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ヘイトクライム(憎悪犯罪)の親玉 ⑪
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俺たちは、大野弁護士を連れてヴァンパイア裁判所にやってきた。
車の中で目を覚ました大野弁護士は、トランクで何やら大声で怒鳴りながら暴れている。
大野が暴れているため右に左に揺れる車を守衛さんは不思議そうな顔で見ていたが、すぐに門を開けて車を中に入れてくれた。
俺たち男性3人組は、大野に逃げられないようにドアの前でスタンバイしてトランクの扉を開ける。
トランクから転がり落ちた大野が、俺たちの間をすり抜け脱兎のごとく逃げ出した。
慌てて俺たちが追いかけようとしたとき、後ろにいたアヤメが大野の足を引っかけて奴を転ばせる。
「3人もいて使えないわね。」
ごもっとも、、、。
転んで鼻血を流しながら、すっかり観念したのか、大野は俺と山田さんに両脇を抱えられて裁判所の中に入って行く。
「お前たち、いったい何者なんだ。ここはどこだ。私に何をしようって言うんだ。」
大野は頭に浮かんだ疑問をすべて口にしているようだった。
前回と同様に、守衛から連絡が入っていたのだろう1階のロビーで、司さんが俺たちを待っていた。
「おいおい、アヤメ。ここに来るときは連絡してから来てよぉ。せっかくお前に会えるのに何の準備もしてないじゃんかぁ。」
「お兄様。今日はお願いがあって来たの。」
「それは、可愛い妹のお願いなら何でも聞いてあげたいけど、、、。山田君と本田君以外のお客様を紹介してくれないのかい?」
「その小さいのは敦。善良なヴァンパイア市民の眷属よ。そして、今日はその鼻血を垂らしてるジジイの事でここに来たのよ。」
「ふーん。そのおじさんの頭の中を俺に見ろって言うのかい。でも、ヴァンパイアポリスから正式な要請は来てないようだし。その、おじさん人間だよね。人間の頭の中を勝手に見るのは、政府から禁止されてるんだよね、、、。」
「わかったわ、お兄様。それではご機嫌よう。一宇、山田さん。帰るわよ。」
「ま、待ってよ~。アヤメちゃん。そんな、見ないって言ってないじゃん。帰るなんて言ってお兄ちゃん泣いちゃうぞ!」
「じゃ、見てくれるの?」
「見るよ、見るよ。でもさ、おまけに本田君のもちょっと見せてくれないかなぁ。」
司さんが、俺の方を見てにっこり笑う。
「嫌ですよ、司さん。俺は関係ないですから。」
俺は、おでこを押さえながら後ずさる。
「いいよ、いいよ。僕は本田君がその気になるまで、いつまでも待ってるからさぁ。」
「お兄様、時間がないの急いでお願い。それと報告書はいらないわ。ここで見たものをそのまま話してちょうだい。」
「わかったよぉ。せっかちだなアヤメは。いつも自分の都合でやって来てさぁ。お兄ちゃんとなんか全然遊んでくれないし、、、。本田君だってろくに紹介してくれないし。お兄ちゃん悲しいなぁ~。」
「わかったわよ!今度のお休みはお兄ちゃんに1日付き合うから!」
司さんに笑顔が戻る。なんだ、司さんってシスコンか?
「それじゃ、上に行こうか。」
俺と山田さんに抱えられた大野は、引きずられるようにエレベーターに乗り込む。
「私をどうしようって言うんだ、、、。」
また不安に駆られた大野が両脇を抱えている俺たちに聞いてくる。
その問いに答えたのは、司さんだった。
「大丈夫、ちょっと頭の中を見せてもらうだけですから。と言っても別に頭を勝ち割って見るわけじゃないから安心して下さい。優しくしますよ。」
それを聞いた大野は余計に怖くなったの小刻みに震え出した。今の大野に教会で堂々と演説していた男の姿は微塵も感じられなかった。
前回、武藤を連れて来た時と同じ部屋に、俺たち4人とアヤメ、司さんが入る。今日は刑務官の姿はない。
俺たちに抱えられた大野に向かって司さんが近づいてくる。
ポケットから白いハンカチを出した司さんが大野の顔を拭きはじめた。
「あなた血からは嫌な匂いがします、」
そう言って大野の顔の血をきれいに拭き取り、ハンカチをごみ箱に捨てた後、おもむろに大野の額に自分の額を合わせた。
2分ほど大野と額を合わせた後、司さんは小走りで部屋を出て行ってしまった。
「なんだよ、これで終わりなのか?」
大野は訳が分からないといった表情でそんなことを言っている。自分の頭の中がすっかり覗かれてしまったことには気づいていないようだ。
「あ~、気持ち悪かったぁ。だっておじさんのオデコ、脂でヌルヌルしてるんだもん。」
顔でも洗って来たのだろうか、前髪が濡れていた。
「わかったよ。アヤメ。お前の言う通り、一刻を争う事態だね。そのおじさん、とんでもない計画を立てているみたいだから。」
「お、お前。何を言っているんだ、、。」
大野は、大したことをされないと安心したのか、少し威勢が戻って来たようだ。
「ちょっと長くなりそうだから座って、」
司さんは、室内の応接セットのソファーを俺たちに勧める。
