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本当の最高位ランク

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「まぁ、そうかもしれませんけどね。でも率いるとなると、やっぱり色々考えちゃって。すみません、こんな話を」
「いえ、リク様がお優しい人だという事は知っていますので。その片鱗が垣間見えたと考えています」
「ははは……」

 フィネさんに謝ると、気にしていないというように首を振ってくれた。
 俺の事を優しいと言ってくれるのは嬉しいけど、本当に優しい人はもっと違う決断をするんじゃないかと思ったり。

「失礼します、リク様が来られました」

 ともあれ、フィネさんの言葉に苦笑している間にヤンさんがいる部屋に到着。
 案内してくれた人について中に入ると、そこではベリエスさんとヤンさんが顔を突き合わせて何やら話している最中だった。
 取り込み中だったかな?

「おぉ、リク様。わざわざお越し下さってありがとうございます」

 俺達が入ってきた事に気付いて、ベリエスさんが笑みで迎えてくれる。
 ヤンさんは会釈してくれているから、俺も会釈を返しておく。

「いえ……何やら話し込んでいましたけど、お邪魔でしたか?」

 深刻、というわけじゃないけど真面目に話していたから、もしかしたらタイミングが悪かったかもしれない。

「あぁいえ、そのような事は。ただ他の冒険者ギルドへの報告を、どうするかと話し合っていただ毛ですので」

 それって、結構重要な話なんじゃ?
 ベリエスさんもヤンさんも、特に問題ないという風だけど。

「まぁヒュドラーやレムレースに関する事が、どうしても多くなってしまうので……どう報告したものか、頭を悩まされますが。大体は、リク様が解決して下さった。という一言を添えれば問題ありませんから」
「え……」

 椅子に座るよう促され、フィネさんと一緒にそれぞれ座りながら言われたベリエスさんの言葉に、一瞬だけ体が硬直してしまった。
 何その、全て俺がいればどんな理不尽も些細な事、のような報告の仕方は。
 俺が解決したにしても、他の人の協力とか他にも色々と報告する事があるだろうに。

「はは……まぁほんの少しだけ冗談も入っていますが、リク様がというのは現在この国の冒険者ギルドでは通用してしまうのですよ」
「リク殿の活躍は、アテトリア王国内の冒険者ギルドに轟いていますからね。直接関わった事のないギルド支部でも、リク様の勇名はよく知るところとなっております」
「そ、そうなんですか……」

 センテでの出来事はまだだろうけど、ヘルサル防衛戦から色々とやったからなんだろう。
 多くの街に行って、それぞれの冒険者ギルドに行った……とかではないけど、支部同士やマティルデさんのいる中央で統括されて、俺に関する情報が行き渡っているという事かな。

「あとはその……リク様の冒険者ランクに関してですな」
「俺のランクですか?」

 今Aランクの俺だけど、そこに何か問題があるんだろうか?

「リク殿は現在Aランクですが、今回の……以前からでもありますが、特にヒュドラーやレムレースの討伐を成し遂げた事を考えると、ランク評価が不足しているのです」
「ヒュドラーは、Aランクが束になっても容易に討伐できる魔物ではありませんからな。実際に間近で、いえ遠目でしたが、見る限り数百数千の冒険者や兵士を必要とする、伝説の魔物と言われる所以がよくわかりました」
「ま、まぁそうですね」

 首の数というか個体差にとっての違いはあったみたいだけど……どの首から放出される魔法も、強力な物だった。
 首一つで、キマイラなどのようなAランクの魔物よりも、脅威度としては高いだろう。
 それこそ、魔法を使わなくてもあの巨体に再生能力だ、ただ目の前にいる何かを踏み潰す、というだけでもAランクとは比べ物にならない。
 魔物の脅威度を示すランクとしては、AランクとSランクは一つ違いになっているけど、まさに別格と言ったところか。

「それに加えて、レムレースまで討伐されております。しかもほとんど単独でですからな」
「Aランクの冒険者、としているにはギルドのランクに関する信頼が揺らぎかねません。Aランクであれば誰しも、それらができると考える者も出てくる可能性すらあります」
「リク様を見知っていれば、そのような考え……冒険者としてのランクは、あまり関係ないと思えるのですがね」

 ベリエスさんとヤンさんが交互に説明してくれる。
 成る程、つまりSランクの魔物であるヒュドラーに加えて、討伐不可とすら言われているレムレースを倒した事でランク方が不足していると思われてしまうわけか。
 でも、Aランクで不足であるのなら、最高位のSランクだったらって事になるのかな?

「とはいえ、俺はAランクになってあまり経っていないですし……Sランクに昇格というのはどうなんでしょう?」

 話の流れでそうなる気がして、暗にこのままでも気にしない、という感じで口にしたのだけど。
 ヤンさんとベリエスさんの考えている事は違ったようだ。

「これだけの活躍、そして戦功を上げて、さらに多くの者達が目にしております。そんなリク様を、Sランクというだけではまだまだ足りないでしょう」
「ヒュドラーを複数単独討伐、レムレースもと考えれば……最高位のランクが相応しいのではないかと、ベリエスさんと話していたんですよ」
「え……? 最高位って、Sランクですよね? それ以上はないんじゃ……」

 以前聞いた話でも、冒険者ランクとしての最高位はSランク。
 最下位というか、冒険者になった新人さんがスタートするのがFランク。
 俺やモニカさんといった、一部の例外は除いて大体はFランクから始まるのが冒険者だ。
 FからA、そしてSランクで合計七つのランクに分けられる……と、初めて冒険者ギルドに行った時に教えられたし、マックスさん達からの話しでもそうだった。

「一般的にはそうなっております。FからSランク。全七ランクと。ただ、そのランクに収まらないような功績を上げた冒険者には、さらに上のランクが用意されているのです」
「もっとも、ベリエスさんが言っているさらに上のランク……SSランクとSSSランクの二つがあるのですが……冒険者ギルドのランクシステムが始まって以来、一人がSSランクになったという歴史しかありませんが」
「そんなランクが……SSSランクはこれまでいないんですか?」

 Sランク自体が、この国だけでなく他国も含めた冒険者の中で、二桁に達しない程度しかいない……とどこかで聞いた覚えがある。
 さらにその上なんだから、SSランクがこれまで一人しかいないというのは納得できるし、だからこそそこに到達できる人が少ないためにSランクまでしか説明されないんだろう。
 でも、SSランクより上のSSSランク、誰もなった事がないのに用意されているのはどういう事なのか。

「Sランク相当では不足と思われる冒険者は、歴代で一人だけ。その方がもし、さらにそれでも足りないようになれば……と考えて用意されていましたが、結局そう判断される事はありませんでした」
「特に何があったわけではないのですが、単純に衰えを感じて引退された……と伝わっています。もう随分前の事で、記録が残っているだけですからはっきりした事はわかりませんが。私やベリエスさんが生まれるよりもさらにずっと前の事ですからね」
「成る程……」

 ヤンさん達が生まれるよりも前……下手したら百年そこらは前の事かもしれないのか――。


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