91 / 166
赤目ファミリー ④
しおりを挟む
赤目家の図書室は建物の2階にあるらしい。俺たちは階段で2階に向かう。その時、玄関の扉が開く音がした。
「ああああ。一宇、見つけた!こんなことろにいたのね!」
アヤメが俺を見つけてらせん階段を駆け上がって来た。やっとの思いで、ママンから逃げて来たらしく息が上がっている。
「あら、おじいさま。こんばんは。」
「アヤメちゃん、こんばんは。少し見ない間にきれいなお嬢さんになったね。」
「ありがとうございます。私も、おじいさまにはお会いしたかったんです。」
アヤメよ、その言い方は良くないぞ。
「これから本田君を連れて、図書室に行くんだけど、アヤメちゃんも一緒にどうだい?」
「是非ご一緒させてください。」
俺たちは3人連れ立って、図書室に向かった。
「この家で、唯一話せる人よ。それに、図書室ならあの人たちに見つからなくって済むわね。」
歩きながら、アヤメが俺の耳元で囁いた。
確かに、あの赤目と、ママンが図書室に用があるとは思えない。
図書室の扉を開けると、中は学校の教室くらいの広さがあり、本棚には本がぎっしりと詰まっていた。中には杉山さんと灰野が読書の真っ最中だった。
赤目のおじさんを見つけた杉山さんが静かに近づいてきて、赤目のおじさんに頭を下げる。
「本日は、ご招待ありがとうございます。」
「何か、杉山さんの興味を引くような本がありましたか?仕事柄、ここには植物関係の本が多いんですよ。」
「ありがとうございます。素晴らしい本ばかりで、時間を忘れてしまいました。」
「そうですか。今夜読み切れないものは、お貸ししますから好きなだけ持って行ってください。ここにある本を読むのは私だけです。杉山さんのような人に読んでいただけたら、本も喜ぶでしょう。それと、いつでも、ここにきて本を読んでくださいね。」
杉山さんの顔が喜びに輝く。こんな彼女の顔を見たのは初めてかもしれない。彼女の本好きは本物だ、、、。
俺たちは、図書室の奥にある小さな扉から個室に入る。
「この中にあるよ、本田君。」
おじさんは、そこに備え付けた本棚から1冊の古いアルバムを取り出す。
これですよ、そう言ってページをめくる。
「この中に彼女がいますが、どこにいるかわかりますか?」
そう言って、小学校の集合写真を指さす。
そこには、あどけない笑顔の子供たちが50人ほど写っていた。
「あああ。これですよね。」
俺はその中から、一人の少女を指さす。
「あたりです。彼女はどこにいても目立つ存在でしたからね。簡単だったかな。」
「この女の子、誰なの?」
「俺の祖母の安芸だよ。」
「じゃ、彼女が守人の、、、。」
アヤメは俺より夢中になってその写真を見ているようだった。
「他にもたくさん写っていると思うから、自由に見てください。私は、この図書室にいるお客様に美味しいお茶でも淹れてきますよ。」
そう言って、赤目のおじさんが出て行く。
「これ、どういうことなの?」
「赤目のおじいさまと一宇のおばあさんって知り合いだったの?」
「そうみたいだね。小中学校の同級生だってさ。」
「へぇ~。不思議なご縁ね。」
「それより、あなたが守人の血縁だなんて、赤目の家の人たちに知られたら面倒な事になるわ。」
「そんなもん?」
「うーん。特にママンには知られないほうが良いかもね。彼女なら養子になれって言い出しかねないわよ。」
「そうか、じゃ、おじさんに口止めしておかないと、、、。」
その時、小部屋の扉が開く。赤目のおじさんがお茶を淹れて戻って来たと思ったらそこに立っていたのは、、、。赤目と、赤目のママンだった、、、、。
「アヤメっちぃ。探したよぉ。こんなところで何してるの?しかも、本田なんかと二人っきりで。」
