眷属のススメ

岸 矢聖子(きし やのこ)

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ゆずの冒険 ①

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俺がいない間にヴァンパイアポリスに新人が配属されていた。

高木班長と杉山さんは、新人の教育を任され大忙しだ。彼らの中から優秀な者の眷属が新人の眷属隊に任命されることが決まっている。
新人眷属隊の教育係は、、、。たぶん山田さんと灰野になるだろう。

俺は通常任務に戻った。現在のところの俺の一番の仕事は、書類の整理とパソコンの入力だ、、。
休んでる間にたまった書類を鬼のように整理してパソコンに入力していく。類が手伝ってくれたのでかなりはかどった。

約束したまま保留になっていた、類とのヤング洋品店でのお買い物にも行くとこができた。
ヤング洋品店のお姉さんは、類の事を憶えいた。
「なんだい。兄ちゃんと知り合いなら、さっさとそう言えばいいんだよ。」
と文句を言いながら、類に似合いそうな洋服何枚か選んでくれた。

その後、類とTIMEでコーヒーを飲む。
「こんないい店、ゴールデン商店街にあったんだぁ。」
類は「薄い」コーヒを飲んでご満悦だった。その帰りに二人でスマ眷属で宗助さんとおしゃべりをして、今日はお開きになった。
類をタクシーに乗せて家に帰す。類との約束が果たせて俺も嬉しかった。

家に帰ると、ゆずからハガキが届いていた。
こっちに戻ってからゆずとは月2回ペースで手紙のやり取りをしている。ハガキには何の動物かわからないイラストと、汚い字で「行くよ!」と書いてあった。
行くよ???主語がないぞゆず。ゆずのやつ一体どこに行くんだ???

そろそろ、ゆずも夏休みに入る頃だろう。ゆずが夏休みに入ったら、一度、白神家に遊びに行こう。
ゆずの意味不明なハガキを見ながら俺はそんなことを考えた。

最近刑部家でもらい風呂をすることが多かったが、今日は久々に近所の銭湯に出かけた。
時間が遅いせいか、銭湯はガラガラですっかり長湯をする。
風呂から上がるとスマホにたくさんの着信があった。

「着信:結女さん」

ん?結女さん?俺はトランクスだけ履いて結女さんに電話を掛ける。
すぐに電話に出た結女さんは、ひどく慌てている。

「あ、一宇様ですか?ゆずちゃんが、ゆずちゃんが、、。」

「ゆずが、どうしたんですか?」

「家出してしまって、、、。」

「家出ぇぇぇぇ。」
番台で居眠りしていたおばちゃんが、俺の大声にビックリして目を覚ます。

結女さんの話では、ゆずは俺のころに行くと書置きを残して今日の夕方家を出て行ったらしい。
俺は結女さんにゆずを探すと約束して電話を切った。
ゆずのやつみんなに心配かけて。

俺は急いで服を着てとりあえず、アパートに戻る。
家に帰ると、玄関に張り紙がしてあった。

「オキャクサン キテマス ウチデ マッテマス ハビブ」

俺は、急いでハビブさんの家をノックする。

いた。ゆずは半べそをかきながらハビブさんの家で俺を待っていた。俺を見つけ走って来る。

「ダメだろゆず!みんなに心配かけて!」
俺に叱られたゆずは訳が分からないというような顔をしている。

ハビブさんの話では、俺の部屋の前で泣いているゆずを見つけ、とりあえず自分の家で待つようにいったらしい。
俺はハビブさんにお礼を言ってゆずを俺の部屋に連れて行った。

部屋に戻って結女さんにゆずが見つかったと連絡を入れる。結女さんは今から迎えにいくと言って電話を切る。

「お館様、なぜ、お館様はこんなあばら家にお住まいなのですか?」
ゆずは珍しそうに部屋を見て回りながらそんなことを言う。

「部屋なんて、寝に帰って来るだけだからこれでいいんだよ。それより、ゆず。なんで家でなんかしたんだ。」

「家出ではございません。お館様にも手紙でお知らせしたではありませんか。」

ああああ。あのハガキか、、、。

「それに家族にも手紙を残してきました。」

「俺もゆずが夏休みに入ったらゆずのところに遊びに行こうと思ってたんだぞ。」

「本当ですか、お館様。やはり、お館様もゆずが居なくて寂しかったのですね!」
ゆずは満足げに何度も頷く。

「今から結女さんが迎えに来るから、一緒に帰るんだぞ。」

「そうは参りません。ゆずは白神家当主としてお務めを果たすために今日はここに来たのですから。」

「お務め??なんだそれ。」

「白神当主は、守人様と同じ家に暮し、寝食を共にすると昔から決まっております。」

「はぁ?なんだそれ。」

「ですから、ゆずはこのボロ家でお館様と暮らすために来たのです。」

「お、お前学校はどうするんだよ。」

「心配無用でございますよ。こちらにもヴァンパイアの学校はございます。」

「だいたい、今までの守人と白神家の当主は東門を一緒に守っていたから一緒に暮していたんだろ、今は東門も安定してるし、ゆずは家に戻ってしっかり勉強しないと。」

「嫌でございます。しきたりはしきたりでございます故。」
ゆずはかたくなになっている。

結女さんの到着を待って彼女に説得してもらうしかなさそうだ。

俺は結女さんが到着するまでアヤメから借りて来た、時代劇のDVDをゆずと見ることにした。

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