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第一章
12 ゲームの勝敗
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ゲームが始まった直後、マーシア達は屋敷内を必死に走っていた。一秒でも早く何処かに隠れる為だ。
必死に屋敷内を走るが、彼女達の着ているドレスや装飾品が邪魔で動きにくい。それでも彼女達にそれらを脱ぐという選択肢は無かった。
この屋敷ではマーシア主催でよくお茶会を開いている為、三人ともアメリアよりもこの屋敷に詳しい。日の入りまで時間があるとはいえ、この屋敷の大きさを考えれば十分勝利の可能性はあると言えた。
「貴女達、あの女に見つかったら承知しませんわよ!!」
「は、はいっ!!」
「わ、分かりました!!」
そして、三人はバラバラに分かれ屋敷の何処かに隠れ潜むのだった。
・マーシアの取り巻きの一人、エルザ・ヴァネルラント侯爵令嬢の場合
エルザが隠れる場所に選んだのはこの屋敷にある武器庫に隠れ潜んでいた。エルザがこの武器庫に隠れてからかなりの時間が経ったが、アメリアがこの武器庫にくる気配は無かった。
上手くいけばこのまま隠れ続けられる。エルザはそう思ったが、その直後、武器庫の扉が開いた音が聞こえてきたのだ。
「さて、次はこの部屋を探してみましょうか」
「っ!!」
この声は間違いなくアメリアの物だ。その声を聞いたエルザは息すらも漏らさないと言わんばかりに、口元を手で覆い隠し極力呼吸音を少なくする。運が良い事にアメリアは自分が隠れている場所までは近づいてこなかった。
その後暫くの間、武器庫を物色する音が聞こえてきたが、やがてその音は段々と小さくなっていった。
「どうやら、ここにはいないようですね。まぁ、やはりここは気になるのでまた後で来る事にしましょうか」
アメリアがそう言うと武器庫の扉が閉まる音が聞こえてくる。その後に聞こえてきた廊下から聞こえてくる足音も段々と小さくなっていく。
その事からエルザはアメリアが去ったと判断した。
「ふぅ、どうやら行ったようですわね……」
だが、あのアメリアの言葉から考えればもう一度この場所を探しに来るかもしれない。今回は運よく見つからなかったが、次もそうなるという保証はどこにもない。
「移動、した方が良いかもしれませんわね……」
エルザは少しの逡巡の後、この武器庫から別の部屋に移動する事を決めた。幸い、次に隠れる場所の目星は付けてある。そこに移動する為、体を起こし武器庫の扉から廊下に出た瞬間だった。
「はい、まずは一人目ですね」
「どう、して……」
廊下に出たエルザの目の前にアメリアが待ち構える様に立ちはだかっていたのだ。
「ふふっ、あんな簡単な罠に引っかかるとは思いませんでしたよ」
「ああ……」
その瞬間、アメリアの仕掛けた罠に引っかかったと思い知らされたエルザは崩れ落ちた。そして、抵抗空しくエルザはアメリアに捕まるのだった。
・マーシアの取り巻きの一人、マーシャ・アッカーソン侯爵令嬢の場合
マーシャが隠れた場所、それはこの屋敷にある客間、そこに置かれているベッドの下だった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
このベッドの下のスペースはかなり狭く、姿勢を変えるのにも一苦労だ。着ているドレスもマーシャがベッドの下に潜り込んだ事で埃まみれになっている。また、息をするのも段々と苦しくなってきていた。
だが、安易に移動してアメリアに見つかれば終わりだ。マーシャは、もしアメリアがこの部屋に来て、運よく自分を見つけなかった場合には別の部屋に移動しようと考えていた。
しかし、この部屋の扉が開いた音は聞こえない。まだ暫くこの部屋で大丈夫だと思った直後の事だった。
――――コトン
まるで何か大きな物がテーブルから床に落ちたような音が聞こえたのだ。
「……先程の音は一体……?」
その音が少し気になったマーシャはその音が聞こえてきた方を向いた、その時だった。
「ひぃぃぃぃぃ!!」
なんと、アメリアがベッドの下にいるマーシャの事をじっと見つめていたのだ。あまりの衝撃にマーシャの体は硬直してしまい、動けなくなってしまった。
そんなマーシャの様子を見たアメリアはニッコリと笑顔を浮かべる。
