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守人試験 ①
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翌日の早朝、ボロアパートに黒塗りのハイヤーが俺を迎えにやって来た。
俺は、ハビブさんに部屋の鍵を渡し、留守宅をお願いする。
事情を詳しく話すわけにもいかず、俺は「出張」に行くとハビブさんに説明した。
「イチウ。エラクナッタナー。シュッチョー、ガンバレヨ。」
ハビブさんに笑顔で見送られ、俺はハイヤーに乗り込む。「明日の朝食にどうぞ。」と高梨さんが作ってくれたおにぎりをハイヤーの中で食べる。ハイヤーは40分ほど走り続け杜人家に到着した。
ヴァンパイアの賢人たちがこの時間帯に起きているんだろうか?
その疑問は見事的中する。賢人たちは就寝中なので、安芸の部屋で日が沈むまで休んでいるように指示があった。
なんだよ。それなら昼くらいにゆっくり来ても良かったじゃん。
そんな不満を抱きつつ、俺は、祖母のベットにごろりと横になりそのまま眠ってしまった。
「一宇様。そろそろお支度の時間でございます。」
どのくらい眠っていたのだろう。まだ日は完全に落ちてはいなかった。こんな状況なのにぐっすりと熟睡できるなんて、、、。
ベッドから飛び起きてドアを開けると、初めて見る顔の小柄で可愛らしい女性が俺を待っていた。
彼女に連れられて、風呂場に到着する。
「お着換えとタオルはこちらに置いておきます。洗濯物はこのカゴの中に入れておいてください。」
彼女はそう言って、脱衣所から出て行った。
広い脱衣所で、俺は裸になりタオルをもって風呂場に入る。
脱衣所も広かったが、風呂場もなかなかの広さがあった。
俺は、体を適当に洗って風呂に飛び込む。いい湯加減だ。
♪ふんっ♪ふんふん、♪お江戸の悪い奴らを許しちゃおけねぇ~♪
鼻歌が自然と出てくる。しかも、時代劇、江戸の稲妻のテーマソングとは、、、、。
アヤメは今頃眠っているんだろうか?昨日別れたばかりで、もう里心が出て来ている自分を情けなく思う。
脱衣所と風呂場を隔てる、すりガラスの扉に人影がうつる。さっきの女性が洗濯物でも取りに来たのかもしれない。そう思っていると、風呂場の扉が開き、さっきの女性が中に入って来た。
しかも、白いランニングシャツに短いショートパンツという出で立ちだ。
「お背中を流させていただきます。」
彼女はきっぱりとした口調でそう言った。
「い、いや、いや結構です。」
「そうは参りません。魔の者と対峙するとき汚れは禁物です。私が隅々まで、、、。」
「ま、まって!お断りします。キレイにしろって言うんなら、隅々まで自分でしますからっ!」
俺と彼女の押し問答は5分ほど続いたが、結局彼女は体を洗うのを諦めあかすりタオルと石鹼を残して出て行った。
俺だって健康な若い男だぞ、あんな若くて可愛い女の子に、隅々まで洗われたらたまらない、、、。
俺は一度脱衣所に戻り、風呂場のカギをかけてから、言いつけ通り体を隅々まできれいに洗った。
風呂場から出ると、やはりさっきの彼女が待っていて、お食事の準備ができております、と無表情に言った。彼女は可愛いのだが、表情に乏しいような気がする。俺は、アヤメの感情の起伏の激しさを懐かしく思った。
食堂には、俺一人分の食事が立派なお膳に入って用意されていた。
彼女がすぐに、温かいご飯と味噌汁を持ってきてくれる。
「君の名前は?」
俺は食事をしながら彼女に聞いてみた。
「私は、結女(ゆめ)と申します。一宇様のお世話係です。お困りのことがありましたら、何なりとお申し付けください。」
「この時間に動けるってことは、結女ちゃんって人間だよね?」
「さようでございます。」
彼女は俺に聞かれたことに答えるだけで、話を膨らませるつもりは全くないように思われた。
アヤメ、ノエル、カヲルさん、、、。俺の周りの女性陣は話好きな人が多い。恥ずかしがり屋の常盤さんやロボと揶揄されている杉山さんでも、もっと自己主張はあるように思う。
