眷属のススメ

岸 矢聖子(きし やのこ)

文字の大きさ
128 / 166

物の怪、三度(みたび)現る ③

しおりを挟む
お姉さんは、静かに話し始める。

「アタシの副業は武器の製造販売よ。あなた達ヴァンパイアポリスに解体されたヴァンパイアマフィアなんかを相手にね。銃を改造したり、それに詰める銀の弾なんかも作ったわ。銀のナイフとかもね。頼まれて私に作れて、私の美学に適うものなら何でも作ったわ。ただ、今までは使用されることは滅多になかった。ヴァンパイアマフィアの小競り合いに使われるくらいでね。私の知る限り、私の造った武器で死人はいないわ。でも、最近はなんか物騒な事件が多いでしょ、この前のヴァン共反会の事件とかね。だから手を引くことにしたのよ。一番のお得意さんだったヴァンパイアマフィアもなくなったわけだし。ここ数ヶ月は武器の類は作ってないわ。最近はシルバージュエリーで食べていけるくらい稼げるようになってきたしね。」

「あなたの事情は良く分かったわ。それで、トキオとはどういう関係なの。」

「あの子はうちの常連さんよ。もちろんアクセサリーじゃなくて武器の方のね。」

「あなたは爆弾も作るの?」

「この前のヴァン反協会の事件なら無関係よ。爆弾は専門外だし、ああいう大量の人を殺害する武器には興味がないの。爆弾なんか美しくないわ。一応アーティストなんでね。美しさのの感じられない物は作らない。」

「それは良かった。」

「トキオが久々に連絡してきたのよ。作ってほしい武器があるってね。それがちょっと変わったもので、対人武器と言うより破壊兵器ねアレは。全部を作ってほしい訳じゃないって、ロケットランチャーみたいなものの弾の先に付ける銀製のカバーを作れって言って来たのよ。カバーの先に何か紋章と言うかマークのようなものを彫ってほしいって言って来たわ。」

「その模様ははっきりと覚えているわ。これでも記憶力はいいのよ。」

彼女は、近くにあった紙にさらさらと絵を描いて俺たちに渡す。そのマークは陰陽の模様に似ている。俺はこのマークをどこかで見たような気がした。つい最近だ。でも、どこで見たのかは思い出せない。

「あなたはその仕事を受けたの?」

「もちろん断ったわ。なんかヤバい感じがするし。ロケットランチャーの弾の先に付けて何に向かってぶっ放す気かわからないけど、どうせろくな事じゃないでしょ。」

「その後でトキオから連絡は?彼の居場所は分からないわよね。」

「その仕事を断ってからはないわ。彼の住まいも知らない。うちは注文も受け取りもこの店でが原則だから必要ないのよ。お金も商品受け取りの時に現金で払ってもらってるし。」

少し沈黙して彼女は続ける。
「あの子、必死だったからたぶん別のジュエリーショップに頼んでると思う。お金さえもらえば何でも作るヤバそうな同業者をここにピックアップしておいたわ。でも、このリストを渡すには彼らに対する免責も認めてもらわないとね。告げ口するのって気分悪いじゃない。」

「わかったわ。彼らの罪も免責すると約束する。」

それを聞いたお姉さんはリストをアヤメに渡した。

「ご協力ありがとうございます。また何かわかったらぜひご連絡ください。」

「もちろんよ。」

さっき彼女の副業を聞いてから、俺には彼女に頼みたい事があった。
「あの、ヴァンパイアポリスの仕事とは無関係な件ですけど、、、。」
俺はそう切り出した。

俺は彼女に作ってほしいものがあった。彼女が武器を作るプロフェッショナルならばきっと作れるだろう。
俺は絵を描いて、彼女に詳細を説明する。

「本田君の依頼っていつもユニークよね。わかったわ。詳しいサイズを測ってメールで送って。本当は実物を見たいところだけど、持ち出すのが難しいんじゃ仕方ないわね。それと、刑部さん。本田君から聞いてると思うけど、うちはアフターフォローは完璧だから十手に不具合があったらいつでも持ってきて、」
そう言って、ウインクした。

トキオの微かな手掛かりを持ってアヤメと俺はヴァンパイアポリスに急いだ。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと - 〇  

設楽理沙
ライト文芸
♡~好きになった人はクールビューティーなお医者様~♡ やさしくなくて、そっけなくて。なのに時々やさしくて♡ ――――― まただ、胸が締め付けられるような・・ そうか、この気持ちは恋しいってことなんだ ――――― ヤブ医者で不愛想なアイッは年下のクールビューティー。 絶対仲良くなんてなれないって思っていたのに、 遠く遠く、限りなく遠い人だったのに、 わたしにだけ意地悪で・・なのに、 気がつけば、一番近くにいたYO。 幸せあふれる瞬間・・いつもそばで感じていたい           ◇ ◇ ◇ ◇ 💛画像はAI生成画像 自作

処理中です...