「はい、貴女で二人目ですよ」
「嘘よ……、ど、どうやってこの部屋に……」
客間の扉が開いた音は聞こえなかった。マーシャにはアメリアがどうやってこの部屋に入ってきたのか、全く分からなかった。
ただ一つ言えるのは、この時点でマーシャの負けが確定した事だけだった。
・マーシア・ファーンス公爵令嬢の場合
マーシアが隠れた場所、それは屋敷の一角にあるゴミ捨て場であった。この屋敷は公爵家が所有している屋敷だけあって、ゴミ捨て場の大きさも中々の大きさがある。それこそ、人が数人は入っても十分な広さがあった。
「に、臭いますわ……」
だが、このゴミ捨て場には大量の残飯やゴミが残されている。それが腐臭となって、彼女の嗅覚に多大なダメージを与えていた。
マーシアがこんな場所に隠れているのは何故か。それは、アメリアがこんな場所まで来て探すはずがないと彼女が考えていたからだ。アメリアも元は侯爵令嬢、まさかこんなゴミ捨て場に来てまで探すわけがないだろうと考えたのだ。
「くっ、どうして公爵令嬢のわたくしがこんな場所に……。これも全てあの女のせいですわ……」
こんなゴミの山に隠れる事は公爵令嬢としてのプライドがある為、とてもではないが耐えられない。それでも、アメリアに見つかれば身の破滅だと思い直す事で今は何とか耐えているがもう限界が近かった。
そして、外から見える光量が減って来たことでマーシアは日の入りが近い事を確信する。
「ですが、もうすぐ日の入り。わたくしの勝ちですわ」
だが、そう呟いた次の瞬間、右肩の方に手が乗ったような気がした。そして、マーシアが恐る恐る後ろの方を振り向くと、そこには笑顔を浮かべたアメリアが彼女の肩に手を置いていたのだ。
「あ、ああ……」
「はい、マーシア様、見つけましたよ。これで三人目、私の勝ちですね」
「そ、そんな……」
アメリアのその言葉でゲームに敗北したのだと思い知らされたマーシアはそのまま地面に膝を着き、崩れ落ちるのだった。
アメリアのゲームは終了し、呆気なく見つかった三人は最初の部屋に集められている。マーシア達三人の表情は明らかに曇っていた。
まだ、完全に日の入りしていないというのに、マーシア達がアメリアの元に集められているという事が、マーシア達がゲームに負けたのだというなによりの証明だった。
「さて、日の入りまでに貴女達三人を見つけた私の勝利ですね」
「……一つだけ教えなさい。どうしてわたくしたちの隠れている場所が分かったの……?」
「ふふっ、いいでしょう。私が貴女達の隠れている場所が分かった理由、それはこれのおかげですよ」
そして、アメリアは何処からか羅針盤のような道具を取り出した。それを手に取っているアメリアは不気味な笑みを浮かべている。その笑みを見たマーシア達は嫌な予感がした。
「それは、一体何なのですか……?」
「これですか。これは探知の魔道具です。この魔道具に魔力を込めれば、指定した対象の現在位置を教えてくれるという便利な代物です。因みに、この魔道具は人間も対象に出来ますよ」
「なっ!! そんなものを使うなんて卑怯よ!!」
「卑怯、ですか?」
「ええ、その通りよ!! そんなものがあれば私達の場所なんてすぐに分かるじゃない!!」
「ですが、ルール説明で私は一言も魔道具を使ってはいけないなどと言った覚えはないのですけれども?」
「っ、騙しましたわね!!」
「騙した、ですか。人聞きの悪い事を言いますね。ですが、ルールには何も反していないのですから、騙された方が悪いのですよ。貴女も貴族ならそれぐらいは分かりますよね?」
アメリアは言外に『ルールの不備があったとしても、ルールの説明した時点でそれを指摘しなかったマーシア達が悪いのだ』と言っていた。
それを理解した瞬間、全てがアメリアの掌の上で転がされていたのだと三人は思い知った。同時にこのゲーム自体が自分達に希望を持たせ、それを圧し折る目的だったのだと思い知らされた。
特に、自分が日の入り直前まで隠れられていたのはアメリアに泳がされていたおかげだという事を理解させられたマーシアは項垂れ、心は完全に折れかけていた。
「さて、ゲームに負けた貴方達には私からの罰を受けていただきましょうか」
「な、何をするつもりですの?」
「ふふふっ、それはこれからわかりますよ」
そして、アメリアが指をパチンと鳴らすとマーシア達三人の足元に魔法陣が出現する。次の瞬間、マーシア達三人の意識は闇に落ちるのだった。
必死に屋敷内を走るが、彼女達の着ているドレスや装飾品が邪魔で動きにくい。それでも彼女達にそれらを脱ぐという選択肢は無かった。
この屋敷ではマーシア主催でよくお茶会を開いている為、三人ともアメリアよりもこの屋敷に詳しい。日の入りまで時間があるとはいえ、この屋敷の大きさを考えれば十分勝利の可能性はあると言えた。
「貴女達、あの女に見つかったら承知しませんわよ!!」
「は、はいっ!!」
「わ、分かりました!!」
そして、三人はバラバラに分かれ屋敷の何処かに隠れ潜むのだった。
・マーシアの取り巻きの一人、エルザ・ヴァネルラント侯爵令嬢の場合
エルザが隠れる場所に選んだのはこの屋敷にある武器庫に隠れ潜んでいた。エルザがこの武器庫に隠れてからかなりの時間が経ったが、アメリアがこの武器庫にくる気配は無かった。
上手くいけばこのまま隠れ続けられる。エルザはそう思ったが、その直後、武器庫の扉が開いた音が聞こえてきたのだ。
「さて、次はこの部屋を探してみましょうか」
「っ!!」
この声は間違いなくアメリアの物だ。その声を聞いたエルザは息すらも漏らさないと言わんばかりに、口元を手で覆い隠し極力呼吸音を少なくする。運が良い事にアメリアは自分が隠れている場所までは近づいてこなかった。
その後暫くの間、武器庫を物色する音が聞こえてきたが、やがてその音は段々と小さくなっていった。
「どうやら、ここにはいないようですね。まぁ、やはりここは気になるのでまた後で来る事にしましょうか」
アメリアがそう言うと武器庫の扉が閉まる音が聞こえてくる。その後に聞こえてきた廊下から聞こえてくる足音も段々と小さくなっていく。
その事からエルザはアメリアが去ったと判断した。
「ふぅ、どうやら行ったようですわね……」
だが、あのアメリアの言葉から考えればもう一度この場所を探しに来るかもしれない。今回は運よく見つからなかったが、次もそうなるという保証はどこにもない。
「移動、した方が良いかもしれませんわね……」
エルザは少しの逡巡の後、この武器庫から別の部屋に移動する事を決めた。幸い、次に隠れる場所の目星は付けてある。そこに移動する為、体を起こし武器庫の扉から廊下に出た瞬間だった。
「はい、まずは一人目ですね」
「どう、して……」
廊下に出たエルザの目の前にアメリアが待ち構える様に立ちはだかっていたのだ。
「ふふっ、あんな簡単な罠に引っかかるとは思いませんでしたよ」
「ああ……」
その瞬間、アメリアの仕掛けた罠に引っかかったと思い知らされたエルザは崩れ落ちた。そして、抵抗空しくエルザはアメリアに捕まるのだった。
・マーシアの取り巻きの一人、マーシャ・アッカーソン侯爵令嬢の場合
マーシャが隠れた場所、それはこの屋敷にある客間、そこに置かれているベッドの下だった。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
このベッドの下のスペースはかなり狭く、姿勢を変えるのにも一苦労だ。着ているドレスもマーシャがベッドの下に潜り込んだ事で埃まみれになっている。また、息をするのも段々と苦しくなってきていた。
だが、安易に移動してアメリアに見つかれば終わりだ。マーシャは、もしアメリアがこの部屋に来て、運よく自分を見つけなかった場合には別の部屋に移動しようと考えていた。
しかし、この部屋の扉が開いた音は聞こえない。まだ暫くこの部屋で大丈夫だと思った直後の事だった。
――――コトン
まるで何か大きな物がテーブルから床に落ちたような音が聞こえたのだ。
「……先程の音は一体……?」
その音が少し気になったマーシャはその音が聞こえてきた方を向いた、その時だった。
「ひぃぃぃぃぃ!!」
なんと、アメリアがベッドの下にいるマーシャの事をじっと見つめていたのだ。あまりの衝撃にマーシャの体は硬直してしまい、動けなくなってしまった。
そんなマーシャの様子を見たアメリアはニッコリと笑顔を浮かべる。
「はい、貴女で二人目ですよ」
「嘘よ……、ど、どうやってこの部屋に……」
客間の扉が開いた音は聞こえなかった。マーシャにはアメリアがどうやってこの部屋に入ってきたのか、全く分からなかった。