「おじさんは床にでも座って下さい。あなたは私が思っていたより悪人の様ですから。」
全員がに座ると、司さんが静かに話し始めた。
車の中で目を覚ました大野弁護士は、トランクで何やら大声で怒鳴りながら暴れている。
大野が暴れているため右に左に揺れる車を守衛さんは不思議そうな顔で見ていたが、すぐに門を開けて車を中に入れてくれた。
俺たち男性3人組は、大野に逃げられないようにドアの前でスタンバイしてトランクの扉を開ける。
トランクから転がり落ちた大野が、俺たちの間をすり抜け脱兎のごとく逃げ出した。
慌てて俺たちが追いかけようとしたとき、後ろにいたアヤメが大野の足を引っかけて奴を転ばせる。
「3人もいて使えないわね。」
ごもっとも、、、。
転んで鼻血を流しながら、すっかり観念したのか、大野は俺と山田さんに両脇を抱えられて裁判所の中に入って行く。
「お前たち、いったい何者なんだ。ここはどこだ。私に何をしようって言うんだ。」
大野は頭に浮かんだ疑問をすべて口にしているようだった。
前回と同様に、守衛から連絡が入っていたのだろう1階のロビーで、司さんが俺たちを待っていた。
「おいおい、アヤメ。ここに来るときは連絡してから来てよぉ。せっかくお前に会えるのに何の準備もしてないじゃんかぁ。」
「お兄様。今日はお願いがあって来たの。」
「それは、可愛い妹のお願いなら何でも聞いてあげたいけど、、、。山田君と本田君以外のお客様を紹介してくれないのかい?」
「その小さいのは敦。善良なヴァンパイア市民の眷属よ。そして、今日はその鼻血を垂らしてるジジイの事でここに来たのよ。」
「ふーん。そのおじさんの頭の中を俺に見ろって言うのかい。でも、ヴァンパイアポリスから正式な要請は来てないようだし。その、おじさん人間だよね。人間の頭の中を勝手に見るのは、政府から禁止されてるんだよね、、、。」
「わかったわ、お兄様。それではご機嫌よう。一宇、山田さん。帰るわよ。」
「ま、待ってよ~。アヤメちゃん。そんな、見ないって言ってないじゃん。帰るなんて言ってお兄ちゃん泣いちゃうぞ!」
「じゃ、見てくれるの?」
「見るよ、見るよ。でもさ、おまけに本田君のもちょっと見せてくれないかなぁ。」
司さんが、俺の方を見てにっこり笑う。
「嫌ですよ、司さん。俺は関係ないですから。」
俺は、おでこを押さえながら後ずさる。
「いいよ、いいよ。僕は本田君がその気になるまで、いつまでも待ってるからさぁ。」
「お兄様、時間がないの急いでお願い。それと報告書はいらないわ。ここで見たものをそのまま話してちょうだい。」
「わかったよぉ。せっかちだなアヤメは。いつも自分の都合でやって来てさぁ。お兄ちゃんとなんか全然遊んでくれないし、、、。本田君だってろくに紹介してくれないし。お兄ちゃん悲しいなぁ~。」
「わかったわよ!今度のお休みはお兄ちゃんに1日付き合うから!」
司さんに笑顔が戻る。なんだ、司さんってシスコンか?
「それじゃ、上に行こうか。」
俺と山田さんに抱えられた大野は、引きずられるようにエレベーターに乗り込む。
「私をどうしようって言うんだ、、、。」
また不安に駆られた大野が両脇を抱えている俺たちに聞いてくる。
その問いに答えたのは、司さんだった。
「大丈夫、ちょっと頭の中を見せてもらうだけですから。と言っても別に頭を勝ち割って見るわけじゃないから安心して下さい。優しくしますよ。」
それを聞いた大野は余計に怖くなったの小刻みに震え出した。今の大野に教会で堂々と演説していた男の姿は微塵も感じられなかった。
前回、武藤を連れて来た時と同じ部屋に、俺たち4人とアヤメ、司さんが入る。今日は刑務官の姿はない。
俺たちに抱えられた大野に向かって司さんが近づいてくる。
ポケットから白いハンカチを出した司さんが大野の顔を拭きはじめた。
「あなた血からは嫌な匂いがします、」
そう言って大野の顔の血をきれいに拭き取り、ハンカチをごみ箱に捨てた後、おもむろに大野の額に自分の額を合わせた。
2分ほど大野と額を合わせた後、司さんは小走りで部屋を出て行ってしまった。
「なんだよ、これで終わりなのか?」
大野は訳が分からないといった表情でそんなことを言っている。自分の頭の中がすっかり覗かれてしまったことには気づいていないようだ。
「あ~、気持ち悪かったぁ。だっておじさんのオデコ、脂でヌルヌルしてるんだもん。」
顔でも洗って来たのだろうか、前髪が濡れていた。
「わかったよ。アヤメ。お前の言う通り、一刻を争う事態だね。そのおじさん、とんでもない計画を立てているみたいだから。」
「お、お前。何を言っているんだ、、。」
大野は、大したことをされないと安心したのか、少し威勢が戻って来たようだ。
「ちょっと長くなりそうだから座って、」
司さんは、室内の応接セットのソファーを俺たちに勧める。
「おじさんは床にでも座って下さい。あなたは私が思っていたより悪人の様ですから。」
全員がに座ると、司さんが静かに話し始めた。
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