「愛って何ですか」

愛理

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第20話 「歪んだ愛」

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  しずくは悟が入院している病室に色鮮やかな花を飾った。
「……しずく」
 花の香に誘われたかのように悟は目を開けた。
 悟はナイフで刺されて倒れた後、すぐに救急車で病院に運ばれた。
 出血はかなりしていたが、幸いナイフは深い所まで刺さってはいなくて、命に別状はなかった。
 1週間位、入院していればいいと医者は言った。
 今日は入院3日目だ。
「あ、起こしちゃった?」
 しずくは悟を心配そうに見ながら言った。
 そして、しずくの目に自然に涙が溢れてきた。
 安堵したのだ。悟の声に。
 しずくは悟が刺されてから、これが初めての対面だったから。
 1日目と2日目は一応、大事をとって、家族以外の面会は赦されてはいなかったから。例えそれが恋人のしずくでも。
「……しずく」
 悟はしずくの涙を見て驚く。
 そして、悟はしずくにおいでと手でジェスチャーした。
 だから、しずくは悟の傍に行って、座った。
 すると悟はベッドから上半身を起こし、しずくを抱き締めた。
「駄目よ。悟くん。まだ起き上がったら。傷口が開くわ」
「大丈夫だよ。それより凄い心配かけてごめん」
 悟のその言葉にしずくは首を横に振った。
「悟くんのせいじゃないもの」
「―俺を刺した子って、君に怪我させた子と同一人物らしいね」
「……渋谷さんから聞いたの?」
「ああ。今日、朝一番に来てね。今度こそ、告訴するって言ってたけど、俺はいいって言っといた」
「……悟くん」
「マネージャーからの話じゃ、その子も俺を刺した後、凄いパニックに陥って、大変だったらしいしね」
 そう。悟を刺した女の子はその後、狂ったように悲鳴をあげ続けたという。
 それは悟を愛しているから。狂う程に。
「……あの女の子の愛は歪んだ愛ね」
 しずくが言った。
「え?」
「結局、自分の為にあなたさえも傷付けて、だけど、前にも言ったとおり、悲しいけれど、この世には上手く愛を表現できない人もいるし、そうやって愛に狂ってしまう人もいる。私は人間は根本的なところでは必ず慈悲愛を持っているとは信じてはいるけれど、その愛を深い所から取りだせないままでいる人もいるから、時々、悲しくなるの」
「しずく」
「だけど、やっぱり、あなたは私の思ったような人だった」
「え?」
「気付いてない? 今のあなた、私の書いたお話の中の空くんみたいな感じにいつの間にかなってるのよ。被害に自分があっても、加害者のことまで考えてあげれるような慈悲愛をたっぷり持った人にね」
 しずくにそう言われ悟は今まで生きてきた中で一番驚いた顔をした。
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