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46話 目指すは亜人領
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街の名前は無事『旅は道連れ世はOh Year!!』へと決定した。
ちくしょう。
その看板ができあがったころ、私とハムちゃんは砂クエを目指して亜人領に出立することとなっていた。
相も変わらず過保護な見送りを受け、今は馬車に揺られて亜人領をゆったりと進んでいる。
ちなみに、この馬車は私の私物で、御者なしに自動で目的地へと向かってくれるアイテムだ。
「豚トロ様、一つ質問をよろしいですぜい?」
「ん?」
「なぜ転移で目的地へと向かわねーんですか? この移動にゃなんか特殊な意図があるっつーことですかね?」
「単にまったりとした旅をしたいからだよー。それと、何かイベントでも起こってくれないかなーって期待してる」
「イベント……ですか?」
「うん! 野良狩りにあったりさー、いきなり暗殺者がきたりとかさー。エクスペディションオンラインって基本的に卑怯上等なんでもありの設計になってたからね。突発クエストも多かったし、プレイヤーの乱入もままあったのよ。まあマナー的に野良狩りは禁止って風潮あったけど、それでもやっぱやる人いたからなぁ」
「豚トロ様を暗殺など言語道断ですね! そんなやつぁ俺が八つ裂きにしたあと市中引き回しにして、しまいにゃ消し炭にしてやりますぜぃ!」
「いや、そこまでしなくていいから」
「しかし……ってこたぁそのイベントが来るのがわかってるってわけですね!! そしてそれが世界征服につながっていると!」
「あー……。え?」
この子なに言ってんの??
「あ! いえ、なんでもありやせん! しっかりと勉強させていただきます!!」
「……」
なんだかすごく嫌な予感がする。
クマちゃんはこの前、この流れでとんでもない勘違いをしまくっていた。
と言うことは今回もそのパターンなのであろう。
……ただ、あの時はどれだけクマちゃんを訂正しようとしても、結局は徒労に終わってしまった。
つまりは今回も相手にするだけ時間の無駄なわけで。
「そういえばさ、ハムちゃんお芝居の練習の方はどう? 日程決まった?」
たしか龍族の集落にて行われるお芝居に参加するとこの前言っていた。
「え゛!? あ、いや、えっと……、れ、練習の方はじゅ、順調です。に、日程は、えーっとどうだったかなー、たしかまだだったようなぁ……」
「そっか。決まったら教えてね。すっごく楽しみっ!」
「そ、そうですか……」
「……ごめん。やっぱり行かない方がいいかな? あんましハムちゃんに迷惑かけたくもないしさ」
「え゛! いえいえ! そんなことねーっすよ! えっと、そ、そうじゃなくて……、そう! ちょっと恥ずかしいんすよ!」
「そっか。まあお芝居ってそうだよね。でも私はすんごく楽しみにしてるんだー。エクスペディションオンラインだとPMCが自分のお芝居をするなんて絶対になかったからさ。それが見れるのなんて超楽しそうじゃん!」
「そ、そうですね。ま、まあ楽しみにしていてください。日程は追って連絡しやすんで」
「うん」
なぜだかハムちゃんが俯いているように見えるが、たぶん気のせいであろう。
景色はメアリーがある森から沼地へと変わり、徐々に亜人領へと近付いてきた。
「そろそろ亜人領ですぜい」
「国境とかないの?」
「メアリーはちょうど人族領、魔族領、亜人領の中心点あたりに位置してます。あの辺りは俺らが活動してたおかげで死の森って呼ばれてて、基本的に人が近づかねぇんでさぁ。だから、国境はあってないようなもんなんですよ」
「へぇ。んまあ、メアリーが地獄の入口って呼ばれてたぐらいだしね」
「しっかし、地獄ですかい。となりの豚トロ様がおつくりになられた場所なんですから、天国とか極楽とかもっとまともな呼び名をつけてもらいたいもんですね」
「……。ちなみに、これまでやって来た人らに対してはどんな感じの対応してたの?」
「そりゃあもちろん、豚トロ様の聖域に侵入してきた無法者どもなんぞ、残らず八つ裂きにしてやりましたぜい!!」
そりゃ地獄の入口って言われてもおかしくないでしょ。
生きて帰れないんだから。
「はぁ……。なんというか、ほどほどにね」
「はい! ほどほどの半殺しにしときやす!」
「違う、そうじゃない」
沼地を過ぎて街道に出てすぐ、私たちは違和感に気が付いた。
「前方に何かいるわね。複数」
「ですね。ここは俺が。どんな野郎でも皆殺しにしてやりますぜぃ」
「ちょっと待ちなさい。ハムちゃんさ、いったん殺しは禁止。制圧するだけにすること。あと龍の姿に戻るのも禁止。人型のまま活動すること」
「この状態ですとステータスにだいぶ制約がかかりますぜい?」
「それでも十分よ。わかった?」
「もちろんですぁ! 豚トロ様の御命令に間違いなんてあるはずもねぇ!!」
いや、そこはちょっと疑ってよ……。
馬車を降りて状況を確認する。
遠めに別の馬車が横転していて、戦闘が起こっているようだ。
どうも複数の狼人男性が、犬人女性一人を取り囲んでいるように見える。
おお!
