13 / 166
初陣 ③
しおりを挟む
扉が閉められ、5人の捜査官だけ中に入って行く。
眷属隊は、エレベータホールに取り残された。
「僕たちの仕事って投降した犯罪者に手錠掛けるだけだし、入っても足手まといになるだけだからここで待つのが正解だよね。」
灰野が口を開く。
「でも、赤目様が心配です。」
防音設備がされているからか、中の様子をうかがい知ることはできない。
アヤメは強い。俺が行っても役に立つことは何もない。でも、気になる。
「中の様子ちょっと覗いてみようか。」
俺は提案してみた。
「ダメ。無駄なことはしないほうがいいです。」(灰野)
「ダメです。高木さんの指示は待機です。」(山田)
「めんどくせーよ。」(稲葉)
(だよね。)
「気になります。覗くくらいなら、、。」
そう言ったのは常盤さんだった。
「じゃ、おれの自己責任ってことで。」
多数決で負けているので、そういって俺は頭が入る分だけ扉を開く。
中の光景は、まさに地獄絵図だった。
狂暴化したヴァンパイア達と戦闘する捜査官たち。天井のスプリンクラーから噴き出してるのは血か?
「うひょー。すげーな。」
「赤目様、頑張って。」
いつの間にか、稲葉と常盤さんの顔も扉の隙間に並んでいる。
「狂暴化しているのは、一般のヴァンパイアです!致命傷を負わせないように注意してください。」
杉山さんが冷静に指示を出す。
「どれが、一般人かなんてノエルわかんないしぃ。死なない程度ならいいんでしょ。」
「ノエルちゃんに面倒なこと言っても無駄だよね。」
稲葉がつぶやいた。
「俺は金田組組員の確保に向かう。」
「がんばれ。高木さん!」
いつの間にか、山田さんの顔も並んだ。
あれ?アヤメは?
「あははは。この三下どもが、おとなしく縛(ばく)につけ。手向かうなら容赦しねえ、たたっ斬ってやるっ!」
アヤメは狂暴化したヴァンパイア3人を相手に素手で大立ち回りを繰り広げている。
瞬く間に3人を倒し。狂暴化していない白髪のヴァンパイアと立ち回りを始めた。
あれ、なんかアヤメの感じがいつもと違う。俺は、間違い探しのようにアヤメの違和感を探す。
それは、すぐに分かった。アヤメの神が深紅に染まっているのだ。深紅の髪をなびかせ戦うアヤメにしばらく見とれる。
「お前が、親玉かい。一般のヴァンパイアさんを狂暴化させるなんざヴァンパイアの風上にもおけない野郎だ」
確かに野放図に飛びかかってくる狂暴化したヴァンパイアと異なり、その白髪のヴァンパイアはかなりの手練れらしくアヤメと互角に戦う。。
「お嬢さん。なかなかやりますね。」
「おぬしもな。」
二人は血で真っ赤に染まったホールで、目にも止まらない速さで戦っている。彼らの手先の動きは早すぎて見えない。その様はフラメンコでも踊っているみたいに見えた。
「お嬢さんと、戦うのは非常に楽しいのですが。今夜は生憎と他にも用事がありまして。そろそろお開きにしましょう。」
男はポケットから何かスプレー缶をを取り出す。
(あ、危ない。)
俺はとっさに飛び出しアヤメに覆いかぶさる。
男の噴射した霧はほとんど俺が被った。
「どけっ。じゃまするな。」
俺はアヤメに突き飛ばされ、血だまりに転がる。血の匂いに気分が悪くなった。
「本当に邪魔するなんて、無粋な男ですね。」
そう言って男が投げたスプレー缶が俺の頭に命中する。
「それでは、この辺で。」
男が手に持ったスイッチを押すと、爆音とともにコンクリート壁が崩れ落ちた。
「ごきげんよう。」
男は外に向かって背面から倒れるように落ちて行った。
(ここ、7階だぜ?)
