全て私が悪かったので許してください!

きららののん

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私の決意を聞いたディランは、次の日、知り合いだという共国の商人を紹介してくれた。
彼は、月に一度、アベンティス王国との間で交易を行っているという。
彼に頼めば、私の手紙を王都まで届けてくれるはずだ、とディランは言った。

その日の夜、私はランプの灯りの下、一枚の羊皮紙に向かっていた。
ディランは何も言わず、ただ静かに、暖炉のそばで木を削りながら、私を見守ってくれている。
その存在が、私の心を強くしてくれた。

ペンを握る。
何から書けばいいのか、言葉がなかなか見つからない。
けれど、伝えなければならないことは、決まっていた。

『アレン・オルランド様』

書き出しは、彼の名前だった。
かつては「アレン様」と甘えるように呼んでいた、その名前。
今は、ただ、一人の人間として、彼に向き合う。

ペンは、滑るように動き始めた。
そこには、言い訳も、自己弁護も、未練もなかった。
ただ、ひたすらに、自分の犯した罪を認め、謝罪する言葉だけを綴った。

『この手紙が、貴方様のお目に留まることがあるのか、わたくしにはわかりません。
けれど、どうしても、お伝えしたいことがあります。
いいえ、お伝えしなければならないのです』

リリアンナ様にした、数々の卑劣な行い。
嫉妬に狂い、周りが見えなくなっていた、愚かな自分。
アレン様の優しさや警告に、耳を貸そうともしなかった、傲慢な自分。
その全てを、ありのままに書き記した。

『わたくしがしたことは、決して許されることではありません。
リリアンナ様を深く傷つけ、そして、王太子である貴方様の名誉をも汚しました。
全ては、わたくしの未熟さと、醜い嫉妬心が原因です。
今、この場所で穏やかな日々を送ることができているのは、ひとえに、貴方様が下した追放という寛大なるご処置と、そして、わたくしを見捨てず支えてくれる、心優しい人がいてくれるからに他なりません』

ディランの顔が、脳裏に浮かぶ。
彼への感謝の気持ちも、正直に綴った。
この手紙は、アレン様への謝罪であると同時に、私の過去との決別、そしてディランとの未来への誓いでもあったからだ。

『貴方様に、許しを乞う資格など、わたくしにはないのかもしれません。
けれど、どうしても、この言葉だけは伝えたかったのです。
これまでの私の無礼、そして罪の数々、全て私が悪うございました。
心より、お詫び申し上げます』

最後の一文を書き終え、私はペンを置いた。
自然と、涙が一筋、羊皮紙の上に落ちた。
でも、それは後悔の涙ではなかった。
全てを吐き出し、過去の自分と向き合えた、安堵の涙だった。

『末筆ながら、貴方様とリリアンナ様の末永いご幸福を、この地より心からお祈り申し上げております。
クーデリア・アベンティス』

自分の名前を、初めて、震えることなく書くことができた。
手紙を丁寧に折りたたみ、蝋で封をする。
もう、迷いはなかった。

「……書けたか」

いつの間にか隣に来ていたディランが、優しく声をかけてきた。

「はい」

私は、彼に向かって、晴れやかな気持ちで微笑んだ。

「ありがとう、ディラン。あなたのおかげですわ」

彼は何も言わず、ただ、私の頭を優しく撫でてくれた。
その温かい手が、私の決意を、静かに祝福してくれているようだった。
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