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第一章 【七罪の魔王】 カイン・エレイン編
24 休日
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翌日、俺達は街に出ていた。今日はアルトと相談して、休日にすることにしたのだ。この街に来て一月近くしか経っていない俺と違い、ここで生まれ育ったアルトはこの街に精通している。折角の休日なので、アルトに色々案内してもらう事にした。
「あっちに俺のお気に入りの店があるんだが、行くか?」
「ああ」
アルトのお気に入りの串焼きの店があるという事で、そこに向かう。目的の屋台では大柄な男性が店番をしていた。
「おっさん、久しぶり!!」
「お前、もしかしてアルトか? 久しぶりだな、最近来ねぇから、死んじまったかと思って心配してたんだぞ!!」
「おっさんも元気だったか?」
「おうよ!! んで、そっちの奴は誰だ?」
「こいつはカイン。俺が傭兵になったのは知ってるだろ? こいつと組んでるんだ」
「そうか。カイン、だったな。俺はグラントってんだ、アルトにはおっさんって呼ばれてるけどな」
グラントと名乗る屋台の店主に俺も軽く挨拶をする。
「アルトは危なっかしい部分もあるからな。よろしく頼む」
「危なっかしい部分ってなんだよ」
「おめぇ、忘れたのかよ。おめぇが昔、俺の娘と一緒に出掛けた時、野生動物に襲われそうになった俺の娘を庇った事があったろ。勇気と無謀は違うんだ。そういう所が危なっかしいって言うんだよ」
「いつの話をしてるんだよ……」
「そりゃあ、昔の話さ」
「俺は成長したんだ。大人になったんだよ」
「何言ってんだ。俺からすれば、お前はまだまだひよっこだ」
アルトは以後も文句を言うが、グラントさんは取り合わず、ガハハハ、と笑っていた。
「お前ら、折角来たんだ。買ってけ」
「分かったよ。じゃあ、串焼きを俺とカインに一つずつで」
「あいよ」
そして、グラントさんは慣れた手つきでサッと串を焼き上げ、俺達に二本ずつ手渡してきた。
「あれ? 一つずつしか頼んでないんだけど?」
「サービスだ。とっとけ」
「グラントさん、ありがとうございます」
「おうよ。その代わり、今後もこの店を御贔屓にしてくれよな」
その後、グラントさんと軽い雑談をした後、次の目的地へと向かうため、屋台から離れたのだった。
俺達が屋台から離れ、次に向かったのは酒場だった。俺達が向かう酒場は、昼は食堂としても営業しているのだ。
「おう、アルトにカインじゃねぇか」
「グランさん」
俺達に声を掛けてきたのは傭兵ギルドの先輩、グランさんだ。どうやら彼も今日は休みを取っている様で、まだ昼だというのに酒を飲んでいる様だ。
「ギルドマスターから例の件は聞いたぞ。大変だったらしいじゃねぇか」
「どうしてそれを?」
「いやさ、ギルドマスターから頼まれちまってな。明日からお前らがオークキングと遭遇したって森に行く事になっててな。その時にお前らの事を聞いたんだよ」
どうやらグランさんは、ギルドマスターが言っていた調査団に同行する様だ。
「大変ですね」
「まぁな。けど、その分報酬は弾んでもらったからな。この依頼が終わったら、お前らに奢ってやるよ」
「本当ですか!!」
アルトが興奮したようにグランさんに問いかける。
「ああ、いいぜ。今回の依頼はある意味お前らのおかげでもあるからな。少しぐらいは還元してやるさ」
グランさんは、俺達が来た当初から酒を飲んでいたが、さらに追加で酒を注文した。そして、その酒が来るまで俺達は雑談で盛り上がっていた。
「しっかし、おめえらオークキングに遭遇してよく生き残れたなぁ」
「あれは運が良かったとしか……」
「それでもだよ。それによく言うだろ、運も実力の内だって」
「それを言うならオークキングに出会った時点で、運が無いんじゃ……?」
「クハハ、それもそうだな!!」
そして、追加で注文していた酒が来ると、その酒を片手に色々な話で盛り上がった。あそこの飯が美味しいだの、行きつけの娼館の新入りの子が可愛いだの、とある魔物の相手をしている時に死にかけただの、そんな役に立ちそうな話から下らない話まで、様々だ。
結局グランさんは、俺達が酒場を出る時になっても酒を飲み続けていたのだった。
今日は久しぶりの休日で楽しかった。今後どうするかは、明日アルトとしっかりと話し合うと決めていた。アルトもじっくり考えたいという事だったので、いつもは一部屋を二人で使っていた所を、今日は一人一室にする事にしたのだ。
「今日は本当に楽しかった……」
屋台や酒場以外にも色々な場所を巡った。その先々で色々な人との出会いがあり、俺にも親しくしてくれる様な人達ばかりだった。
この街に居て、初めて自分の居場所を手に入れた気がする。この街の人達は俺を受け入れてくれた。もし、自分の周りにいる誰かが助けを求めるなら、俺は喜んで手を伸ばせる。
「もし、アルトがこの街に残るって決めたら、俺はどうするべきなのか……」
アルトにはこの街から出ようと言ったが、本当の事を言うなら俺もこの街からは出たくない。今日この街を回った事でその思いはさらに強くなっていた。だが、アルトを巻き込みたくないというのも間違いなく自分の本心だ。