「お食事が、お済になりましたら安芸様のお部屋でお待ちください。賢人様がお出ましになりましたら、呼びに参ります。」
俺は、食事の後を下げようとした。
「困ります。それは私の役目です。」
彼女がそう言って俺を食堂から追い払った。
ここでの生活は、いろいろな意味で辛いものになりそうだ、、。
祖母の部屋に戻る。以前この部屋には無かったテレビが置いてあることに気が付く。
仕方なく、俺はテレビをつけて見ることにした。
テレビでは、今でも大野弁護士についてテレビ局の追跡調査が続いていた。気の毒に大野弁護士の私生活や女性関係、キャンブル癖など洗いざらい暴露されている。でも、大野をそそのかし金銭を渡したヴァンパイア、白神についてはマスコミの優秀な取材でも出てこないらしい。白神についての報道はほとんどなかった。
テレビをぼんやりと見ているうちに、あたりが暗くなってきた。
「一宇様。お時間でございます。」
結女が、俺を呼びに来た。俺は彼女の後に続き、広間に案内される。しばらく待っていると、顔に布という変わらぬ姿で賢人さまが現れた。
「一宇さん、よう来られた。お疲れはとれましたかな。」
「はい。お陰様で。あの質問なんですけど、試験って何日くらいかかるんですか?」
「試験は2日で終わります。」
それを聞いて俺は心底嬉しかった。あのアヤメとの別れは大げさだったかな?と恥ずかしくすら思える。
「ですが、」
ですか??
「試験に合格した場合。ここにさらに10日ほど滞在していただきます。」
なんだとぉー。
「試験に不合格だったら?」
「すぐにお帰りいただいて結構ですよ。一宇さんには眷属と言うお仕事もあるようですから、そのお仕事を続けていただいて結構です。」
この試験には何としても落ちなければ!
「一宇さんが、この試験に落ちたいと願う気持ちは分からないでもないのですが、今回の試験で私たちが見るのはあなたの素質です。あなたが落ちようと思っていてもそれは関係ありません。」
考えを読まれているようだ。次回は、考え読ませませんパッチ強力タイプを何枚か貼ってこよう。
「それでは、日もくれました。早速、第一の試験をはじめましょう、この衣装に着替えてください。」
賢人の一人が手を叩くと、白い衣装をもって若い男が現れた。
「この衣装には、魔の者を寄せ付けないために、特別な香で焚き染めてあります。ですか、香の力は完全ではありませんので、あなたに守人の力がなければ魔に飲まれ、自己を失う可能性もあります。」
可能性もありますって簡単に言ってくれるよな、、、。
「守人石のペンダントはお持ちですね?」
「はい。」
俺は首からペンダントを出して彼らに見せる。
「よろしい。それは肌身離さず身に着けておくように。そして、最後はこれです。」彼らがまた手を叩くと、さっきの男が今度は日本の刀を持って現れた、この刀には見覚えがあった。祖母の安芸が魔物との戦いで使っていた刀。それともう一本の脇差は白神が使っていた、祖母の命を奪った刀に間違いない。
「これは、全ての魔物に有効な刀です。長い方は代々守人の任に就くものが使ってきました。短い方は、、。」
「白神家ですか?」
「ご存知でしたか、、。そうです。ですが白神はもうありません。2本ともあなたが使ってください。それと、その刀はヴァンパイアの命も一瞬で奪います。取り扱いには十分気を付けてください。さあ。着替えて。試験の場所にはこの男が案内します。」
刀を持ってきた男が俺に頭を下げる。
おれは、剣道の道着のような白い着物と袴に着替え、腰に刀を2本差した。
いよいよ試験開始だ。この期に及んでも、俺は試験の不合格を願っていた。
俺は、ハビブさんに部屋の鍵を渡し、留守宅をお願いする。
事情を詳しく話すわけにもいかず、俺は「出張」に行くとハビブさんに説明した。
「イチウ。エラクナッタナー。シュッチョー、ガンバレヨ。」
ハビブさんに笑顔で見送られ、俺はハイヤーに乗り込む。「明日の朝食にどうぞ。」と高梨さんが作ってくれたおにぎりをハイヤーの中で食べる。ハイヤーは40分ほど走り続け杜人家に到着した。
ヴァンパイアの賢人たちがこの時間帯に起きているんだろうか?