「そうですよ。ここは、家族のプライベートな写真が仕舞ってある部屋ですよ。勝手に入り込んで失礼じゃないですか?」
「ここには、おじさまの案内で来たんです。」
アヤメが反論した。
「さぁ、アヤメさん。パーティーに戻りましょう。あなたは、このパーティーの準主役でもあるんですから。」
「準主役ですって。おばさま何を言ってるか意味が解りませんけど。」
「だって、アヤメさんはボクちゃんの婚約者ですもの、、、。」
「えええええ。アヤメと赤目ってそう言う関係だったのか??」
「勘違いしないでよ。一宇!そんなの幼稚園の時にふざけてした約束でしょ!」
「ひどいよぉ。アヤメっちぃ。僕はあの時も今も本気だよ!」
「そうよ、約束は約束ですから。アヤメさんには是非ともこの赤目家のお嫁さんに来てもらわないと。」
「あああああ。これだからこの家に来たくなかったのよ!」
狭い室内に不穏な空気が流れる。
「だいたい、本田が来てからアヤメっちは変わっちゃったんだよ。眷属はいらないって言ってたのに、どこの馬の骨ともわからない男を眷属にしてさ。」
「あなた、本田さんと言ったかしら?眷属なら身の程をわきまえて行動なさいませ。眷属が主の結婚を邪魔するなんて、あってはならないことです!」
「おれ、そんな邪魔なんて、、、そんな気はないです、、、けど。」
「それなら、今日はお引き取りください。アヤメさんはパーティーが終わるまでいてくださらないとね。」
静かな図書室に不穏な空気が漂う。アヤメと俺はいたたまれない思いで、その場に立ち尽くした。
「ああああ。一宇、見つけた!こんなことろにいたのね!」
アヤメが俺を見つけてらせん階段を駆け上がって来た。やっとの思いで、ママンから逃げて来たらしく息が上がっている。
「あら、おじいさま。こんばんは。」
「アヤメちゃん、こんばんは。少し見ない間にきれいなお嬢さんになったね。」
「ありがとうございます。私も、おじいさまにはお会いしたかったんです。」
アヤメよ、その言い方は良くないぞ。
「これから本田君を連れて、図書室に行くんだけど、アヤメちゃんも一緒にどうだい?」
「是非ご一緒させてください。」
俺たちは3人連れ立って、図書室に向かった。
「この家で、唯一話せる人よ。それに、図書室ならあの人たちに見つからなくって済むわね。」
歩きながら、アヤメが俺の耳元で囁いた。
確かに、あの赤目と、ママンが図書室に用があるとは思えない。
図書室の扉を開けると、中は学校の教室くらいの広さがあり、本棚には本がぎっしりと詰まっていた。中には杉山さんと灰野が読書の真っ最中だった。
赤目のおじさんを見つけた杉山さんが静かに近づいてきて、赤目のおじさんに頭を下げる。
「本日は、ご招待ありがとうございます。」
「何か、杉山さんの興味を引くような本がありましたか?仕事柄、ここには植物関係の本が多いんですよ。」
「ありがとうございます。素晴らしい本ばかりで、時間を忘れてしまいました。」
「そうですか。今夜読み切れないものは、お貸ししますから好きなだけ持って行ってください。ここにある本を読むのは私だけです。杉山さんのような人に読んでいただけたら、本も喜ぶでしょう。それと、いつでも、ここにきて本を読んでくださいね。」
杉山さんの顔が喜びに輝く。こんな彼女の顔を見たのは初めてかもしれない。彼女の本好きは本物だ、、、。
俺たちは、図書室の奥にある小さな扉から個室に入る。
「この中にあるよ、本田君。」
おじさんは、そこに備え付けた本棚から1冊の古いアルバムを取り出す。
これですよ、そう言ってページをめくる。
「この中に彼女がいますが、どこにいるかわかりますか?」
そう言って、小学校の集合写真を指さす。
そこには、あどけない笑顔の子供たちが50人ほど写っていた。
「あああ。これですよね。」
