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第九幕 愛と想い
一 愛と想い
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翌日、私の部屋に光秀さんが訪ねに来ていた。
「光秀さん、今日はどうかされたんですか?」
「前に、散歩をまたしようとお嬢さんは言ってくれてたからね。今日は散歩をしようと誘いに来たんだ」
確か前に光秀さんと散歩をしていたときは、秀吉さんに手伝いを頼まれて腕を引っ張っていかれたんだよね。
秀吉さんに引っ張られながら振り返って、光秀さんにまた一緒に散歩しましょうねって声をたけたけど、かなり離れてしまった場所から声をかけたため、光秀さんには届いていないかもしれないと思ってたけど聞こえてたんだ。
「はい、是非一緒に散歩させていただきたいです!」
私が答えると光秀さんは微笑み、私の手を掴むとそのまま庭へと向かった。
何だか手を握られていると恥ずかしい気持ちになり頬が熱くなる。
二人で庭を歩くが、手はしっかりと握られたまま放される様子はない。
「あ、あの……手を繋がれるのは恥ずかしいのですが」
「すまないね。でもお嬢さんとこうしていたいんだ、他の女人とは違うお嬢さんと」
「え?」
他の女人とは違うってどういうことなんだろうか、確かに私はこの世界の人から見たら変わっているかもしれないけど、私のいた世界では普通の人だと思う。
でも、普通の人なら戦に同行なんてしようと思わないかもしれない。
「やっぱり私、変わってますもんね」
「そうだね、君は変わっている。でも、それとはまた違う意味なんだ」
そして光秀さんは自分のことを話始めた。
光秀さんは生まれつき色香を纏ってしまう体質で、女人はその色香に引き寄せられてしまう。
そんな女人ばかりで光秀さんはうんざりしていた時に現れたのが私だった。
そして私は光秀さんのことを知りたいと言った。
今までよってくる女人は沢山いたが、光秀さんのことを知りたいと言う人は一人もいなかった。
「そんなお嬢さんに、俺は惹かれていったんだ」
「光秀さん……」
「俺はお嬢さんを信長様の物としてではなく、お嬢さんを一人の女人として大切にしたい」
これってもしかして、光秀さんに愛が芽生えたってこと?
私は光秀さんからの突然の告白に嬉しくて口許が緩んでしまう。
「光秀さん、それが愛ですよ」
「これが、愛……?」
今まで光秀さんは心もない愛をもらい続けた、だからきっと愛がなんなのか知ることなく生きてきたんだ。
「光秀さんに愛を知ってもらえて嬉しいです!」
私が微笑みかけたと光秀さんも口許に笑みを浮かべた。
光秀さんはこの時あることに納得した。
芽生えた感情の2つのうちの1つがわからなかったが、これでハッキリし、わからなかったこの感情は愛なのだと。
もう1つのこの想いの答えはわかっている、これは恋だ。
「お嬢さんには驚かされるよ」
話ながら歩くとあっという間に城の回りを一周し、握られた手を胸の位置まで上げられると、両手で包み込まれた。
「俺は、お嬢さんのことを愛している」
「……え?」
突然の告白に言葉を失っていると、光秀さんの瞳が真っ直ぐに私をとらえていることに気づき、本気なんだと伝わる。
「えっと、あの……」
「すまないね。突然のことで困らせてしまったね」
「いえ!光秀さんの想いは嬉しいです。でも、そんな風に光秀さんのことを見たことがなくて……」
それに、私にはまだやるべきことがある、私が愛を知ってほしい人は武将の皆だから。
「わかったよ。なら返事を待たせてもらうよ、最初からそのつもりだったからね」
そのあと、私は光秀さんのことをあまり見れないまま散歩が終わり、熱くなる頬に気付かれないか不安にながらも光秀さんと別れた。
頬の熱は引かないまま廊下を歩いていると、背後から声をかけられ振り返った。
「丁度美弥ちゃんの部屋に行くところだったんだ。あれ?何だか顔が赤いけどどうかしたのかい?」
「い、いえ何でもないんです!それよりも、私に何か御用があったのでは?」
振り返ると家康さんの姿があり、頬が染まっていることに気付かれ慌てて両頬を手で隠すと、誤魔化すように話を切り替えた。
「美弥ちゃんに、僕の気持ちを伝えたくてね」
「気持ち、ですか…?」
家康さんは頷くと、口を開き話し出した。
今までの家康さんは、表と裏を使い分けて過ごしてきた。
でも、私が表も裏も本当の家康さんだと言ったあの日から、家康さんの心には変化が現れた。
「あの日から、僕は美弥ちゃんを、信長様に害をなす者かの見極め対象ではなく、僕個人として興味を持ったんだ」
それって、私を物としてではなく、一人の人として見てくれたってこと?