結局、その答えは出ず、アルトにその答えを聞いてから考えよう、という後回しを選んでしまった。
だが、アルトからの答えを、まさか一生聞く機会が訪れないなど、この時の俺は想像もしていなかったのだった。
「あっちに俺のお気に入りの店があるんだが、行くか?」
「ああ」
アルトのお気に入りの串焼きの店があるという事で、そこに向かう。目的の屋台では大柄な男性が店番をしていた。
「おっさん、久しぶり!!」
「お前、もしかしてアルトか? 久しぶりだな、最近来ねぇから、死んじまったかと思って心配してたんだぞ!!」
「おっさんも元気だったか?」
「おうよ!! んで、そっちの奴は誰だ?」
「こいつはカイン。俺が傭兵になったのは知ってるだろ? こいつと組んでるんだ」
「そうか。カイン、だったな。俺はグラントってんだ、アルトにはおっさんって呼ばれてるけどな」
グラントと名乗る屋台の店主に俺も軽く挨拶をする。
「アルトは危なっかしい部分もあるからな。よろしく頼む」
「危なっかしい部分ってなんだよ」
「おめぇ、忘れたのかよ。おめぇが昔、俺の娘と一緒に出掛けた時、野生動物に襲われそうになった俺の娘を庇った事があったろ。勇気と無謀は違うんだ。そういう所が危なっかしいって言うんだよ」
「いつの話をしてるんだよ……」
「そりゃあ、昔の話さ」
「俺は成長したんだ。大人になったんだよ」
「何言ってんだ。俺からすれば、お前はまだまだひよっこだ」
アルトは以後も文句を言うが、グラントさんは取り合わず、ガハハハ、と笑っていた。
「お前ら、折角来たんだ。買ってけ」
「分かったよ。じゃあ、串焼きを俺とカインに一つずつで」
「あいよ」
そして、グラントさんは慣れた手つきでサッと串を焼き上げ、俺達に二本ずつ手渡してきた。
「あれ? 一つずつしか頼んでないんだけど?」
「サービスだ。とっとけ」
「グラントさん、ありがとうございます」
「おうよ。その代わり、今後もこの店を御贔屓にしてくれよな」
その後、グラントさんと軽い雑談をした後、次の目的地へと向かうため、屋台から離れたのだった。
俺達が屋台から離れ、次に向かったのは酒場だった。俺達が向かう酒場は、昼は食堂としても営業しているのだ。
「おう、アルトにカインじゃねぇか」
「グランさん」
俺達に声を掛けてきたのは傭兵ギルドの先輩、グランさんだ。どうやら彼も今日は休みを取っている様で、まだ昼だというのに酒を飲んでいる様だ。
「ギルドマスターから例の件は聞いたぞ。大変だったらしいじゃねぇか」
「どうしてそれを?」
「いやさ、ギルドマスターから頼まれちまってな。明日からお前らがオークキングと遭遇したって森に行く事になっててな。その時にお前らの事を聞いたんだよ」
どうやらグランさんは、ギルドマスターが言っていた調査団に同行する様だ。
「大変ですね」
「まぁな。けど、その分報酬は弾んでもらったからな。この依頼が終わったら、お前らに奢ってやるよ」
「本当ですか!!」
アルトが興奮したようにグランさんに問いかける。
「ああ、いいぜ。今回の依頼はある意味お前らのおかげでもあるからな。少しぐらいは還元してやるさ」
グランさんは、俺達が来た当初から酒を飲んでいたが、さらに追加で酒を注文した。そして、その酒が来るまで俺達は雑談で盛り上がっていた。
「しっかし、おめえらオークキングに遭遇してよく生き残れたなぁ」
「あれは運が良かったとしか……」
「それでもだよ。それによく言うだろ、運も実力の内だって」
「それを言うならオークキングに出会った時点で、運が無いんじゃ……?」
「クハハ、それもそうだな!!」
そして、追加で注文していた酒が来ると、その酒を片手に色々な話で盛り上がった。あそこの飯が美味しいだの、行きつけの娼館の新入りの子が可愛いだの、とある魔物の相手をしている時に死にかけただの、そんな役に立ちそうな話から下らない話まで、様々だ。
結局グランさんは、俺達が酒場を出る時になっても酒を飲み続けていたのだった。
今日は久しぶりの休日で楽しかった。今後どうするかは、明日アルトとしっかりと話し合うと決めていた。アルトもじっくり考えたいという事だったので、いつもは一部屋を二人で使っていた所を、今日は一人一室にする事にしたのだ。
「今日は本当に楽しかった……」
屋台や酒場以外にも色々な場所を巡った。その先々で色々な人との出会いがあり、俺にも親しくしてくれる様な人達ばかりだった。
この街に居て、初めて自分の居場所を手に入れた気がする。この街の人達は俺を受け入れてくれた。もし、自分の周りにいる誰かが助けを求めるなら、俺は喜んで手を伸ばせる。
「もし、アルトがこの街に残るって決めたら、俺はどうするべきなのか……」
アルトにはこの街から出ようと言ったが、本当の事を言うなら俺もこの街からは出たくない。今日この街を回った事でその思いはさらに強くなっていた。だが、アルトを巻き込みたくないというのも間違いなく自分の本心だ。
結局、その答えは出ず、アルトにその答えを聞いてから考えよう、という後回しを選んでしまった。
だが、アルトからの答えを、まさか一生聞く機会が訪れないなど、この時の俺は想像もしていなかったのだった。
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