眷属のススメ

岸 矢聖子(きし やのこ)

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赤目ファミリー ③

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俺は人ごみの中、アヤメを探す、

でも、何百人もいる招待客に阻まれ、アヤメを見つけ出すことは出来なかった。やり手の赤目の母に捕まっているのは心配だ。まぁ、アヤメならうまく切り抜けられるだろう。

次に俺は、杉山さんと灰野を探すために屋敷の入り口を探す。結局は、それも見つけることが出来なかった。
まるでこの家は、中世の城の様で、建物と庭。それにガラス張りの温室が沢山建っている。どうやら俺は赤目の家の敷地内で迷子になってしまったらしい。

温室の中に人影が見える。白い襟のないシャツにくたびれたオーバーオールを履いた大柄なおじさんだった。庭師さんかな?

「あの、すみません。」
俺は屋敷の入り口を聞くために声を掛けた。彼は驚いたように振り返る。

「おや、こんなところにお客様なんて、珍しいですね。君は、パーティーのお客様かな?」

「はい。すみません、道に迷ってしまって。屋敷の入り口を教えていただきたいんです。」

「ははは、この家は迷路みたいになってますからね。初めて来た人はよく道に迷うんですよ。そこにでも腰かけて、少し待っててください。この剪定が終わったら入り口までご案内しましょう。」
彼が指さした脚立に腰かけて俺は彼が植物の手入れをする姿を眺めていた。
彼は無駄のない動きでハサミを動かし、植物の葉っぱを切り取って行く。俺は。ネクタイをはずし、ワイシャツのボタンを2つ外す。ようやく窮屈な状態からから解放された。

「はい。終わりましたよ。屋敷の入り口までご案内しましょう。」
おじさんが植物の間を抜けて近寄って来た。でかい。
椅子に腰かけていた時には気が付かなかったが、彼はかなりの大男だった2m程はあるかもしれない。そして、その大きな体に柔和が顔が乗っている。

「お仕事中にすみません。よろしくお願いします。」

「君は?類のお友達かな?」

類って、赤目の事かな?

「はい。赤目君の同僚で、本田一宇と言います。刑部アヤメの眷属です。」

「ほう。君が噂のアヤメさんの眷属の子かい。いつも、類が迷惑をかけて申し訳ないね。」

「あの、おじさんは、、、。」

「私は、類の祖父で、赤目金之助と申します。類は甘やかして育てられたので、お困りの事も多いでしょう。」

「いえ、決してそんなことは、、、」
(マズイ。今、頭の中を読まれたら、きっと赤目に対する文句でいっぱいだ、、、。)

「類の事、よろしくお願いします。」
彼が、俺に深々と頭を下げた。

「おや、そのペンダントは?」

ネクタイを外したひょうしに守人石のペンダントがワンシャツの襟から飛び出していて、それが彼の目に留まったらしい。

「ああ、これは。祖母の形見なんです。」

「本田さんのお婆様の?」
赤目さんが不思議そうな顔をする。

「本田さんのお婆様は、安芸さんと言う名前ではありませんか?」

「はい。そうですが、祖母をご存じなんですか?」

「そうかい。君が安芸さんのお孫さんか。不思議なご縁ですねぇ。安芸さんは私とは小中学校の同級生なんですよ。安芸さんは、クラスのマドンナ的な存在でね。クラスの男子全員のあこがれの的でししたよ。懐かしいなぁ。」

「そうでしたか、祖母は、俺が生まれる前に亡くなったので、」

「そうすると、本田さんは、杜人家の跡取りでらっしゃる?」

「いいえ。俺の現在の肩書は、刑部アヤメの眷属だけです。このペンダントは、祖母が俺に託したと言うだけで、、、。俺自身、杜人家のこと知ったのはつい最近で、、、。守人の任に就くかは全く未定の状態です。」

「そうですか。杜人家の孫が、刑部家の眷属になるとは、面白い時代になりましたねぇ。私が、若い頃は、人間と共存する社会も夢物語でしたからね。そう言えば、安芸さんは人間と共存できる社会がきっと来るって言ってましたよ。私たちはそんな夢みたいなことがあるわけがないって、笑いましたけど。彼女の言った通りの社会が実現しましたね。彼女にも、今の社会を見せたかったなぁ。」

「ありがとうございます。俺、祖母についてあんまり知らなくって。そんな話を聞くと嬉しいです。」

「どうか、類をお願いします。」

「いいえ、こちらこそよろしくお願いします。」

俺とおじさんは、迷路のような中庭を抜け、屋敷の入り口にたどり着いた。そこで彼が願ってもない申し出をしてくれる。

「そう言えば、家の図書室に古いアルバムがあります。そこに、本田さんのお婆様の写真がありますが、ご覧になりますか?」

「是非、見せてください。」

「それでは行きましょう。」

おじさんについて俺は屋敷の中に入って行く。屋敷の中も豪華なつくりだった。

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