「待て!逃げるのか、卑怯者!」
アヤメが後を追う、俺もアヤメに続く。
壁の穴から階下をのぞくと、男は地面に着地して悠々と国分町の喧騒の中を悠々と逃げて行った。
壁の爆発のせいかビルの下にはやじうまの人垣ができていた。
「こらぁ!本田一宇!眷属隊は外で待機と行ったろうがぁ!!」
高木班長の怒声がバーのフロアに響く。
「すいませんっ。」
俺は頭を下げた。
「すみません、高木班長。眷属の不始末は主である私の責任です。」
隣でアヤメも深々と頭を下げる。アヤメの髪の色はいつもの黒髪に戻っていた。
アヤメの手には、白髪の男が投げたスプレー缶が握られていた。
「眷属隊の初陣だったが、今回は君たちの出番はないようだ。」
「どういうことですか。」
「金田組の組員は全員そっちで首を切られて死んでるよ。死体に手錠を掛けても仕方ないだろ。」
高木班長が血で染まったカーテンで仕切られたVIPエリアを指さす。
そこに、2、3班が遅れて合流した。
「高木さん、これは、、。」
2,3班の隊員も現場の惨状に怯んでいるようだった。
「事情は後で説明する。とりあえず、一般のヴァンパイアが狂暴化したので、対処した。彼らを病院まで運んでくれ。それと、遺体の回収チームを頼む。」
「隊員の皆さん、ここには人血が充満していますから毒気に充てられないように注意して作業してください。」
杉山さんが冷静に指示を出している。
「本田君。アヤメさんの危機に思わず飛び込んだ君の気持はわからなくもない。でもな、君たちの安全を守るのも隊長の俺の役目だから、勘弁してくれよ。とんだ初陣になったな。」
高木さんはいつもの優しい笑顔で肩をポンポンと叩く。
「お前らも、何覗いてんだぁ。撤収だ撤収。」
扉から覗いている4つの顔に向かって高木班長が怒鳴った。
俺は重い気持ちを飲み込んだまま、撤収のバンに乗り込んだ。
眷属隊は、エレベータホールに取り残された。
「僕たちの仕事って投降した犯罪者に手錠掛けるだけだし、入っても足手まといになるだけだからここで待つのが正解だよね。」
灰野が口を開く。
「でも、赤目様が心配です。」
防音設備がされているからか、中の様子をうかがい知ることはできない。
アヤメは強い。俺が行っても役に立つことは何もない。でも、気になる。
「中の様子ちょっと覗いてみようか。」
俺は提案してみた。
「ダメ。無駄なことはしないほうがいいです。」(灰野)
「ダメです。高木さんの指示は待機です。」(山田)
「めんどくせーよ。」(稲葉)
(だよね。)
「気になります。覗くくらいなら、、。」
そう言ったのは常盤さんだった。
「じゃ、おれの自己責任ってことで。」
多数決で負けているので、そういって俺は頭が入る分だけ扉を開く。
中の光景は、まさに地獄絵図だった。
狂暴化したヴァンパイア達と戦闘する捜査官たち。天井のスプリンクラーから噴き出してるのは血か?
「うひょー。すげーな。」
「赤目様、頑張って。」
いつの間にか、稲葉と常盤さんの顔も扉の隙間に並んでいる。
「狂暴化しているのは、一般のヴァンパイアです!致命傷を負わせないように注意してください。」
杉山さんが冷静に指示を出す。
「どれが、一般人かなんてノエルわかんないしぃ。死なない程度ならいいんでしょ。」
「ノエルちゃんに面倒なこと言っても無駄だよね。」
稲葉がつぶやいた。
「俺は金田組組員の確保に向かう。」
「がんばれ。高木さん!」
いつの間にか、山田さんの顔も並んだ。
あれ?アヤメは?
