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第2話 ぐるぐる★前奏曲(プレリュード)
酒場で情報収集
しおりを挟む「無事に登録できたな」
「へへへ」
階段を降りてくる俺を目ざとく見つけたラヴィとステラが近づいて来る。
「ぐるぐるの生えてる場所、分かりました?」
「それが…」
「ギルドでも把握してないそうなの。定期的に持ち込む冒険者がいるらしいんだけど、誰かは教えられないって言われて…」
異世界にも個人情報保護の波が!
「だから地道に情報収集だ。ユーキ、もうメシ食ったか?」
「まだですけど」
「丁度いい。酒場で聞き込みだ。ちょっと付き合え」
ラヴィ達はすでに夕飯としてラーメンを完食してるので、俺は夕飯、ラヴィたちは酒を飲むという名目でギルドに併設された酒場兼食堂に入る。
園内で一番大きな飲食店で比較的値段が安いということもあり、いつも混雑していて、何か注文しないと店内に入れないのだ。
「お。ゼファーがいる。知り合いだ。ちょっと挨拶してくる」
「私も。ユウキはゆっくり食事してていいからね」
そう言って、手にグラスを持ったままラヴィとステラが計画通りに席を離れる。
調理前のぐるぐるは、どうやら同じ冒険者が採取してくるらしい。と言うことは、ネコランドに長期滞在している冒険者と思われる。ここに本人がいなくても、冒険者が多い今の時間帯なら何かしらの情報が得られるだろう。
俺はひとりカウンター席で、注文したネコランチが出来上がるのを待つ。
「お客さん、観光? 泊まり?」
ネコランチを運んで来た若いスタッフが笑顔で聞く。
大人向けお子様ランチ風のプレート料理は華やかで、とても美味しそうだ。その分、他の料理より少し高い。主に観光客が注文するメニューなんだろう。ネコランドに滞在してダンジョンアタックを繰り返す冒険者の中には食費を節約するため売店のパンで済ます人も多い。
「最近、ネコランドに来たんです。支払いって、コレでいいですか?」
グラスを受け取ってすぐ代金を払っていたラヴィ達の真似をして金色のフリーパスを差し出す。パスにはネコランドのマークが入っている。
「へー、お仲間? いきなりゴールドって技術職? 職場どこ?」
「パパラチアキャット達と一緒にステージで踊ってるんだ」
「アレか! すげえな!」
すっかり接客を忘れてタメ口になってる青年。彼は近隣の村の生まれで、ここに出稼ぎに来ているらしい。危険はあるが、この辺りではこれほど稼げる場所はないと言う。
「近くなのか。通い?」
「いや、さすがに通える距離じゃねーし。従業員宿舎がある。狭いけど。君は?」
「ぐるぐるの2階。あそこでも働いてるから」
「お互い、頑張って金貯めような!」
どうやら住み込みバイトの同類認定されたらしい。
ネコランドのスタッフや冒険者の大半は、ハイリスクハイリターンの収入目当ての人達だ。次に、戦闘や冒険を楽しむタイプの人たち。そして、少ないながら、魔法やダンジョンについて研究している人達もいるそうだ。
つい話が長くなってスタッフ君がフロアマネージャーににらまれてたので、ドリンクも追加で注文する。
「うわ! ホントに凄い見た目」
「だろ? ここでしか飲めない珍しいソーダだ。ダンジョンで採れる素材を使ってるんだぜ」
「へ、へえ…」
全体が透明の濃い紫色で、ゆらゆら揺れるように蛍光ピンクや黄色の気泡ができては弾け消える。黄緑色のツブツブは何かの実かな?
「面白いでしょう?、それ。魔法植物の枝を煮込んだ汁にシロップ漬けの薬草のツボミと炭酸を入れるんです。わずかですが精神安定作用もありますよ」
隣のスツールに座った若い男性が声を掛けてきた。
ラヴィやステラはグラスを持ったまま店内を渡り歩いてるので、空いた席にいつの間にか次の客が座っていたのだ。
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