その疑問は見事的中する。賢人たちは就寝中なので、安芸の部屋で日が沈むまで休んでいるように指示があった。
なんだよ。それなら昼くらいにゆっくり来ても良かったじゃん。
そんな不満を抱きつつ、俺は、祖母のベットにごろりと横になりそのまま眠ってしまった。
「一宇様。そろそろお支度の時間でございます。」
どのくらい眠っていたのだろう。まだ日は完全に落ちてはいなかった。こんな状況なのにぐっすりと熟睡できるなんて、、、。
ベッドから飛び起きてドアを開けると、初めて見る顔の小柄で可愛らしい女性が俺を待っていた。
彼女に連れられて、風呂場に到着する。
「お着換えとタオルはこちらに置いておきます。洗濯物はこのカゴの中に入れておいてください。」
彼女はそう言って、脱衣所から出て行った。
広い脱衣所で、俺は裸になりタオルをもって風呂場に入る。
脱衣所も広かったが、風呂場もなかなかの広さがあった。
俺は、体を適当に洗って風呂に飛び込む。いい湯加減だ。
♪ふんっ♪ふんふん、♪お江戸の悪い奴らを許しちゃおけねぇ~♪
鼻歌が自然と出てくる。しかも、時代劇、江戸の稲妻のテーマソングとは、、、、。
アヤメは今頃眠っているんだろうか?昨日別れたばかりで、もう里心が出て来ている自分を情けなく思う。
脱衣所と風呂場を隔てる、すりガラスの扉に人影がうつる。さっきの女性が洗濯物でも取りに来たのかもしれない。そう思っていると、風呂場の扉が開き、さっきの女性が中に入って来た。
しかも、白いランニングシャツに短いショートパンツという出で立ちだ。
「お背中を流させていただきます。」
彼女はきっぱりとした口調でそう言った。
「い、いや、いや結構です。」
「そうは参りません。魔の者と対峙するとき汚れは禁物です。私が隅々まで、、、。」
「ま、まって!お断りします。キレイにしろって言うんなら、隅々まで自分でしますからっ!」
俺と彼女の押し問答は5分ほど続いたが、結局彼女は体を洗うのを諦めあかすりタオルと石鹼を残して出て行った。
俺だって健康な若い男だぞ、あんな若くて可愛い女の子に、隅々まで洗われたらたまらない、、、。
俺は一度脱衣所に戻り、風呂場のカギをかけてから、言いつけ通り体を隅々まできれいに洗った。
風呂場から出ると、やはりさっきの彼女が待っていて、お食事の準備ができております、と無表情に言った。彼女は可愛いのだが、表情に乏しいような気がする。俺は、アヤメの感情の起伏の激しさを懐かしく思った。
食堂には、俺一人分の食事が立派なお膳に入って用意されていた。
彼女がすぐに、温かいご飯と味噌汁を持ってきてくれる。
「君の名前は?」
俺は食事をしながら彼女に聞いてみた。
「私は、結女(ゆめ)と申します。一宇様のお世話係です。お困りのことがありましたら、何なりとお申し付けください。」
「この時間に動けるってことは、結女ちゃんって人間だよね?」
「さようでございます。」
彼女は俺に聞かれたことに答えるだけで、話を膨らませるつもりは全くないように思われた。
アヤメ、ノエル、カヲルさん、、、。俺の周りの女性陣は話好きな人が多い。恥ずかしがり屋の常盤さんやロボと揶揄されている杉山さんでも、もっと自己主張はあるように思う。
「お食事が、お済になりましたら安芸様のお部屋でお待ちください。賢人様がお出ましになりましたら、呼びに参ります。」
俺は、食事の後を下げようとした。