ただ一つ言えるのは、この時点でマーシャの負けが確定した事だけだった。
・マーシア・ファーンス公爵令嬢の場合
マーシアが隠れた場所、それは屋敷の一角にあるゴミ捨て場であった。この屋敷は公爵家が所有している屋敷だけあって、ゴミ捨て場の大きさも中々の大きさがある。それこそ、人が数人は入っても十分な広さがあった。
「に、臭いますわ……」
だが、このゴミ捨て場には大量の残飯やゴミが残されている。それが腐臭となって、彼女の嗅覚に多大なダメージを与えていた。
マーシアがこんな場所に隠れているのは何故か。それは、アメリアがこんな場所まで来て探すはずがないと彼女が考えていたからだ。アメリアも元は侯爵令嬢、まさかこんなゴミ捨て場に来てまで探すわけがないだろうと考えたのだ。
「くっ、どうして公爵令嬢のわたくしがこんな場所に……。これも全てあの女のせいですわ……」
こんなゴミの山に隠れる事は公爵令嬢としてのプライドがある為、とてもではないが耐えられない。それでも、アメリアに見つかれば身の破滅だと思い直す事で今は何とか耐えているがもう限界が近かった。
そして、外から見える光量が減って来たことでマーシアは日の入りが近い事を確信する。
「ですが、もうすぐ日の入り。わたくしの勝ちですわ」
だが、そう呟いた次の瞬間、右肩の方に手が乗ったような気がした。そして、マーシアが恐る恐る後ろの方を振り向くと、そこには笑顔を浮かべたアメリアが彼女の肩に手を置いていたのだ。
「あ、ああ……」
「はい、マーシア様、見つけましたよ。これで三人目、私の勝ちですね」
「そ、そんな……」
アメリアのその言葉でゲームに敗北したのだと思い知らされたマーシアはそのまま地面に膝を着き、崩れ落ちるのだった。
アメリアのゲームは終了し、呆気なく見つかった三人は最初の部屋に集められている。マーシア達三人の表情は明らかに曇っていた。
まだ、完全に日の入りしていないというのに、マーシア達がアメリアの元に集められているという事が、マーシア達がゲームに負けたのだというなによりの証明だった。
「さて、日の入りまでに貴女達三人を見つけた私の勝利ですね」
「……一つだけ教えなさい。どうしてわたくしたちの隠れている場所が分かったの……?」
「ふふっ、いいでしょう。私が貴女達の隠れている場所が分かった理由、それはこれのおかげですよ」
そして、アメリアは何処からか羅針盤のような道具を取り出した。それを手に取っているアメリアは不気味な笑みを浮かべている。その笑みを見たマーシア達は嫌な予感がした。
「それは、一体何なのですか……?」
「これですか。これは探知の魔道具です。この魔道具に魔力を込めれば、指定した対象の現在位置を教えてくれるという便利な代物です。因みに、この魔道具は人間も対象に出来ますよ」
「なっ!! そんなものを使うなんて卑怯よ!!」
「卑怯、ですか?」
「ええ、その通りよ!! そんなものがあれば私達の場所なんてすぐに分かるじゃない!!」
「ですが、ルール説明で私は一言も魔道具を使ってはいけないなどと言った覚えはないのですけれども?」
「っ、騙しましたわね!!」
「騙した、ですか。人聞きの悪い事を言いますね。ですが、ルールには何も反していないのですから、騙された方が悪いのですよ。貴女も貴族ならそれぐらいは分かりますよね?」
アメリアは言外に『ルールの不備があったとしても、ルールの説明した時点でそれを指摘しなかったマーシア達が悪いのだ』と言っていた。
それを理解した瞬間、全てがアメリアの掌の上で転がされていたのだと三人は思い知った。同時にこのゲーム自体が自分達に希望を持たせ、それを圧し折る目的だったのだと思い知らされた。
特に、自分が日の入り直前まで隠れられていたのはアメリアに泳がされていたおかげだという事を理解させられたマーシアは項垂れ、心は完全に折れかけていた。
「さて、ゲームに負けた貴方達には私からの罰を受けていただきましょうか」
「な、何をするつもりですの?」
「ふふふっ、それはこれからわかりますよ」
そして、アメリアが指をパチンと鳴らすとマーシア達三人の足元に魔法陣が出現する。次の瞬間、マーシア達三人の意識は闇に落ちるのだった。
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