俺はその中から、一人の少女を指さす。
「あたりです。彼女はどこにいても目立つ存在でしたからね。簡単だったかな。」
「この女の子、誰なの?」
「俺の祖母の安芸だよ。」
「じゃ、彼女が守人の、、、。」
アヤメは俺より夢中になってその写真を見ているようだった。
「他にもたくさん写っていると思うから、自由に見てください。私は、この図書室にいるお客様に美味しいお茶でも淹れてきますよ。」
そう言って、赤目のおじさんが出て行く。
「これ、どういうことなの?」
「赤目のおじいさまと一宇のおばあさんって知り合いだったの?」
「そうみたいだね。小中学校の同級生だってさ。」
「へぇ~。不思議なご縁ね。」
「それより、あなたが守人の血縁だなんて、赤目の家の人たちに知られたら面倒な事になるわ。」
「そんなもん?」
「うーん。特にママンには知られないほうが良いかもね。彼女なら養子になれって言い出しかねないわよ。」
「そうか、じゃ、おじさんに口止めしておかないと、、、。」
その時、小部屋の扉が開く。赤目のおじさんがお茶を淹れて戻って来たと思ったらそこに立っていたのは、、、。赤目と、赤目のママンだった、、、、。
「アヤメっちぃ。探したよぉ。こんなところで何してるの?しかも、本田なんかと二人っきりで。」
「そうですよ。ここは、家族のプライベートな写真が仕舞ってある部屋ですよ。勝手に入り込んで失礼じゃないですか?」
「ここには、おじさまの案内で来たんです。」
アヤメが反論した。
「さぁ、アヤメさん。パーティーに戻りましょう。あなたは、このパーティーの準主役でもあるんですから。」
「準主役ですって。おばさま何を言ってるか意味が解りませんけど。」
「だって、アヤメさんはボクちゃんの婚約者ですもの、、、。」
「えええええ。アヤメと赤目ってそう言う関係だったのか??」
「勘違いしないでよ。一宇!そんなの幼稚園の時にふざけてした約束でしょ!」
「ひどいよぉ。アヤメっちぃ。僕はあの時も今も本気だよ!」
「そうよ、約束は約束ですから。アヤメさんには是非ともこの赤目家のお嫁さんに来てもらわないと。」
「あああああ。これだからこの家に来たくなかったのよ!」
狭い室内に不穏な空気が流れる。
「だいたい、本田が来てからアヤメっちは変わっちゃったんだよ。眷属はいらないって言ってたのに、どこの馬の骨ともわからない男を眷属にしてさ。」
「あなた、本田さんと言ったかしら?眷属なら身の程をわきまえて行動なさいませ。眷属が主の結婚を邪魔するなんて、あってはならないことです!」
「おれ、そんな邪魔なんて、、、そんな気はないです、、、けど。」
「それなら、今日はお引き取りください。アヤメさんはパーティーが終わるまでいてくださらないとね。」
静かな図書室に不穏な空気が漂う。アヤメと俺はいたたまれない思いで、その場に立ち尽くした。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと - 〇
設楽理沙
ライト文芸
♡~好きになった人はクールビューティーなお医者様~♡
やさしくなくて、そっけなくて。なのに時々やさしくて♡
――――― まただ、胸が締め付けられるような・・
そうか、この気持ちは恋しいってことなんだ ―――――
ヤブ医者で不愛想なアイッは年下のクールビューティー。
絶対仲良くなんてなれないって思っていたのに、
遠く遠く、限りなく遠い人だったのに、
わたしにだけ意地悪で・・なのに、
気がつけば、一番近くにいたYO。
幸せあふれる瞬間・・いつもそばで感じていたい
◇ ◇ ◇ ◇
💛画像はAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる