眷属のススメ

岸 矢聖子(きし やのこ)

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ぼっちの修行 ②

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ぼっちの修行が始まって10日が過ぎた。俺は未だにスタート地点で足踏みをしている。平助さんの瞑想CDは相変わらず俺を夢の世界へのみ連れて行ってくれる。

変化もあった。走っても山田さんのトレーニングマシーンで身体を酷使しても息が上がらなくなった。
フィジカル面だけ成長してもどうしようもないんだよな、、、。

俺は着替えのために男部屋に戻る。男部屋には文句を言いながら荷物を整理する稲葉の姿があった。

「あ~。また田舎暮らしの再スタートだよ。」
高木班長と山田さんに遅れ、ヴァンパイアポリス本署での残務を終えた稲葉とノエルがこちらに合流してきたらしい。

「まぁ、稲葉君。そう文句を言うなよ。ここでの任務に失敗したらそもそも君の大好きな都会だってなくなっちゃうんだぜ。」

「そうですよ、稲葉殿。楽しいことはいつも自分の心が決めると、みつをという人が言っておりました。」

「ゆず。そんなのどこで聞いたんだ?」

「女子トイレの壁に貼ってございました。ゆずもその通りと思います。昔の人は良いことを言いましたね。」

その言葉に俺たち3人とも噴きだした。

とりあえず汗を流すために着替えをもって風呂場に向かう。
風呂に入りTシャツと新しいジャージに着替えて風呂場を出ると、ノエルが向こうから歩いてきた。

「いや~ん。一宇!マジ久しぶり!元気してたぁ~。」
そう言ってノエルが俺に抱き着いてくる。

「んんん?一宇?」
そう言ってノエルが俺から離れる。なんだなんだ。ちゃんと体も頭も洗ったし臭くは無いはずだけど。

ノエルが着替えたばっかりのおれのTシャツを首までめくりあげる。

「何すんだよ、ノエル!」

「おおおおおおおおお。すご~い。見事なシックスパック。なになにボディビルの大会にでも出るつもりなの?」

ノエルにそう言われて初めて俺はトレーニングの成果が身体だけに現われた事を実感した。

「違うよ。身体を作りたいんじゃないよ。これは心の修行の副産物って言うか、、なんていうか、、、。」

「なになに?落ち込んでるようだね一宇君。このノエルちゃんに話してみなさいよ。」

おれは、ノエルがいない間に始まった、この修行の事をノエルに話す。

「ふーん。ちょっとその瞑想音楽ってのをノエルに聞かせてみてよ。」
ノエルにそう言われて俺はノエルと男部屋に戻ってオーディオプレイヤーをノエルに渡す。ノエルは耳にイヤホンを指して聞き始めた。

「あははははははははは。無理!チベットの修行僧かっ。これじゃ無理だよ。マジうける。」

「そう言うなよノエル。あと5日で平助さんが戻って来るのに。俺さっぱりで落ち込んでるんだからさ。」

「なるほどねぇ。ノエルにいい考えがあるよ!君のお悩みはこのノエル様にまっかせなさーい。」
そう言ってノエルが胸元を叩く。ノエルの胸が大きく揺れるのを、俺は雑念でいっぱいの心で眺めていた。
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