テリオス・フィリア

幻田与夢

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PHASE5 サナ・インカミング

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「・・・休暇?」
「うん、エルガー大佐の計らいでさ、僕達若い人たちにね」
「きゅ、急ですね・・・」
突然の連絡に戸惑う一同。デンジがその場を代表して、疑問をイヴァンにぶつけた。
「何故自分達が?」
「ああ、それはね。僕達本来なら学生の年齢だろ?非番の時まで戦争の話持ち込むことはない、学生なら学生らしいことでもしたらどうだ、って」
「そうか、学生か・・・」
戦地に身を置いている彼らには、学生という事実を忘れかけていた。それはゴーシュも同様だった。
(休暇か・・・。何をすればいいんだろうか?)
「というわけで、今日一日くらいゆっくりと羽を伸ばしてくれ」
イヴァンは後ろ向きざまに手を上げ、その場から立ち去って行った。取り残されたゴーシュ達はざわめきだした。
「羽を伸ばせ、っていわれてもなぁー、皆どうするよ?」
ハルスが皆に予定を聞くと、突然の休暇ということもあり揃いも揃って悩みだす。すると、シエルがか細い声を上げ、申し訳なく手を挙げる。
「あ、あの・・・」
その声を聞いて、一斉に彼女の方に視線が集まった。彼女はたくさんの視線にたじろいだ。
「ひうぅ!・・・わ、私は皆さんとお出かけでもしたいなぁ、なんて・・・」
「・・・お出かけ?何で?」
ゴーシュが無愛想に理由を訊ねた。
「せ、折角の休みなんですから、ここから動かないのも・・・も、もったいないというか・・・その・・・すみません」
「何で謝ってるの?」
矢継ぎ早に問い詰めるゴーシュに、シエルは狼狽えていたところ、ハルスが助け舟を出した。
「おい、ゴーシュ。シエルが困ってんぞ」
「え・・・、なんか、ごめん、シエルさん」
「い、いえ・・・」
そんな些細な会話を横に、デンジが顎に手を当て、
「・・・いいんじゃないか、お出かけ」
とシエルの提案に賛成し始めた。彼が賛成するとは思ってもなかったのか、全員が驚いており、それは提案者であるシエルすらもだった。すると、デンジが少し不服そうにこう言った。
「・・・そんなに意外か?もっとΛ小隊としてもチームワークを強化すべきだと思ったんだが」
「ああ、そういう事かい。いつものお前で安心したよ。まあ、俺もデンジに賛成だわ。チームワークとか云々は置いといても、皆ともっとなかよくなりたいしさ、特に女の子とか」
そう言うと、ハルスはシエルの方に顔を向けたが、シエルは咄嗟に目線を逸らした。
「はあ、ノヴァリスちゃんも来ないかねぇ」
「それは、ノヴァリスさんに聞いてみないと分からないね。僕聞きに行ってくる」
そう言うと、ゴーシュは駆け足でノヴァリスを探しに行ってしまった。
「あいつ、ノヴァリスちゃんのこととなると、いつもああだな。まあ、あいつも行くってことでいいんだよな?んじゃ、街にでも繰り出そうぜ、シエル」
「は、はい、ありがとう、ハルス君」
「俺も準備が整い次第向かう。二人は先に行ってくれて構わない。シエル、後で連絡をくれ」
「わ、わかりました。ゴーシュ君にも後で私が連絡しておきますね」

・・・・・・・・・・・・・・・
「さて、どこにいるかな」
キヴォトス極東支部は、聖ピレイン学園の近くに位置している。避難民もそこで保護されている。デンジは避難民の生活区画へと訪れると、周りを見渡す。彼は目的の人物を見つけ、ゆっくりと近づいていった。
「ここにいたのか・・・サナ」
「デンジ、私に何か用?」
サナはデンジの方をじーっと見つめている。デンジはそれに少し気恥ずかしさを感じつつ、要件を彼女に伝えた。
「お出かけ?」
「ああ、サナさえよければ、どうだ?」
「外、出ても大丈夫?」
「そのはずだ。まあ、俺達の知っているものとは違うと思うが・・・」
サナはデンジの誘いを少し唸りながら、考えてくれていた。デンジはそんなサナの姿をただただ静かに眺めている。そして、そんなサナの返答は・・・
「いや、私はやめておく。今日は両親と一緒に過ごすことになっているから。ごめん、デンジ」
と、サナは歯に衣着せぬ物言いで、デンジの誘いを断った。あまりにもはっきりと断られてしまったデンジは、分かりやすく残念がっていた。サナはすでにデンジに目を向けておらず、手作業をし始めた。
「そ、そうか、残念だ。久しぶりに三人の時間でも持てるとも思ったんだが・・・」
その発言を聞いて、サナは作業を一時中断し、振り向かずにデンジに質問した。
「・・・・・・三人?」
「・・・ああ、俺とサナとゴーシュだ。後、俺の同僚合わせて、多分五人くら」
「私も行く」
「・・・・・・は?」
サナは人が変わった様に、デンジの話に食いついた。
「場所はどこ?今から準備する」
「お、おい、両親と過ごすんじゃなかったのか?」
「そうだった。お父さん、お母さーん」
サナは両親の元へと駆けていき、すぐに戻ってきた。
「親とは話をつけてきた。これで大丈夫。行こう、デンジ」
「あ、おい!」
デンジはサナに強引に手を引かれていった。
(・・・そういえば昔からこんな感じだったか、サナは・・・)