それが意味するのは、光秀さんに続き家康さんも愛を知ったということになる。
「そのまえから、夕餉を作ったり、僕達の手伝いをしたいと言い出したり、変わったことをする美弥ちゃんに興味があったから色々と観察をさせてもらっていたんだけど、あの言葉で、自分の気持ちに気づけたんだ」
家康さんは私へと体を向けると真っ直ぐに私の瞳を見詰め、好きだよと微笑んだ。
「僕は、美弥ちゃんを見ているうちにすでに惹かれていたんだ。裏の顔があると美弥ちゃんに知られたとき、僕は嫌われることを覚悟していた」
「家康さん……」
そのときのことを思い出したのか、家康さんは少し苦しそうな、悲しいような顔をしている。
「でも美弥ちゃんは、騙していた僕のことを嫌うどころか怒ることもせず、信長様に害をなす者かと疑っていた僕を、僕の全てを受け入れてくれた。そんな美弥ちゃんを見て、興味は恋へと変わったんだよ」
折角引いてきた頬の熱がまた集まりだし、目を逸らしたくなってしまう。
愛を知ってもらえたみたいだけど、同時に恋も芽生えていたことに私は全く気付くことができなかった。
光秀さんの時もそうだったけど、私って鈍いんだろうか……。
「光秀さん、今日はどうかされたんですか?」
「前に、散歩をまたしようとお嬢さんは言ってくれてたからね。今日は散歩をしようと誘いに来たんだ」
確か前に光秀さんと散歩をしていたときは、秀吉さんに手伝いを頼まれて腕を引っ張っていかれたんだよね。
秀吉さんに引っ張られながら振り返って、光秀さんにまた一緒に散歩しましょうねって声をたけたけど、かなり離れてしまった場所から声をかけたため、光秀さんには届いていないかもしれないと思ってたけど聞こえてたんだ。
「はい、是非一緒に散歩させていただきたいです!」
私が答えると光秀さんは微笑み、私の手を掴むとそのまま庭へと向かった。
何だか手を握られていると恥ずかしい気持ちになり頬が熱くなる。
二人で庭を歩くが、手はしっかりと握られたまま放される様子はない。
「あ、あの……手を繋がれるのは恥ずかしいのですが」
「すまないね。でもお嬢さんとこうしていたいんだ、他の女人とは違うお嬢さんと」
「え?」
他の女人とは違うってどういうことなんだろうか、確かに私はこの世界の人から見たら変わっているかもしれないけど、私のいた世界では普通の人だと思う。
でも、普通の人なら戦に同行なんてしようと思わないかもしれない。
「やっぱり私、変わってますもんね」
「そうだね、君は変わっている。でも、それとはまた違う意味なんだ」
そして光秀さんは自分のことを話始めた。
光秀さんは生まれつき色香を纏ってしまう体質で、女人はその色香に引き寄せられてしまう。
そんな女人ばかりで光秀さんはうんざりしていた時に現れたのが私だった。
そして私は光秀さんのことを知りたいと言った。
今までよってくる女人は沢山いたが、光秀さんのことを知りたいと言う人は一人もいなかった。
「そんなお嬢さんに、俺は惹かれていったんだ」
「光秀さん……」
「俺はお嬢さんを信長様の物としてではなく、お嬢さんを一人の女人として大切にしたい」
これってもしかして、光秀さんに愛が芽生えたってこと?