これはまさに!
イベントテンプレで良くある救出イベントだ!!
なら私たちがあの女性を救出すればイベントは進むはずっ!
「あの女性を助ける方向でいくよ」
「はい!!」
出ていくタイミング見計らいながら彼らの様子を伺う。
「おうおうお姫様よぉ! 元気だなぁ」
「素直になるんなら、俺らが楽しむ間くらいは生き残れるぜ? まあ、殺してこいって命令だから最終的には殺すがな」
「おいおい、こんな別嬪を殺しちまうのかよ。もったいねぇじゃねぇか。殺したことにして、捕まえた方がいいんじゃねぇか?」
「ちゃんと首を持ってこいって言われてんだよ。じゃねーと報酬が払われねぇそうだ」
「そうかい。ならしゃーないな。存分に楽しんでから殺すとしようぜ!」
そう言いながら狼人男性の手が犬人女性の方へと伸びる。
だが次の瞬間、血しぶきが舞った。
男たちは最初、何が起こったのか認識することができなかったであろう。
なぜなら伸ばしていた手がいきなり消えてなくなってしまったからだ。
だが、徐々に現実を認識した男の口から叫び声が発される。
それと共に動揺が走り、浮足立ったところでハムちゃんが犬人の女性を守るように立ち塞がった。
「ぐおおおおおあぁぁぁ!」
人型に変化しているとはいえ、ハムちゃんは大半の龍スキルが使用可能となる。
スキル【龍咆哮】によりレベルの低い男どもは戦意を喪失。
全員が武器を投げ出し、大の大人であるというのに、その場でへたり込んで泣き出してしまうのだった。
ちくしょう。
その看板ができあがったころ、私とハムちゃんは砂クエを目指して亜人領に出立することとなっていた。
相も変わらず過保護な見送りを受け、今は馬車に揺られて亜人領をゆったりと進んでいる。
ちなみに、この馬車は私の私物で、御者なしに自動で目的地へと向かってくれるアイテムだ。
「豚トロ様、一つ質問をよろしいですぜい?」
「ん?」
「なぜ転移で目的地へと向かわねーんですか? この移動にゃなんか特殊な意図があるっつーことですかね?」
「単にまったりとした旅をしたいからだよー。それと、何かイベントでも起こってくれないかなーって期待してる」
「イベント……ですか?」
「うん! 野良狩りにあったりさー、いきなり暗殺者がきたりとかさー。エクスペディションオンラインって基本的に卑怯上等なんでもありの設計になってたからね。突発クエストも多かったし、プレイヤーの乱入もままあったのよ。まあマナー的に野良狩りは禁止って風潮あったけど、それでもやっぱやる人いたからなぁ」
「豚トロ様を暗殺など言語道断ですね! そんなやつぁ俺が八つ裂きにしたあと市中引き回しにして、しまいにゃ消し炭にしてやりますぜぃ!」
「いや、そこまでしなくていいから」
「しかし……ってこたぁそのイベントが来るのがわかってるってわけですね!! そしてそれが世界征服につながっていると!」
「あー……。え?」
この子なに言ってんの??
