きたのに気がつくとそう聞いた
たぶん夢を見ていたのだろう、少し確認する間を置いた後答える
「見てたと思う」
適当に答えた
「そう」
きっと確認しただけだったのだろう
興味なさそうな返事だった
「じゃあ、次のデスゲームをするよ」
チャシカーの声が指示を出した
モニターに映るチャシカーの首のチョーカーは
ダイヤとハートの2つのマークというアンバランスなものだった
でもどうでもいいんだ、私は生きないといけない
約束があるんだから
「次のゲームは殺し合いだよ」
簡単なゲームでよかった
これなら死なないで済む
「ルールは特にないよ
 部屋に移動したらスタートね」
チャシカーが指パッチンをして部屋の景色が一面、白へと変わる

死は生きたいという思いを強くする
その思いは怖く、そのためなら何でもすることだってある
化け物になってまでなんで生に縋っているのだろう
人間はどうして殺し合うのか?
さあ、始めよう
殺し合い開演だよ

白の部屋に浮いている灰色を掴んだ
それはナイフだった
これで殺すのか
私は死にたくない
それに理由なんていらないじゃない
ナイフをランに振り下ろす
白に映える鮮やかな赤が広がっていく
それが綺麗で美しかった

私は昔から合わせてきた
嫌われたくなかったから
親には嫌われていた
兄のことばっかりを見ていた親は
私のことを物のように扱った
だから親以外には好かれようと思って
必死で頑張った
優等生を演じて、誰にでも優しく笑顔振り撒いて
空気を読んできた
自分の意志がないまま過ごしたが
嫌われたくないというのは私にとって大きな想いだった
嫌われないように合わせていたら
いじめっ子と一緒になっていた
いじめを助けたい
そう思っても強く根を張った嫌われたくないという気持ちが邪魔をする
勇気がなかった私のせいだ
いじめた子たちは自殺した
私の前で飛び降り、首吊り
あの景色は今も脳髄にこびりついている
呪いのように絡まりついている
誰かわからない絶望しきった顔が
あの鮮やかな赤が
鮮明に残っている
結局助けることなんてできなかった
こんな私が嫌だった、大嫌いだった
好かれてないなら、必要とされないなら死ねばいい
私は死のうとしていた、だけど死ねない
勇気がないから
君たちみたいに強くないから
だから最初デスゲームと聞いて嬉しかった
はずなのに、約束があるから
生きないといけないだ
私は死にたくないんだ
死にたくない
死にたくない
死にたくない
死にたくない


「怖いね、人間って」
猫耳の少年が面白そうに言った
「もうあれは化け物だと思うけど」
面白そうな声に対し、静かに言い放つ
「まあね、でもランも人間だろ?」
少年は首を傾げて見せた
「どうかな、私は人間にすらなれなかったんだ」
そう答えると遠くを見つめて目を細めた
まるで記憶を懐かしむように

エルラとは双子だった
いや、双子とも言えないのかもしれないけど
私は生まれる前に死んだ
それでもエルラと一緒にいたいから
守っていたかったから
何もしないまま、誰にも知られないまま死にたくなかったから
エルラと小さい頃は遊んでいた
でも時間がたつにつれ、私のことを忘れていった
誰もに忘れられた幽霊は誰かの記憶に残ろうとした
それが復讐の手伝いであった

「ねえ、依頼はどうなったのかな」
少年は沈黙から話題を出した
「私の役目は復讐することだけ。何をすればいいかなんて言われてない
 フジノもツユキも何も言ってなかったでしょ?」
ランは淡々としていた
それに少年は首を捻った
「うーん確かにね、それでツユキとフジノは?」
少年は深く考えることもせず違う話を始める
「居場所にでも帰ったんじゃない?
 とっくにあいつら死んでるでしょ」
ランは事実だけを並べた
「そうだね、死者から依頼なんて珍しいね」
少年はおもしろそうである
と言ってもどうでも良さそうだったが
「本当に久しぶりね」
無表情のままだったが、懐かしさが滲んでいる
ランは遠い記憶を見ながら言葉を溢した
「ねえ、あの子はいつになったら気づくと思う?」
不安そうな声には少し心配している感じが伺えた
「さあ」
少年は興味が無さそうに言う

いつの日だったか、私は人を殺したと言った少女がいた
私も償って死にたいと言った
ここは復讐の依頼だけを受けているから断ろうと思ったが
面白いことにその少女は死んでいたのだ
死にたいと言ったが、そう言う前に行動に移していたのだろう
死んでから生きたいと願うだなんて
無くなってから価値に気づくなんて
もう手遅れだ
その醜さはまだ人間だと言ってもいいけどね、エルラ?

今回は、“デスゲーム”なんだから
みんな死んでるにきまっている
何か勘違いしていない?
そろそろ続きを始めるよ
まだ残っているから

「人形、エルラに次の階に行くよう伝えて」
その言葉とともに少年(?)は口を開いた
「次の階に行ってね、エルラ」
モニターにはエルラの不思議そうな顔が映る
「私、1人でしょ?」
顔は絶望している
「まだいるよ、ほらそこに」
少年(?)はこっちを指差して言う
「おまえのことだよ」
エルラの顔は絶望の色が消え、楽しさに満ちた
「死なないために殺さなきゃ」
一歩ずつ進む
手には赤く染まった包丁がある
エルラも鮮やかなな赤がところどころついている
全てを見ても、もう誰かわからない
化け物のような殺気を帯びている
こちらを向いて口を開いた

「お前を殺す」






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