「困ります。それは私の役目です。」
彼女がそう言って俺を食堂から追い払った。
ここでの生活は、いろいろな意味で辛いものになりそうだ、、。
祖母の部屋に戻る。以前この部屋には無かったテレビが置いてあることに気が付く。
仕方なく、俺はテレビをつけて見ることにした。
テレビでは、今でも大野弁護士についてテレビ局の追跡調査が続いていた。気の毒に大野弁護士の私生活や女性関係、キャンブル癖など洗いざらい暴露されている。でも、大野をそそのかし金銭を渡したヴァンパイア、白神についてはマスコミの優秀な取材でも出てこないらしい。白神についての報道はほとんどなかった。
テレビをぼんやりと見ているうちに、あたりが暗くなってきた。
「一宇様。お時間でございます。」
結女が、俺を呼びに来た。俺は彼女の後に続き、広間に案内される。しばらく待っていると、顔に布という変わらぬ姿で賢人さまが現れた。
「一宇さん、よう来られた。お疲れはとれましたかな。」
「はい。お陰様で。あの質問なんですけど、試験って何日くらいかかるんですか?」
「試験は2日で終わります。」
それを聞いて俺は心底嬉しかった。あのアヤメとの別れは大げさだったかな?と恥ずかしくすら思える。
「ですが、」
ですか??
「試験に合格した場合。ここにさらに10日ほど滞在していただきます。」
なんだとぉー。
「試験に不合格だったら?」
「すぐにお帰りいただいて結構ですよ。一宇さんには眷属と言うお仕事もあるようですから、そのお仕事を続けていただいて結構です。」
この試験には何としても落ちなければ!
「一宇さんが、この試験に落ちたいと願う気持ちは分からないでもないのですが、今回の試験で私たちが見るのはあなたの素質です。あなたが落ちようと思っていてもそれは関係ありません。」
考えを読まれているようだ。次回は、考え読ませませんパッチ強力タイプを何枚か貼ってこよう。
「それでは、日もくれました。早速、第一の試験をはじめましょう、この衣装に着替えてください。」
賢人の一人が手を叩くと、白い衣装をもって若い男が現れた。
「この衣装には、魔の者を寄せ付けないために、特別な香で焚き染めてあります。ですか、香の力は完全ではありませんので、あなたに守人の力がなければ魔に飲まれ、自己を失う可能性もあります。」
可能性もありますって簡単に言ってくれるよな、、、。
「守人石のペンダントはお持ちですね?」
「はい。」
俺は首からペンダントを出して彼らに見せる。
「よろしい。それは肌身離さず身に着けておくように。そして、最後はこれです。」彼らがまた手を叩くと、さっきの男が今度は日本の刀を持って現れた、この刀には見覚えがあった。祖母の安芸が魔物との戦いで使っていた刀。それともう一本の脇差は白神が使っていた、祖母の命を奪った刀に間違いない。
「これは、全ての魔物に有効な刀です。長い方は代々守人の任に就くものが使ってきました。短い方は、、。」
「白神家ですか?」
「ご存知でしたか、、。そうです。ですが白神はもうありません。2本ともあなたが使ってください。それと、その刀はヴァンパイアの命も一瞬で奪います。取り扱いには十分気を付けてください。さあ。着替えて。試験の場所にはこの男が案内します。」
刀を持ってきた男が俺に頭を下げる。
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