私は光秀さんからの突然の告白に嬉しくて口許が緩んでしまう。
「光秀さん、それが愛ですよ」
「これが、愛……?」
今まで光秀さんは心もない愛をもらい続けた、だからきっと愛がなんなのか知ることなく生きてきたんだ。
「光秀さんに愛を知ってもらえて嬉しいです!」
私が微笑みかけたと光秀さんも口許に笑みを浮かべた。
光秀さんはこの時あることに納得した。
芽生えた感情の2つのうちの1つがわからなかったが、これでハッキリし、わからなかったこの感情は愛なのだと。
もう1つのこの想いの答えはわかっている、これは恋だ。
「お嬢さんには驚かされるよ」
話ながら歩くとあっという間に城の回りを一周し、握られた手を胸の位置まで上げられると、両手で包み込まれた。
「俺は、お嬢さんのことを愛している」
「……え?」
突然の告白に言葉を失っていると、光秀さんの瞳が真っ直ぐに私をとらえていることに気づき、本気なんだと伝わる。
「えっと、あの……」
「すまないね。突然のことで困らせてしまったね」
「いえ!光秀さんの想いは嬉しいです。でも、そんな風に光秀さんのことを見たことがなくて……」
それに、私にはまだやるべきことがある、私が愛を知ってほしい人は武将の皆だから。
「わかったよ。なら返事を待たせてもらうよ、最初からそのつもりだったからね」
そのあと、私は光秀さんのことをあまり見れないまま散歩が終わり、熱くなる頬に気付かれないか不安にながらも光秀さんと別れた。
頬の熱は引かないまま廊下を歩いていると、背後から声をかけられ振り返った。
「丁度美弥ちゃんの部屋に行くところだったんだ。あれ?何だか顔が赤いけどどうかしたのかい?」
「い、いえ何でもないんです!それよりも、私に何か御用があったのでは?」
振り返ると家康さんの姿があり、頬が染まっていることに気付かれ慌てて両頬を手で隠すと、誤魔化すように話を切り替えた。
「美弥ちゃんに、僕の気持ちを伝えたくてね」
「気持ち、ですか…?」
家康さんは頷くと、口を開き話し出した。
今までの家康さんは、表と裏を使い分けて過ごしてきた。
でも、私が表も裏も本当の家康さんだと言ったあの日から、家康さんの心には変化が現れた。
「あの日から、僕は美弥ちゃんを、信長様に害をなす者かの見極め対象ではなく、僕個人として興味を持ったんだ」
それって、私を物としてではなく、一人の人として見てくれたってこと?
それが意味するのは、光秀さんに続き家康さんも愛を知ったということになる。
「そのまえから、夕餉を作ったり、僕達の手伝いをしたいと言い出したり、変わったことをする美弥ちゃんに興味があったから色々と観察をさせてもらっていたんだけど、あの言葉で、自分の気持ちに気づけたんだ」
家康さんは私へと体を向けると真っ直ぐに私の瞳を見詰め、好きだよと微笑んだ。
「僕は、美弥ちゃんを見ているうちにすでに惹かれていたんだ。裏の顔があると美弥ちゃんに知られたとき、僕は嫌われることを覚悟していた」
「家康さん……」
そのときのことを思い出したのか、家康さんは少し苦しそうな、悲しいような顔をしている。
「でも美弥ちゃんは、騙していた僕のことを嫌うどころか怒ることもせず、信長様に害をなす者かと疑っていた僕を、僕の全てを受け入れてくれた。そんな美弥ちゃんを見て、興味は恋へと変わったんだよ」
折角引いてきた頬の熱がまた集まりだし、目を逸らしたくなってしまう。
愛を知ってもらえたみたいだけど、同時に恋も芽生えていたことに私は全く気付くことができなかった。
光秀さんの時もそうだったけど、私って鈍いんだろうか……。
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