「あははは。この三下どもが、おとなしく縛(ばく)につけ。手向かうなら容赦しねえ、たたっ斬ってやるっ!」
アヤメは狂暴化したヴァンパイア3人を相手に素手で大立ち回りを繰り広げている。
瞬く間に3人を倒し。狂暴化していない白髪のヴァンパイアと立ち回りを始めた。
あれ、なんかアヤメの感じがいつもと違う。俺は、間違い探しのようにアヤメの違和感を探す。
それは、すぐに分かった。アヤメの神が深紅に染まっているのだ。深紅の髪をなびかせ戦うアヤメにしばらく見とれる。
「お前が、親玉かい。一般のヴァンパイアさんを狂暴化させるなんざヴァンパイアの風上にもおけない野郎だ」
確かに野放図に飛びかかってくる狂暴化したヴァンパイアと異なり、その白髪のヴァンパイアはかなりの手練れらしくアヤメと互角に戦う。。
「お嬢さん。なかなかやりますね。」
「おぬしもな。」
二人は血で真っ赤に染まったホールで、目にも止まらない速さで戦っている。彼らの手先の動きは早すぎて見えない。その様はフラメンコでも踊っているみたいに見えた。
「お嬢さんと、戦うのは非常に楽しいのですが。今夜は生憎と他にも用事がありまして。そろそろお開きにしましょう。」
男はポケットから何かスプレー缶をを取り出す。
(あ、危ない。)
俺はとっさに飛び出しアヤメに覆いかぶさる。
男の噴射した霧はほとんど俺が被った。
「どけっ。じゃまするな。」
俺はアヤメに突き飛ばされ、血だまりに転がる。血の匂いに気分が悪くなった。
「本当に邪魔するなんて、無粋な男ですね。」
そう言って男が投げたスプレー缶が俺の頭に命中する。
「それでは、この辺で。」
男が手に持ったスイッチを押すと、爆音とともにコンクリート壁が崩れ落ちた。
「ごきげんよう。」
男は外に向かって背面から倒れるように落ちて行った。
(ここ、7階だぜ?)
「待て!逃げるのか、卑怯者!」
アヤメが後を追う、俺もアヤメに続く。
壁の穴から階下をのぞくと、男は地面に着地して悠々と国分町の喧騒の中を悠々と逃げて行った。
壁の爆発のせいかビルの下にはやじうまの人垣ができていた。
「こらぁ!本田一宇!眷属隊は外で待機と行ったろうがぁ!!」
高木班長の怒声がバーのフロアに響く。
「すいませんっ。」
俺は頭を下げた。
「すみません、高木班長。眷属の不始末は主である私の責任です。」
隣でアヤメも深々と頭を下げる。アヤメの髪の色はいつもの黒髪に戻っていた。
アヤメの手には、白髪の男が投げたスプレー缶が握られていた。
「眷属隊の初陣だったが、今回は君たちの出番はないようだ。」
「どういうことですか。」
「金田組の組員は全員そっちで首を切られて死んでるよ。死体に手錠を掛けても仕方ないだろ。」
高木班長が血で染まったカーテンで仕切られたVIPエリアを指さす。
そこに、2、3班が遅れて合流した。
「高木さん、これは、、。」
2,3班の隊員も現場の惨状に怯んでいるようだった。
「事情は後で説明する。とりあえず、一般のヴァンパイアが狂暴化したので、対処した。彼らを病院まで運んでくれ。それと、遺体の回収チームを頼む。」
「隊員の皆さん、ここには人血が充満していますから毒気に充てられないように注意して作業してください。」
杉山さんが冷静に指示を出している。
「本田君。アヤメさんの危機に思わず飛び込んだ君の気持はわからなくもない。でもな、君たちの安全を守るのも隊長の俺の役目だから、勘弁してくれよ。とんだ初陣になったな。」
高木さんはいつもの優しい笑顔で肩をポンポンと叩く。
「お前らも、何覗いてんだぁ。撤収だ撤収。」
扉から覗いている4つの顔に向かって高木班長が怒鳴った。
俺は重い気持ちを飲み込んだまま、撤収のバンに乗り込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと - 〇
設楽理沙
ライト文芸
♡~好きになった人はクールビューティーなお医者様~♡
やさしくなくて、そっけなくて。なのに時々やさしくて♡
――――― まただ、胸が締め付けられるような・・
そうか、この気持ちは恋しいってことなんだ ―――――
ヤブ医者で不愛想なアイッは年下のクールビューティー。
絶対仲良くなんてなれないって思っていたのに、
遠く遠く、限りなく遠い人だったのに、
わたしにだけ意地悪で・・なのに、
気がつけば、一番近くにいたYO。
幸せあふれる瞬間・・いつもそばで感じていたい
◇ ◇ ◇ ◇
💛画像はAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる