159 / 166
決戦前夜
しおりを挟む
寺に戻った俺は、アヤメを心配して俺の帰りを待っていた類に、アヤメは杜人家で賢人衆と話し合いをしていて今夜は戻らないと、帰る道すがら考えた嘘をついた。
類の安心した顔を見て心が痛む。
「一宇とすれ違いだったんだね。皆にそう言ってくるよ。」
類が、心配していた人たちに事情を説明しに走っていくと、俺は自分で付いた嘘と、明日の戦いで自分が負けたらどうなってしまうのか、その責任の重さに潰れそうになる。
敵は百戦錬磨の白神剣護で、俺と言えばほとんど実戦経験もない新米の守人。俺に勝ち目はあるのか?白神の言った通りゆずに助太刀を頼むという考えが一瞬頭をよぎる。
俺はそんな弱気な心を振り払う。ゆずを危険な目に合わせるわけにも、辛い目に合わせるわけにもいかない。
明日は、是が非でも白神を倒し、東門や日本に暮す全ての人を、そしてアヤメを救うしかない。
おれは、皆が俺の不在を不審に思わないように「散歩に行ってくる」と言って再び寺を出た。
そして、祖父母の眠る社へ向かった。
”じいちゃん。ばあちゃん。明日、白神剣護と戦う事になったよ。俺,正直言って勝てるかどうか自信がない。”
俺は言葉に出さず、心の中で祖父母に本音をぶちまけた。
”俺が負けたら、東門が開かれて東日本は大惨事になる。それだけは避けたい。俺の力でどこまで奴に太刀打ちできるかわからないけど、やれるだけ頑張ってみる。それと、、、、ばあちゃん。もし俺が負けても、白神の好きにはさせないから、安心して。じいちゃんとの最後の約束も、守れるように頑張るよ俺。”
「こちらにおられたのですか、お館様。」
俺を探しに来た、ゆずがいつの間にか俺の後ろに立っていた。
「ゆずも、一緒にお参りそさせていただきます。」
ゆずは、社に向かって何かを一心に願っている。
「ゆず。お前、お賽銭入れたのか?」
「え??お賽銭を入れないと駄目なのでございますか!」
ゆずはポケットから小さな財布を取り出し、賽銭箱を探している。
「うそだよ。ゆず。」
「ひどいです!お館様!」
「ははははは。ごめんな、ゆず。お前があんまり真剣に願い事してるからさ。つい。ところで、お前そんなに真剣に何をお願いしていたんだ?」
「ないしょでございますよ、お館様、ゆずの願いが叶いましたら、ゆずの小遣いでお花を買ってここにお供えに参ります。」
「そうか。ゆずのお願いが叶うと良いな。」
その為にも、俺は明日頑張らなくてはいけない、俺はゆずと共に寺へと戻った。
男部屋では、白神について、宗助所長と高木班長が議論の真っ最中だった。
「だから、申し訳ないですけど、宗助さんより白神剣護の方が若いんですって!俺、バーナイトメアで奴の姿をはっきり見たんですから。」
「えええ。そんなわけあるはずがないですよ。剣護兄ちゃんは俺より10歳は年上のはずですから。」
俺の姿を見つけた高木班長が俺にも聞いてくる。
「だよな?本田君。君も近くで白神剣護を見ただろ?どう見ても、奴は宗助さんより若かったよな?」
「ですよね、、。」
「えええ、一宇君までそんなぁ。白神剣護がどんなに若作りしたって、アタシより若いってのはおかしいですよ。しかも、髪が真っ白なんでしょ?それなら、実際より老けて見えるのが普通ってもんです。」
宗助さんが、納得できないと言った感じで反論したが、俺と高木班長の二人にそう言われて引き下がった。
「一宇君。なんか元気がないように見えますが、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、宗助所長。早く平和な世界に戻って、「TIME」のコーヒーが飲みたいって思っただけです。」
「TIMEのコーヒーですかぁ。良いですねぇ。もし、そうなってTIMEに行くときは、アタシも誘ってくださいよ。」
「もちろんです。」
「そう言えば、ケンタロウとハルカちゃん。結婚するそうですよ。」
「えええ。本当に?」
「ただし。恋のキューピッドの君が、大変な仕事をしているのに自分たちばかりが幸せになるわけにいかないし、結婚式には是非君にも出てほしいから、君がすべてを終えて帰ってくるのを待つって言ってましたよ。ですから、一日も早くこの非常事態を終わらせて、市内に帰りましょう。ね、一宇君。」
ここに来て、俺にはまた守らなければならない未来が一つ増えた。
類の安心した顔を見て心が痛む。
「一宇とすれ違いだったんだね。皆にそう言ってくるよ。」
類が、心配していた人たちに事情を説明しに走っていくと、俺は自分で付いた嘘と、明日の戦いで自分が負けたらどうなってしまうのか、その責任の重さに潰れそうになる。
敵は百戦錬磨の白神剣護で、俺と言えばほとんど実戦経験もない新米の守人。俺に勝ち目はあるのか?白神の言った通りゆずに助太刀を頼むという考えが一瞬頭をよぎる。
俺はそんな弱気な心を振り払う。ゆずを危険な目に合わせるわけにも、辛い目に合わせるわけにもいかない。
明日は、是が非でも白神を倒し、東門や日本に暮す全ての人を、そしてアヤメを救うしかない。
おれは、皆が俺の不在を不審に思わないように「散歩に行ってくる」と言って再び寺を出た。
そして、祖父母の眠る社へ向かった。
”じいちゃん。ばあちゃん。明日、白神剣護と戦う事になったよ。俺,正直言って勝てるかどうか自信がない。”
俺は言葉に出さず、心の中で祖父母に本音をぶちまけた。
”俺が負けたら、東門が開かれて東日本は大惨事になる。それだけは避けたい。俺の力でどこまで奴に太刀打ちできるかわからないけど、やれるだけ頑張ってみる。それと、、、、ばあちゃん。もし俺が負けても、白神の好きにはさせないから、安心して。じいちゃんとの最後の約束も、守れるように頑張るよ俺。”
「こちらにおられたのですか、お館様。」
俺を探しに来た、ゆずがいつの間にか俺の後ろに立っていた。
「ゆずも、一緒にお参りそさせていただきます。」
ゆずは、社に向かって何かを一心に願っている。
「ゆず。お前、お賽銭入れたのか?」
「え??お賽銭を入れないと駄目なのでございますか!」
ゆずはポケットから小さな財布を取り出し、賽銭箱を探している。
「うそだよ。ゆず。」
「ひどいです!お館様!」
「ははははは。ごめんな、ゆず。お前があんまり真剣に願い事してるからさ。つい。ところで、お前そんなに真剣に何をお願いしていたんだ?」
「ないしょでございますよ、お館様、ゆずの願いが叶いましたら、ゆずの小遣いでお花を買ってここにお供えに参ります。」
「そうか。ゆずのお願いが叶うと良いな。」
その為にも、俺は明日頑張らなくてはいけない、俺はゆずと共に寺へと戻った。
男部屋では、白神について、宗助所長と高木班長が議論の真っ最中だった。
「だから、申し訳ないですけど、宗助さんより白神剣護の方が若いんですって!俺、バーナイトメアで奴の姿をはっきり見たんですから。」
「えええ。そんなわけあるはずがないですよ。剣護兄ちゃんは俺より10歳は年上のはずですから。」
俺の姿を見つけた高木班長が俺にも聞いてくる。
「だよな?本田君。君も近くで白神剣護を見ただろ?どう見ても、奴は宗助さんより若かったよな?」
「ですよね、、。」
「えええ、一宇君までそんなぁ。白神剣護がどんなに若作りしたって、アタシより若いってのはおかしいですよ。しかも、髪が真っ白なんでしょ?それなら、実際より老けて見えるのが普通ってもんです。」
宗助さんが、納得できないと言った感じで反論したが、俺と高木班長の二人にそう言われて引き下がった。
「一宇君。なんか元気がないように見えますが、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、宗助所長。早く平和な世界に戻って、「TIME」のコーヒーが飲みたいって思っただけです。」
「TIMEのコーヒーですかぁ。良いですねぇ。もし、そうなってTIMEに行くときは、アタシも誘ってくださいよ。」
「もちろんです。」
「そう言えば、ケンタロウとハルカちゃん。結婚するそうですよ。」
「えええ。本当に?」
「ただし。恋のキューピッドの君が、大変な仕事をしているのに自分たちばかりが幸せになるわけにいかないし、結婚式には是非君にも出てほしいから、君がすべてを終えて帰ってくるのを待つって言ってましたよ。ですから、一日も早くこの非常事態を終わらせて、市内に帰りましょう。ね、一宇君。」
ここに来て、俺にはまた守らなければならない未来が一つ増えた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと - 〇
設楽理沙
ライト文芸
♡~好きになった人はクールビューティーなお医者様~♡
やさしくなくて、そっけなくて。なのに時々やさしくて♡
――――― まただ、胸が締め付けられるような・・
そうか、この気持ちは恋しいってことなんだ ―――――
ヤブ医者で不愛想なアイッは年下のクールビューティー。
絶対仲良くなんてなれないって思っていたのに、
遠く遠く、限りなく遠い人だったのに、
わたしにだけ意地悪で・・なのに、
気がつけば、一番近くにいたYO。
幸せあふれる瞬間・・いつもそばで感じていたい
◇ ◇ ◇ ◇
💛画像はAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる