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戦闘開始直前の最終確認
しおりを挟む「昨日話した通り、リク殿にはまず北側のヒュドラーに向かってもらう」
「はい」
「マックス殿には、魔法鎧を率いて真ん中。ユノ殿とロジーナ殿には南にいるヒュドラーだな」
やる事は基本的に変わらない、俺もマックスさんも、シュットラウルさんからの確認に頷く。
昨日話した通り、俺が北にいるヒュドラーを倒し次第南下して、マックスさんやユノ達が足止めしているヒュドラーを倒すって手筈だ。
真ん中のヒュドラーにマックスさん達を配置したのは、俺から近い場所という意味もあったけど、中央が一番後方の兵士さん達から援護が望めるためでもある。
「しかし……」
「どうかしましたか?」
「いや、どうやらヒュドラーの前に、キマイラやオルトス、ガルグイユなど、複数の魔物が少数ながらいるようだ。中央からは、エルサ様の魔法で矢などの強化をし、蹴散らす事もできるだろうが……」
「北と南では、その援護を向ける事ができませんね……」
悩むように口元へ手を当てたシュットラウルさん。
どうやら、今現在ヒュドラーが一番先頭というわけではなくなっており、他の魔物がいるようだ。
エルサの魔法で強化された矢などの遠距離攻撃……ロジーナ命名、俺の作ったミスリルの矢で中央はなんとか蹴散らして、マックスさん達がヒュドラーに対するための露払いはできるだろう。
けどさすがに、ヒュドラーの位置が離れ過ぎているので全てに対して援護をする事はできない。
ヒュドラーがどれだけの強さか、はっきりしていない部分もあるので無駄な戦闘はしないに越した事はないけど……まぁ、大丈夫だと思う。
よっぽどの事がない限り俺の魔力が不足する事はないだろうし、ユノ達ならキマイラくらい簡単に倒してくれるはずだ。
「さすがに、南のユノ達には邪魔しようとする魔物に対する牽制くらいは、あった方がいいかもしれませんけど……俺もユノ達も、問題ありません」
「……リク殿なら、どうにでもするだろうとは思うが……大丈夫なのか?」
「キマイラなら、何度か戦った事がありますから。それはユノもそうですけど……ユノは、キマイラを遊び相手くらいな感覚ですから」
「キマイラなどのAランクと言われる魔物は、それだけで備えがなければ街が半壊……場合によっては壊滅するくらいの脅威があるんだがな……」
そういえば、ここにいる人達はルジナウムや冒険者ギルドの依頼で、キマイラと戦った時の事を知らないんだった。
俺はまぁ、ルジナウムでの戦いが伝わっているからあまり心配されていないだろうけど、ユノに関してはほとんど伝わっていないんだよね。
他の事で実力を示し続けているから、信頼はされているんだろうけど。
さすがにキマイラすら余裕で倒せるとまでは、あまり考えていなかったようだ。
マックスさんは苦笑気味に、それ以外の……シュットラウルさんとマルクスさん以外の人達が驚いていた。
ベリエスさんも驚いているね。
まぁ、直接ユノがAランク相当の魔物を倒す場面を見ていなければ、そうは思えないのかもしれないけど。
センテでの戦いでは、強くでもCランク相当の魔物を蹴散らしていたくらいだから。
「リク殿の言葉を信じれば、問題はないな」
「はい、問題ありません」
頷き合う、シュットラウルさんとマルクスさん。
ベリエスさんと連れている冒険者さん達は、ちょっとついて来れていないみたいだけど……まぁいいか。
今ユノやロジーナがどれだけ強いのか、なんて話している暇はないし。
「では、当初の予定通りリク殿、魔法鎧隊、そしてユノ殿とロジーナ殿に、ヒュドラーを任せる。もちろん、こちらからは折を見ての援護を忘れるな」
「はっ!」
「は、はい!」
シュットラウルさんの言葉に、マルクスさん、ベリエスさんが返答をし、俺を含めた他の人達も頷いてこれからの動きの確認に移る。
俺の援護というか、ヒュドラーとの戦闘中に邪魔をしそうな魔物に対しては、マリーさんやモニカさん達。
それからその後ろに展開する侯爵軍が、俺やヒュドラーから離れて進撃してきた魔物や、多少なりとも引き付けるなどの援護を引き受ける。
俺がヒュドラーを倒してからが、本格的な衝突と戦闘の予定だ。
南のユノに対しては、冒険者軍が主な援護の役割。
こちらは、自由に動くユノやロジーナを援護するのに、統率された軍隊よりも各々の判断で動く冒険者が適しているだろうと考えたからだ。
だから、冒険者軍は南、侯爵軍は北の配置になったんだけど。
ユノは特にセンテでの戦闘で、他の冒険者さんとも一緒に戦って来ているから、お互いの動きも多少はわかるだろうとの配慮だ。
こちらも、ヒュドラーを倒した後は北側の侯爵軍と大まかな動きは変わらない。
そして中央は、王軍とエルサの遠距離攻撃によって広範囲に魔物達を削り取りつつ、マックスさん達の援護。
ここにはフィリーナも入ってくれるようなので、アルセイス様の祝福と言われる目で状況判断なども期待される。
中央はヒュドラーがいなくなったとしても、突撃して全面的に衝突する事はせず、遠距離からの削り作業と広範囲に援護の役目、さらに突破されたら街への直接被害が出るため慎重に行動する役目だ。
カイツさんによって強化した盾は、北と南にも配置されるけど中央が一番多い予定。
こちらからの攻撃を掻い潜って来た魔物を押しとどめる役目があるからね。
その他、ワイバーンは一番手薄とされる南に多く、北にも数体配置される。
貸し出している状態のワイバーンは、このまま空からの監視、偵察をして随時情報や魔物の動きなどに注視しする役目だ。
ただし、アマリーラさんとリネルトさんだけは、その戦闘力を偵察のみにするのはもったいないため、臨機応変に戦闘に参加する事になっている。
空から状況を見定めて状況を判断、押されている部分などに空から強襲をかける遊撃部隊ってわけだね。
ただし、アマリーラさんに任せるとそのまま自分の危険を顧みず、突撃する可能性があるのでリネルトさんに判断権を委ねてある……一時的な立場交代だ。
アマリーラさんとリネルトさんは、常に二人一組で行動する事をシュットラウルさんから命令したうえで、俺からもお願いとして言ってある。
シュットラウルさんの部下のはずなのに、命令よりも俺からのお願いの方が、重く受け止められる反応だったのはもう今更か。
……シュットラウルさん、ちょっとだけ落ち込んでいたけど。
ボスワイバーンは南にいるユノ達の近くで、ワイバーン全体の指示やユノ達の援護も一応任せてある。
ワイバーン達に作戦行動ができるのかと、少し疑問だったけど……昨日話をした時に、十体以上がボスワイバーンの号令で空を飛び、上空で編隊を組むような動きを見せたりしていたから、大丈夫だと思う。
ちなみに兵士さん達にはすごく受けが良かった。
陣幕内での確認などの会議が終わった後、もう一度ワイバーン達に無理をし過ぎないように伝えて東門を出る。
他の皆も、配置に向かった……いよいよだ。
被害を出さないように……というのは無理な規模なのはわかっているけど、できる限り多くの被害が出ないようにしなければ――。
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