・・・・・・・・・・・・・

@ キヴォトス 科学ラボ

キヴォトスの科学ラボ。主に科学班が入り浸っており、ここでは敵であるヘレネスの研究を進めているところでもある。仕事というのも、倒したヘレネスの残骸を鹵獲、回収しヘレネスの性質、特徴等を調査している。
「ふむ、とても興味深いネ」
長い白衣を纏った男がヘレネスの残骸を前で、ニヤニヤしている。顎に手を当て、ブツブツと独り言を呟いていると、ラボのドアが開き一人の女性が入ってきた。
「進捗どうですか?ヤンくん」
「エルガー大佐ですカ」
ヤン・シンフー。キヴォトス極東支部司令補佐であり、科学班の監督役をも務める東洋出身の青年。マルチな才能を持つ彼を天才と称する人もいれば、奇人と揶揄する人もいる。まさに天才と狂気は紙一重とは言ったものである。
「見てくださいヨ、これ。回収班が頑張ってサルベージしてくれましタ」
シンフーの示す方には、その面影はほとんど失われていたが、《カシオペア》の残骸がそこにはあった。
「これが例にあった新型ヘレネスですか。近くで見ると他のヘレネスと違って、何か神々しさを感じますね」
「一応、私達は”エンジェル”って呼称してマス」
「”エンジェル”・・・」
エルガーは《カシオペア》の周りを、後ろ手を組んで観察をしている。彼女が一通り観察し終わったのが分かると、シンフーは解説をは再開し始めた。
「装甲は私達人類のものとは比べ物にならないくらい頑丈ですネ。まるで、オリハルコンで出来てるみたいですヨ・・・見たことないですケド」
「オリハルコンって・・・、ヤン君は結構空想家なんですね」
「冗談に決まってる・・・って、言いたいところですけど、もしかしたらってこともあるかもですヨ、こんな奴が空から降ってくるようなご時世ですからネ」
シンフーは、《カシオペア》の残骸をコンコンと軽く叩いた。「それに・・・」と言って、エルガーの目と鼻の先まで近寄った。
「オモシロイ物も見つかったんデス」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本日は雲一つなく、風もあまり強くなく、好天に恵まれていた。ただ、ヘレネスにより破壊された建物も多く、前までの街や風景はほとんど失われていたため、先に出ていたデンジ以外の一同は素直にそうは思えなかった。
「いやぁ、本当にいい天気だ。こりゃ、絶好のお出かけ日和だな、なあ!」
ハルスは元気よく言葉をかけたが、全員が淡白な反応で返したためか、余計に街の静けさが際立った。流石のハルスもこの静寂には耐えられず、不満を爆発させてしまう。
「っ・・・だあぁーー!!もっと元気よく行こうぜ、お前ら!」
「す、すみません!私がお出かけしたいなんて言ったから・・・」
「い、いや、別にシエルを責めてる訳じゃないんだけど・・・」
シエルが目に涙を浮かべていたので、ハルスは慌てて彼女を慰めた。その様を見かねたノヴァリスは、ずっと閉じていた口を開いた。
「確かにハルスさんの言う通りかもしれませんね。こんな時だからこそ、元気に、ですね!」
ノヴァリスは脇を締め、両こぶしを顎の近くに置いた。彼女なりのファイティングポーズなのだろうか、と隣にいたゴーシュはそう思った。ゴーシュはそんな彼女と同調するかのように、ハルスとシエルに声をかけた。
「そうだよ、ハルスさん、シエルさん。折角休暇をもらったんだし、楽しまなきゃ損ですって」
「おまっ・・・俺が先に言ったのに、横取りしてんじゃねぇぞ、コラー!」
そう言うと、ハルスは笑いながら軽い関節技をゴーシュに極めていた。技を掛けられた当のゴーシュは、「痛いです、ハルスさん」と顔色を変えず、冷静に堪えていた。それを見ていたシエルは、思わず吹き出してしまった。
「す、すみません、おかしくてつい・・・」
他の三人がシエルの方へ意識を向けたので、彼女は笑うのを止め、一呼吸置いて元気な声と共に思いを吐き出した。
「・・・そう、ですよね。こんな時だから、ですね・・・!」
他の三人は少し元気になったシエルを見て、それぞれ笑顔を彼女にプレゼントした。落ち着きを取り戻し、安心した彼女は少しだけ具体的な提案をした。
「あ、あの、私皆で行きたいところがあるんです・・・!」
三人は行く当ても特になく彼女の意見に賛成したので、その提案を無碍にする理由もないので、
「よし、じゃあそこに行こうぜ!シエル、案内してくれい!」
と、ハルスが啖呵を切って、シエルに向けて親指を立てた。

