推理問答部は謎を呼ぶ -Personality Log-

猫蕎麦

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第2章>仔羊の影踏[ゾンビ・アポカリプス]

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 狭い。くっそ狭い。戦車の中は4人乗りではあったが、よく分からない機器に囲まれて、牛乳瓶のように、もしくはそれ以上に俺達は詰め込まれていた。

 目の前に俺がいる。

 とても不思議な感覚だ。いつも鏡で見るのとは少し違う気がする。美頼も俺を見返している。多分同じようなことを考えているのだろう。

 すると彼女は魚が水を飲むようにパクパクと口を開けた。何かを言ったらしいが何も聞こえてこない。

 そう、もう一つ問題があるのだが、とにかくうるさかった。戦車の中は耳をつんざくような雑音で満ちていた。ここまでリアルに再現しなくてもいいのにと思いつつ、このゲーム製作者の細かさがうかがえる。

 こちらの動きを見ていたのか、タイミングよく優衣さんが振り返り、運転席からヘッドセットを二つ渡してきた。普通のものと違い耳にあてるものとは別に、もう一つ小さめのヘッドフォン的な何かが付いていた。そして普通のものよりずっしりとしている。

 俺達が首をかしげていると、優衣さんは喉を指差す。喉につけるのだろうか。とりあえず耳にヘッドフォンをつけると、声が聞こえてきた。

 「その小さいやつは喉にあてると振動で声を読み取ってくれるから。話すときはこのボタンを押しながら喋って」

 言われた通りにやってみる。

 「わかりました。聞こえますか?」

 「うん、聞こえる」

 「いやお前じゃない」

 美頼が喋る、俺の声も聞こえてきた。するとそのやり取りが聞こえたらしく、優衣さんは笑った。

 「はは。二人ともたまにおかしな言葉遣いをするよね。なんかミヨっちゃんとアキくん、入れ替わってるみたいな」

 「そんな、まさか」

 俺は苦笑い。美頼に関しては動揺で固まってしまっている。またこいつがコミュ障なのを忘れていた。まあ、俺の身体だが。

 「ちなみに危険な地帯はもう脱出できたよ。ここら辺にゾンビは見当たらないから安心しな」

 「はぁぁ~……よかったぁ~」

 さっきのことを気にして、ありったけの演技力を駆使して女子っぽく安心してみた。痛い。美頼に蹴られた。

 「とりあえず、次はどこに行けばいいんでしょうね」

 「携帯にも何も表示されないし……」

 美頼も会話に参加してくる。

 「えっとね、今……」

 優衣さんが少し真剣な声色で言う。

 「この戦車の探索レーダーみたいなのを使ったんだけど、チート的に地下まで見えんのよこれ」

 「と、いうと……?」

 すると優衣さんは苦い顔をする。
 俺はなんとなく察した。つまり何か怪しい反応があったのだろう。それにこの気まずそうな顔は……

 「さっきの商店街の地下に、馬鹿でかい施設みたいなのがあってさ。行く?」

 隣に座る俺の顔がまじ?と言っている。ガコンと戦車が何かに乗り上げる音がする。しばらくそういった雑音だけが響く。

 「また戻るのか……」

 美頼が言った。

 「まあ、行くしかないですよね……」

 おもむろに俺が言うと、手の中の携帯が光った。

 [ミッション5:商店街地下の施設へ向かえ]

 そこにはそんな通知が表示されていた。

 
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