転生生活をまったり過ごしたいのに、自作キャラたちが私に世界征服を進めてくる件について

ihana

文字の大きさ
40 / 48

40話 大噴火

しおりを挟む
 となりの豚トロと別れてからクモの大福たちはレレムの街へと戻って来ていたのだが、異常事態が発生していた。
 大地震が頻発しており、火山活動が明らかに増していたのである。

「おい、なんかやべぇぞ! こんなの初めてだ!」
「どうする!? 逃げるか!」
「逃げるったってどこに逃げる! ダイフクの姉さん、あんたは逃げないのか?!」

 ライルに問われて、愚問とばかりにクモの大福は鼻を鳴らす。

「わらわはレレムの街に害をなすものがあれば全て守るとトロポーク様より命じられておる」
「だ、だが、現状だと――」


 ドガァァァァン!!!


 そう述べようとした瞬間、山が爆ぜた。

 火口付近にあった山肌は消し飛び、大量のマグマが溢れ始めている。
 それと同時に、上空へと飛来した火山弾が大量に降り注いできていた。

「なっ! 噴火しやがっただとっ!!!」
「マジかよ……。レレム山は噴火しねぇって学者も歴史も言ってたじゃねぇか……
「やべぇぞ! ここには噴火時の対策がろくに用意されてねぇぞ!」

 ライルやリンディスはおろか、周囲にいる住民たちの顔からも生存に対して諦めの色が浮かび始める。

「くそっ! 逃げるぞ! 諦めんな! まだ命がある! だったら最後まで足掻くぞ!」
「あ、ああ……、そう、だな。すまない、弱音を言った」
「ダイフクの姉さんもっ!」
「わらわはここに残る。それが主命じゃ」
「何言ってんだ! ここに残ったって死ぬだけだぞ!」
「例えそうであってもじゃ」

 火山弾が降り注いでくる。

「わらわは――」

 五百年も待ち続けた主の言葉を思い返す。

『レレムの街に害を為すものがあれば、これを全て守ること。
 たとえ相手がなんであろうとも』

「――守ってみせる! スキル【破邪の衣】!!」
「何してんだ姉さん!? 相手は溶岩だぞ! 人間がどんだけ足掻いたって大自然の猛威になんて敵うはずがねぇよ! 今すぐ逃げよう!」
「そうかもしれんの。おぬしらは逃げたければ勝手に逃げよ。守るべき者が減った方が、わらわとしても都合が良い」
「守るだとっ!? あの降り注ぐ火山弾をどう防ぐ!? それにこのあとマグマも押し寄せてくるんだぞ!」
「関係あらん。それがわらわのすべきことじゃ」
「なんで、そんな……。今日初めてこの街にやって来たレレムになんの関係もない人なのにっ!」
「時間が惜しい。おぬしらと喋ってる暇はあらん。ゆくぞえ!!!」

 クモの大福はそのまま助走なしに飛びあがり、街の外壁の上へと飛び乗る。

「乱るるは栄華にして、舞い散るは不可視! 【百花・繚乱】」

 手先から無数の斬撃蜘蛛糸を飛ばし、降り注ぐ火山弾を撃墜していく。

「な、なんだ、これはっ……?! 何が起きているっ!」
「姉さんなのか? これをやってるのは?」
「逃げぬのならはよお避難誘導をせい! こう人が散らばっておっては守るもんも守れんからして!」
「わ、わかった! リディ、やるぞ!」
「おい! 逃げないのかよ!?」
「逃げてられっかよ」

 ライルがリンディスと顔をつき合わせる。

「今日はじめてこの街に来た者が命を懸けてレレムを守ってんだぞ。ここで逃げたら男が廃るぜ」
「くそっ、仕方ねぇな!」

 大量に降り注ぐ火山弾を迎撃するに当たって問題は数だ。
 いくら超性能を誇るクモの大福であろうともすべての迎撃は困難となる。
 いくつかは街へと被弾し周囲を焼き始めていた。

 そこへこの街の衛兵隊長と思しき人物がやってきた。

「君は冒険者か!? 衛兵隊長のローラントだ! 助力感謝する! 何か手伝えることはないか!?」
「邪魔じゃ! さっさと避難せよ!」
「だ、だが我々はこの街の衛兵だ。それにあれを見ろ!」

 少し向こうの方から森を焼きながら大量のマグマが押し寄せてきている。

「石製の外壁でも多少は持ちこたえられるだろうが、氷の魔法で可能な限りマグマの侵攻を阻止しようと思う。君は火山弾の方の処理をお願いできるか?」
「どちらともわらわのみで対処可能じゃが?」
「けっこうなことだ。では我々はこの街を守る衛兵として、この街の防衛活動に入る!」
「勝手にせい」

 襲い来る火山弾を次々に迎撃しながら、ついにはマグマが街の外壁近くへとやってきた。
 衛兵たちから大量の氷魔法が飛んでいるが、いかんせん威力が弱く焼け石に水の状態である。
 おまけに――

「うあああああ! く、くるな、くるなぁ!!!」

 その溶岩の中からは魔物たちまで飛び出してきたのであった。
 出てきたのはレベル800ほどの凶悪な魔物たち。
 この街の衛兵では一発でHPを全損してしまうであろう。

 火山弾の対処に魔物の撃滅、そして溶岩侵入の阻止。
 どう考えても手が足りない状態であったため、クモの大福はやむを得ず変化の術を解いてアラクネの姿へと戻っていく。

 その姿に衛兵たちは最初こそぎょっとしていたが、こちらに危害を加えることなく、魔物たちだけを屠っていくのを見て、ややもすると味方と認識するようになっていた。

 外壁上を飛び回りながら、クモの大福は魔物たちを八つ裂きにして回る。
 その一方で火山弾の迎撃の手も緩めることができない。
 問題は――

「くっ、マグマの量が多すぎるの……」

 アラクネ種は炎が弱点属性となっている。
 むろんクモの大福は対策スキルを多数兼ね備えているのだが、さすがに押し寄せるマグマを食い止めるスキルは持ち合わせていない。

「姉さん! とりあえず住民を第三門の内側に逃げるよう誘導してる! 姉さんもいざとなったらそっちまで逃げて下さい!」

 なんて言葉が壁下にいるライルから聞こえてきた。
 レレムの街には内壁が全部で三つある。
 彼が言っているのは一番内側の門であろう。

「くっ、このままではもたんの。じゃが、わらわはそれでも守って見せる!! 壁に耳あり障子にメアリー防衛責任者! こんなところで負けはせんわっ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

処理中です...