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リクに対する違和感
しおりを挟む「そういえばそんな事を言っていたわね……じゃあ、リクさんはその閉じ込められたのと同じ事をしたってわけ?」
「厳密に言えば違うのだわ。けど似たようなものと思っておけばいいのだわ」
確か、破壊神がリクさんを魔物と戦わないよう、隔離したっていうのくらいは聞いているわ。
リクさんが隔離……隔離結界……?
「成る程、だから隔離結界なのね?」
「いや、それは偶然なんだけどね。最初からそうしようと思ったわけじゃなくて……ただ魔物を殲滅する間、被害が及ばないようにしようってのが、最初に考えた事だから。本当に空間ごと隔離できるとは思わなかったし」
「それで気付いたら隔離されていた私達にとっては、いい迷惑なのだわ。でも、そうでもしなければ危なかったのは間違いないのだわ……他に魔物を殲滅する方法もあったと思うけどだわ」
空間がずれるとかよくわからないけど、破壊神に隔離された事から隔離結界をリクさんが考えた……と思ったんだけど、違ったようね。
ちょっとだけわかったような気になった自分が恥ずかしかったけど、リクさんもエルサちゃんも気にしていないようだから、このまま触れずにいようと思ったわ。
「まぁ、やろうと思えばできなくはないと思うよ。皆も協力してくれていたし、ヒュドラーやレムレースももういなくなっていたからね。でも、それじゃ被害が出過ぎるし日数もかかってしまう。もうあれこれ別の事に理由を付けて、加減をするのはやめようかなってね。だから一気に魔物を殲滅する方法を考えたんだ」
「加減……確かにリクなら、迂遠なやり方をしなくてもある程度はなんとかできたと思うのだわ。けどそれでも、自分の力で全てなんとかするのではなくて、協力してもらって解決しようと考えるのがリクなのだわ」
「そうだね。俺一人の力で全てを解決しても、皆のためにならないし……というか、人的被害はなくても、地形が変わったり別の影響が色濃く残っちゃうだろうからね。加減とか以前に、俺がやるなら力任せな事が多いし」
なんだろう、確かにリクさんが全力で事に当たれば私達の協力なんてなくても、今回のセンテへの魔物だって全て何とかできたのかもしれない。
いえ、本当になんとかしてしまっているんだけど。
ヘルサルでの防衛線から、魔物を倒した後の影響とかを考えて加減をしているのは近くで見ていてわかっていたし、ルジナウムでもそうして加減をしてやり過ぎないようにしていたから、無理をする事になって倒れてしまったんだと思うわ。
けどどうしてだろう……さっきからエルサちゃんに話しているリクさんの言葉、それがどうしても納得できない。
言っている事はもっともだと思うし、事実でもあるから理解はできるんだけど。
どうしてかすんなり心に入り込まないというか、単純に言い訳をしているようにしか聞こえない。
リクさんらしくない、と言えばいいのかしら? 皆と協力する時のリクさんは頼もしくて、真剣な表情はりりしさを感じて熱を感じる事も多いのだけど。
でも今は、どこか諦めているような別の感情や他の理由に押し付けているような……熱は一切なく、冷たさすら感じるわ。
「エルサちゃん……」
「……何か変なのだわ。いつものリクらしくないのだわ」
私の考が伝わったというよりも、同じ事を考えていたのね。
手に乗っているエルサちゃんに、小さく呼びかけると首を傾げてしっくりこない、といった様子だわ。
「でも詳しい事は、落ち着いてから話した方がいいのだわ。今はゆっくり話している場合でもないのだわ」
「そうね、そうよね……皆が絡め捕られているようだし」
かぶりを振って、とにかく現状をどうにかした方がいいと言うエルサちゃん。
確かに後でじっくり話した方がいいわね……ユノちゃん達が絡め捕られているようだし、ロジーナちゃんの言う通りなら、力を吸い取られ始めているはず。
ゆっくりしていたら、リクさんどころか皆も危険ね。
「と、とにかく、リクさん。今はここから出てセンテに戻りましょう? 皆も、頑張ってここまで来てくれているの。魔物もいないのだから、ここでこうしている意味もないわ」
疑問や違和感などはとりあえず心の中にしまっておき、一先ずリクさんを連れて脱出するよう提案したわ。
しかしリクさんは、私にキョトンとした表情を向ける。
「どうして? 魔物はまだまだいるんだ。ここだけじゃない……この国には他にも魔物がいるでしょ? それこそ、他の国にも……そもそも、魔物をけしかけてきた国もあるわけだし、もういっそ全部片づけた方がいいと思うんだよね」
「リ、リクさん?」
「全ての魔物を殲滅しようとしているのだわ!?」
不思議そうに、けどリクさんの口から出た言葉は無感情で、ひたすら冷たく、予想外の言葉だった。
確かに魔物は他にもいるし、センテ周辺はいなくなったとしても放っておけば、多少なりとも魔物が発生すると思う。
それこそ、別の場所から移動して来る魔物もいるだろうし……。
「魔物がいるから、今回の事が起きた。そしてその魔物を使う人もいる。だからここでこうして、準備をしているんだよ。一気に全ての魔物を倒すためにね」
「そんな事、できるのだわ? それに、ここで準備って何をしているのだわ?」
「簡単だよ。今俺達を囲んでいる物の特性……まぁ、絡め捕った相手の力を吸い取るんだけどね。これを、世界に広げればそれでいい。魔物を捕まえて、力を吸い取ってくれる。どれだけ力があっても、抜け出せなければいずれ力を全て吸い取れるからね」
「それは……」
私はまだ捕まっていないからわからないけど、周囲を覆い尽くす植物にはリクさんだけでなくロジーナちゃんも言っていたように、力を吸い取る特性を持っている、らしいわ。
どうやるのかはわからないけれど、ここに到達するまでの事を考えると、一度捕まったら自力では抜け出せないようだし……あのロジーナちゃんも、私達が助ける必要があったくらいだから。
リクさんの言う通り、この植物が広がれば魔物を絡め捕り、力を吸い取って全てを殲滅できるのかもしれないわね……。
そこまで考えて、ふと気付いたわ。
リクさんは魔物をって言っているけど、ここに来るまで私達には無差別に茎が迫っていた。
リーバーなどのワイバーンは魔物で間違いないし、ロジーナちゃんはちょっと特殊だとしても……アマリーラさんやリネルトさんのような獣人や、フィネさんや私のような人間にも伸びて絡め捕ろうとしていた。
実際、私以外の皆は絡め捕られているはずで……。
間違いなく魔物であるワイバーン乗っていたから、巻き沿いでとも考えられるけど、私に真っ直ぐ向かって伸びてきた茎もあったわ。
「……リクさんは魔物をって言っているけど、その区別はできないんじゃない?」
「うーん、そこが困りものでね。力がある……つまり魔力をもっている生き物に対して、力を吸い取るために伸びていくみたいなんだ。まぁどうしようもないし、それに魔物をけしかけて来るのもいるわけで。だから全部いっぺんに巻き込んでもいいかなって」
なんて事ないように言うリクさん、それに対してエルサちゃんは――。
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