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時の旅人 ①
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家の中は広く、そして静かだった。俺たちは彼女の部屋と思われる一室に案内される。
部屋に入る前、白神がまた何か言おうとしたが、「くどいぞ、白神!」と彼女に一喝され、白神は黙りこむ。
室内は、畳の純和風で、女性用の鏡台や市松人形などが飾ってある。
「さぁ。入られよ。そう言えば、わらわはまだお前に名前を名乗ってなかったな。わらわは、杜人安芸。実は、お前が事故にあったのは、わらわが道路に飛び出したせいじゃ。許してほしい。」
そう言って彼女は手をついて頭を下げる。
「安芸ちゃんか。いい名前だよ。君にぴったりだ。」
「お前は人の話を、聞いておったのか?お前はわらわのせいで、大事な乗り物を壊し、命を失うところだったんだぞ。それとも、頭を打って正常な判断が出来なくなっておるのか?」
「待てって。俺は頭はしゃっきりしてるよ。あんな事故にあったのに、ケガ一つしてないみたいだし。バイクの事は気にすんなよ。おれ、もうすぐ高校を卒業して、バイク屋で働くんだ。壊れたバイクは自分で直すさ。」
「そうか、自分で直せるのか。それは良かった。安堵したぞ。」
「それより、俺。君を見て、ビビビッてきたんだよね。わかる?ビビビって。」
(爺さん、いきなりナンパかよ。)
「なんじゃ。ビビビッとは。」
「君を見て、なんか運命のようなものを感じたんだよ。ビビビッてね。電気に打たれたみたいにさ。はっきり言うと君と結婚するって感じたんだよな。」
「それは無理じゃ。」
「え?なんで?俺って君の好みじゃない?」
「好みは関係ない。わらわは結婚相手を自分で選ぶ自由はないのじゃ。」
「はぁ?いつの時代の人なんだよ。今は、1990年代だよ。結婚相手を選ぶ自由くらい誰にでもあるだろ。」
「わらわにはない。それに、わらわとお前は種族が違う。他種族との結婚は、認められておらんのじゃ。」
「へぇ。君、外国の人なんだ。俺は気にしないよ。」
「いや、父も母も生まれはこの国じゃ。」
「なんでもいいよ。俺は気にしないし、人類みな兄弟って言うだろ、」
「はははは。人類みな兄弟か、お前は面白い男だな。だが残念な事に、わらわは人間ではないのじゃ。」
「面白いのは、君だよ。じゃ、君は何者なんだい?あ、わかった!宇宙人だろ。俺、映画で見たことがあるよ。まぁ、いいや。♪地球の女に飽きたところよ♪ UFO♪」
爺さんは、昔の流行歌の歌詞を口ずさむ。ヴァンパイアも知ってるのか?ピンクウーマンのUFOなんか、、。
「わらわは、お前たちの世界で言うところの吸血鬼じゃ。」
「ふーん。だと、宇宙人よりは人間に近いよな。なおさらいいよ。」
「お前は、吸血鬼が怖くはないのか?吸血鬼は人間から忌み嫌われていると聞いておるがの。ブラム・ストーカーと言う異国の物書きが、吸血鬼の本を書いて吸血鬼一族の印象を著しく悪くしているらしいぞ。」
「どうだろ。俺、今まで吸血鬼がいるって知らなかったし。そのブラム何とかってのも知らねぇし。ただ、生まれて初めて見た吸血鬼が安芸ちゃんだったから。俺は吸血鬼の印象は、全く悪くない。」
「そうか、それは嬉しいの。実際に我々が人間に危害加える事など、ごく稀な話じゃ。」
「それじゃ、今度、俺とデートしようぜ。」
「デートとはなんじゃ。」
「二人で一緒に出掛けて。映画を見たり、飯を食ったりすることだよ。」
「映画か。まだ一度も見たことないぞ。まぁ、さっきも言った通り、吸血鬼ゆえ、飯はくわんがの。」
「そうだった。食事はしないんだった。それじゃ。人生の初の映画を俺と見ようぜ。」
「わかった、約束じゃ。日にちはわらわが決めてもよいかの?」
「OK。いつでもいいよ。これ、俺の電話番号。日にちが決まったら電話して。」
「わかった。そうしよう。」
「これから、家の者に申し付けて、そなたを家まで送らせよう。」
「じゃ、安芸ちゃん約束。」
そう言って祖父は、小指を差し出した。
「なんじゃそれは。」
「指切りだよ。人間は約束をするときに、その約束を忘れないために「指切り」するんだよ。さぁ、小指を出して。」
安芸が華奢な小指を出す。
「♪ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本、飲~ますっ♪指切った♪」
繋がれた指が離れる。安芸は笑っていた。
「なんじゃその歌は、案外に人間とは残酷なものじゃの。」
その後、安芸の家の黒塗りの立派な車に乗せられ、爺ちゃんは家まで送り届けられる。