「あ! いえ、なんでもありやせん! しっかりと勉強させていただきます!!」
「……」
なんだかすごく嫌な予感がする。
クマちゃんはこの前、この流れでとんでもない勘違いをしまくっていた。
と言うことは今回もそのパターンなのであろう。
……ただ、あの時はどれだけクマちゃんを訂正しようとしても、結局は徒労に終わってしまった。
つまりは今回も相手にするだけ時間の無駄なわけで。
「そういえばさ、ハムちゃんお芝居の練習の方はどう? 日程決まった?」
たしか龍族の集落にて行われるお芝居に参加するとこの前言っていた。
「え゛!? あ、いや、えっと……、れ、練習の方はじゅ、順調です。に、日程は、えーっとどうだったかなー、たしかまだだったようなぁ……」
「そっか。決まったら教えてね。すっごく楽しみっ!」
「そ、そうですか……」
「……ごめん。やっぱり行かない方がいいかな? あんましハムちゃんに迷惑かけたくもないしさ」
「え゛! いえいえ! そんなことねーっすよ! えっと、そ、そうじゃなくて……、そう! ちょっと恥ずかしいんすよ!」
「そっか。まあお芝居ってそうだよね。でも私はすんごく楽しみにしてるんだー。エクスペディションオンラインだとPMCが自分のお芝居をするなんて絶対になかったからさ。それが見れるのなんて超楽しそうじゃん!」
「そ、そうですね。ま、まあ楽しみにしていてください。日程は追って連絡しやすんで」
「うん」
なぜだかハムちゃんが俯いているように見えるが、たぶん気のせいであろう。
景色はメアリーがある森から沼地へと変わり、徐々に亜人領へと近付いてきた。
「そろそろ亜人領ですぜい」
「国境とかないの?」
「メアリーはちょうど人族領、魔族領、亜人領の中心点あたりに位置してます。あの辺りは俺らが活動してたおかげで死の森って呼ばれてて、基本的に人が近づかねぇんでさぁ。だから、国境はあってないようなもんなんですよ」
「へぇ。んまあ、メアリーが地獄の入口って呼ばれてたぐらいだしね」
「しっかし、地獄ですかい。となりの豚トロ様がおつくりになられた場所なんですから、天国とか極楽とかもっとまともな呼び名をつけてもらいたいもんですね」
「……。ちなみに、これまでやって来た人らに対してはどんな感じの対応してたの?」
「そりゃあもちろん、豚トロ様の聖域に侵入してきた無法者どもなんぞ、残らず八つ裂きにしてやりましたぜい!!」
そりゃ地獄の入口って言われてもおかしくないでしょ。
生きて帰れないんだから。
「はぁ……。なんというか、ほどほどにね」
「はい! ほどほどの半殺しにしときやす!」
「違う、そうじゃない」
沼地を過ぎて街道に出てすぐ、私たちは違和感に気が付いた。
「前方に何かいるわね。複数」
「ですね。ここは俺が。どんな野郎でも皆殺しにしてやりますぜぃ」
「ちょっと待ちなさい。ハムちゃんさ、いったん殺しは禁止。制圧するだけにすること。あと龍の姿に戻るのも禁止。人型のまま活動すること」
「この状態ですとステータスにだいぶ制約がかかりますぜい?」
「それでも十分よ。わかった?」
「もちろんですぁ! 豚トロ様の御命令に間違いなんてあるはずもねぇ!!」
いや、そこはちょっと疑ってよ……。
馬車を降りて状況を確認する。
遠めに別の馬車が横転していて、戦闘が起こっているようだ。
どうも複数の狼人男性が、犬人女性一人を取り囲んでいるように見える。
おお!
これはまさに!
イベントテンプレで良くある救出イベントだ!!
なら私たちがあの女性を救出すればイベントは進むはずっ!
「あの女性を助ける方向でいくよ」
「はい!!」
出ていくタイミング見計らいながら彼らの様子を伺う。
「おうおうお姫様よぉ! 元気だなぁ」
「素直になるんなら、俺らが楽しむ間くらいは生き残れるぜ? まあ、殺してこいって命令だから最終的には殺すがな」
「おいおい、こんな別嬪を殺しちまうのかよ。もったいねぇじゃねぇか。殺したことにして、捕まえた方がいいんじゃねぇか?」
「ちゃんと首を持ってこいって言われてんだよ。じゃねーと報酬が払われねぇそうだ」
「そうかい。ならしゃーないな。存分に楽しんでから殺すとしようぜ!」
そう言いながら狼人男性の手が犬人女性の方へと伸びる。
だが次の瞬間、血しぶきが舞った。
男たちは最初、何が起こったのか認識することができなかったであろう。
なぜなら伸ばしていた手がいきなり消えてなくなってしまったからだ。
だが、徐々に現実を認識した男の口から叫び声が発される。
それと共に動揺が走り、浮足立ったところでハムちゃんが犬人の女性を守るように立ち塞がった。
「ぐおおおおおあぁぁぁ!」
人型に変化しているとはいえ、ハムちゃんは大半の龍スキルが使用可能となる。
スキル【龍咆哮】によりレベルの低い男どもは戦意を喪失。
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