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アマリーラさん達と合流
しおりを挟むボスワイバーン達に指示を出して、速度を半分以下くらいにまで落とした。
……ただ、二体程気持ち良く飛んでいたためか、ボスワイバーンの声を聞き届けられずにそのままの速度で飛んで、エルサの横を通過。
少し先に行ったところで突出している事に気付いて、慌てて反転して戻って行く。
結構、お茶目なところがあるんだな……慌てている時の様子とか、ちょっと面白かった。
まぁ後ろの編隊に戻って再度加わった後、ボスワイバーンに怒られているんだけどね。
魔物にも、それぞれ個性とか考えとか、そういったものがあるのかも……このワイバーン達が特殊な可能性もあるけど。
「リク様ー! リク様ー!」
しばらくすると、こちらに向かうワイバーンとその背中に乗るアマリーラさん達の姿がはっきりと確認できるようになった。
ずっとこちらに向かって手を振り続けているアマリーラさん……馬と違って、手綱が必要ないから両手を触れるんだろうけど、空の上って事を考えるとちょっと危なっかしい。
すぐ後ろでリネルトさんが支えているようだから、大丈夫か。
「アマリーラさーん! リネルトさんもー!」
向こうからの声がはっきり聞こえるようになったくらいで、こちらからも手を振り返して呼びかける。
「止まるのだわー」
エルサの声で、移動を止めて空中で静止。
後ろのボスワイバーン達も、エルサに合わせて静止してくれた……今度は、止まれずに突出するワイバーンはいなかった、ボスワイバーンのお叱りが効いたのかもしれない。
アマリーラさん達の方も、速度を落としてゆっくりとこちらに近付き、エルサの前に来た辺りで静止した。
「アマリーラさん、わざわざどうしたんですか? 何か、街の方でありましたか?」
「いえ、こちらは特に問題ありません! 予定通り進めています。街の方からエルサ様が見えましたので……」
アマリーラさん達は、遠くから俺達が見えたから様子見に来てくれたらしい。
警戒しているわけじゃないだろうけど、大量のワイバーンを引き連れていたら気になるのも当然か。
その様子を見に来たアマリーラさん達も、ワイバーンに乗っているという事はともかくとして。
「アマリーラ様、嬉しそうに尻尾を振ってますねぇ……」
「こらリネルト! 余計な事を言うな!」
「ははは……」
「……はぁ、もう慣れたわ」
後ろに乗っているリネルトさんが、左右に振られているアマリーラさんの尻尾を手で追いかけながら、楽しそうに言っている。
それをアマリーラさんが咎めるように注意して……俺はとりあえず苦笑。
なんとなく、隣にいるモニカさんの視線が気になったからね。
そのモニカさんは、すぐに溜め息を吐いていたけど。
「と、とにかく、アマリーラさん。ワイバーンの方はどうですか? ちゃんと役に立っていますか?」
「もちろんです。このワイバーンのおかげで、空から広く見渡す事ができて助かっています! 後始末をしている南門周辺だけでなく、現在も戦闘が続いている東側の上空を偵察する事もできますから」
「それに、このワイバーンに何か頼むと喜んでいるようなんですよー。頼まれるのが好きなんですかねー?」
「成る程……頼まれるのが好きかどうかは、まぁワイバーンの個性というかそれぞれだとは思いますけど、役に立っているのなら良かったです」
地上や外壁からとは違って、移動しつつ空から広く見渡す事ができる分、片付けなどの指示が捗るんだろう。
それ以外にも、東側の偵察もか……確かに、今回の魔物達には空を飛べる魔物はワイバーン以外にいないから、それもありなのかもしれない。
エルサに乗っている時も、空を見上げて俺達を発見している魔物はいたけど、何もできないようだったし……まぁ、正面衝突している状態だから、そこまで重要な情報を得られる事はないのかもしれないけど。
でも、魔物達の全体を把握できるし、知らないよりは知っている方がいいだろう。
空からの輸送ばかり考えていたけど、そういう活用法もあるんだな……。
あとは、偵察からの強襲とか……まぁ、これは今考える事じゃないか。
「それでリク様、後ろにいるワイバーン達が……何やら、数が多いような気がしますが?」
「あぁ、周辺に散らばっていたワイバーン達も、集まっていたみたいです。全部、人間を襲わないように言ってあるので、誰かが近付いても大丈夫ですよ。これから、センテ北側に連れて行くつもりで……シュットラウルさんからの許可はもらっています」
「はい、聞いております。聞いていた話より数が多かったので、少々驚きましたが……それくらいなら大丈夫でしょう。街北の収容には余裕があります……兵士の数も最初よりは減りましたから」
「まぁ、そうですよね……」
元々ある程度の余裕はあったのかもしれないけど、俺が戻って来るまでの間に多少なりとも戦闘に参加した人に犠牲者は出ている。
だから今は戦闘開始直後よりも、北側での収容数に余裕が増したって事なんだろう。
まぁ、ワイバーンは補充の兵士さんと言うわけではないけど……というか、兵士を補充っていう考えもあまりしたくないな、使い捨ての道具みたいだし。
今は魔物だけど、戦争ともなればそういう事も言ってはいられないかもしれないけどね。
とにかく、三十体くらいのワイバーンが待機できる余裕があるのなら、あぶれるのがいなくて助かる。
食料的にも問題なさそうだし、順調だね。
「あ、そうだ。まだワイバーンの素材は回収されていませんけど……」
「それは、これからになります。申し訳ありせん、すぐに回収隊を送ろうとしていたのですが、門周辺を固めるのが優先されて……」
「いやそれは仕方ないですよ。全ての魔物がいなくなったわけじゃないですし、ほとんどいなくなったと言っても、門の周辺を固めて守りを強固にするのは当然です。そうじゃなくて……」
まずは街の近くから……地盤固めというか堅実に守りを固めるには、離れた場所の素材回収よりも優先されるのは当然の事だからね。
「一度街北に行って、ワイバーン達を受け入れてもらってからになるんですけど……その後、数はまだ決めていませんけど、何体かのワイバーンをアマリーラさんの所に向かわせてもいいですか?」
「それは構いませんが……リク様が仰るのであれば、このワイバーンのように言う事を聞いてくれるのでしょうから」
そう言って、ワイバーンの首辺りを撫でるアマリーラさん。
ワイバーンの方も嬉しそうだし、結構仲良くなっているようだ。
この分なら、別のワイバーンを向かわせても大丈夫そうだね。
「ワイバーンの素材、というか倒した後の遺骸が結構多いので、その回収に使えればと考えました。まぁ、南門周辺が優先されるなら、そちらで使っても構いません」
「それは助かりますが……ですが、ワイバーンを使ってワイバーンの素材回収というのは……同族をとなりますが……?」
アマリーラさんが気にしているのは、同族の遺骸を見る事でワイバーン達が人間を憎んだりとかそういう事だろうと思う。
けど、ボスワイバーンに聞いたけど特にそういった事は気にしないらしいし、他のワイバーン達もそうらしい。
あと、さっき出発前に聞いたんだけど、素材を回収するとなってもただ物を運ぶだけの感覚だから、同じワイバーンとかは別に気にしない……という事だった。
考え方の違いなのかもしれないけど、ドライというかなんというかだ――。
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