翌朝、爺ちゃんの家の玄関脇にはハンドルのひしゃげたバイクが届けられていた。
部屋に入る前、白神がまた何か言おうとしたが、「くどいぞ、白神!」と彼女に一喝され、白神は黙りこむ。
室内は、畳の純和風で、女性用の鏡台や市松人形などが飾ってある。
「さぁ。入られよ。そう言えば、わらわはまだお前に名前を名乗ってなかったな。わらわは、杜人安芸。実は、お前が事故にあったのは、わらわが道路に飛び出したせいじゃ。許してほしい。」
そう言って彼女は手をついて頭を下げる。
「安芸ちゃんか。いい名前だよ。君にぴったりだ。」
「お前は人の話を、聞いておったのか?お前はわらわのせいで、大事な乗り物を壊し、命を失うところだったんだぞ。それとも、頭を打って正常な判断が出来なくなっておるのか?」
「待てって。俺は頭はしゃっきりしてるよ。あんな事故にあったのに、ケガ一つしてないみたいだし。バイクの事は気にすんなよ。おれ、もうすぐ高校を卒業して、バイク屋で働くんだ。壊れたバイクは自分で直すさ。」
「そうか、自分で直せるのか。それは良かった。安堵したぞ。」
「それより、俺。君を見て、ビビビッてきたんだよね。わかる?ビビビって。」
(爺さん、いきなりナンパかよ。)
「なんじゃ。ビビビッとは。」
「君を見て、なんか運命のようなものを感じたんだよ。ビビビッてね。電気に打たれたみたいにさ。はっきり言うと君と結婚するって感じたんだよな。」
「それは無理じゃ。」
「え?なんで?俺って君の好みじゃない?」
「好みは関係ない。わらわは結婚相手を自分で選ぶ自由はないのじゃ。」
「はぁ?いつの時代の人なんだよ。今は、1990年代だよ。結婚相手を選ぶ自由くらい誰にでもあるだろ。」
「わらわにはない。それに、わらわとお前は種族が違う。他種族との結婚は、認められておらんのじゃ。」
「へぇ。君、外国の人なんだ。俺は気にしないよ。」
「いや、父も母も生まれはこの国じゃ。」
「なんでもいいよ。俺は気にしないし、人類みな兄弟って言うだろ、」
「はははは。人類みな兄弟か、お前は面白い男だな。だが残念な事に、わらわは人間ではないのじゃ。」
「面白いのは、君だよ。じゃ、君は何者なんだい?あ、わかった!宇宙人だろ。俺、映画で見たことがあるよ。まぁ、いいや。♪地球の女に飽きたところよ♪ UFO♪」
爺さんは、昔の流行歌の歌詞を口ずさむ。ヴァンパイアも知ってるのか?ピンクウーマンのUFOなんか、、。
「わらわは、お前たちの世界で言うところの吸血鬼じゃ。」
「ふーん。だと、宇宙人よりは人間に近いよな。なおさらいいよ。」
「お前は、吸血鬼が怖くはないのか?吸血鬼は人間から忌み嫌われていると聞いておるがの。ブラム・ストーカーと言う異国の物書きが、吸血鬼の本を書いて吸血鬼一族の印象を著しく悪くしているらしいぞ。」
「どうだろ。俺、今まで吸血鬼がいるって知らなかったし。そのブラム何とかってのも知らねぇし。ただ、生まれて初めて見た吸血鬼が安芸ちゃんだったから。俺は吸血鬼の印象は、全く悪くない。」
「そうか、それは嬉しいの。実際に我々が人間に危害加える事など、ごく稀な話じゃ。」
「それじゃ、今度、俺とデートしようぜ。」
「デートとはなんじゃ。」
「二人で一緒に出掛けて。映画を見たり、飯を食ったりすることだよ。」
「映画か。まだ一度も見たことないぞ。まぁ、さっきも言った通り、吸血鬼ゆえ、飯はくわんがの。」
「そうだった。食事はしないんだった。それじゃ。人生の初の映画を俺と見ようぜ。」
「わかった、約束じゃ。日にちはわらわが決めてもよいかの?」
「OK。いつでもいいよ。これ、俺の電話番号。日にちが決まったら電話して。」
「わかった。そうしよう。」
「これから、家の者に申し付けて、そなたを家まで送らせよう。」
「じゃ、安芸ちゃん約束。」
そう言って祖父は、小指を差し出した。
「なんじゃそれは。」
「指切りだよ。人間は約束をするときに、その約束を忘れないために「指切り」するんだよ。さぁ、小指を出して。」
安芸が華奢な小指を出す。
「♪ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本、飲~ますっ♪指切った♪」
繋がれた指が離れる。安芸は笑っていた。
「なんじゃその歌は、案外に人間とは残酷なものじゃの。」
その後、安芸の家の黒塗りの立派な車に乗せられ、爺ちゃんは家まで送り届けられる。
翌朝、爺ちゃんの家の玄関脇にはハンドルのひしゃげたバイクが届けられていた。
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