・・・・・・・・・・・・・

「こ、ここです・・・」
シエルに連れられゴーシュ達が向かった場所は、町から少し外れたところにある公園だった。見たところヘレネスによる被害はなく、色彩豊かな花が見事にに咲き誇っている。
「ほへー、こんな場所あったんだ、いいところだねぇ」
「え、えへへ・・・、たまたま見つけたんです・・・」
目の前に広がる花畑を眺め、各々が感慨に耽っていた。そんな中、ゴーシュは一人懐かしみを覚えていた。
「・・・懐かしい。あんまり変わってないな」
ゴーシュは幼き頃、この公園を訪れており、他の三人ほどの感動はなかったが、在りし日の情景を心に思い浮かべていた。
(そういえば前来た時は、デンジとサナも一緒だったな・・・)
「すごい!すごいですよ!ゴーシュさん!」
ノヴァリスはゴーシュの腕を掴んで、ピョンピョンと跳ねている。ゴーシュはそんな彼女をじいっと見ていると、我に返ったのか彼女はゴーシュから手を放し、少し気恥ずかしそうにそっぽを向いた。

その時― 遠くから声がして二人組が駆け寄ってきた。デンジとサナだ。
「おいおい、今来たのかよ。皆待ちくたびれたぜ」
「すまない。ちょっと野暮用でな・・・」
「まあ、来たからいいけど・・・。ところで・・・」
ハルスはデンジとの会話も程々にして、彼の背後のサナを見つめる。
「後ろの女の子、お前の知り合い?」
「ああ、そうか。お前らには紹介してなかったか。彼女はサ」
「サナ。サナ・マミヤ」
デンジが紹介しようとしたところ、食い気味に名乗った。それはどこか冷たい印象を与えるほど淡白な挨拶だった。
「サナちゃんね、よろしく。俺ハルス・エマークスって言うんだけど・・・」
ハルスがサナに向けて長々と自己紹介、というよりは自己PRを始めた。しかし、サナの視線は彼には向いてはいない。彼女の視線はゴーシュとノヴァリスに向けられていた。ハルスの話が終わったのが分かると、その二人とシエルも近づいてきた。
「サナも来たんだね」
「うん。ゴーシュに会いに来た」
「え、僕に?」
淡々とストレートな思いをぶつけるサナ。ゴーシュも少し戸惑いを隠せないようだ。ノヴァリスはそんな二人のことが気になり、会話に参入してきた。
「ゴーシュさん、彼女は・・・」
「僕の友達というか幼馴染かな。サナ・マミヤっていう子」
「ああ、そうだったんですね。とても仲が良さそうに見えたもので」
「まあ、付き合い長いからね」
ゴーシュもノヴァリスにサナの事を簡単に紹介した。ただそれだけの会話なのに、サナには二人が仲睦まじそうに見え、凄まじい険相で二人をじーっと見つめていた。すると、そんな彼女が二人の前に身を乗り出す。
「あなた、誰?」
「初めましてですね。ノヴァリスと申します。どうぞよろしくお願いしますね、サナさん」
ノヴァリスはサナへと右手を差し出し、握手を求めているようだった。丁寧に返されたサナは、「よろしく」とそっけなく彼女の手を握った。
「うっし、皆来たみたいだし。これからどうする、シエル?」
「うーん、お昼ご飯を食べるには少し早いですし・・・」
「だよなぁ・・・・・・、おい、お前らはどう思」
ハルスがメンバーに意見を募ろうとした時には、二人以外の者はどこかへ消えてしまっていた。凩が空しく吹いている。
「い、いつの間に皆いなくなったんですか!?」
「俺らが悩んでいる間にかぁ?全く行動力のある奴らばかりだよ」
ハルスが皮肉を言っていると、シエルのメールの着信音が鳴った。シエルは少しビクッと驚いて、おそるおそるメールの確認をする。
「で、デンジ君からです。えーと・・・」
「シエル、俺にも見して。なになに、『悪い。ゴーシュ達がどこか行ってしまったから、探しに行っている。それまで二人で楽しんでもらっても構わない。見つかり次第連絡する』・・・」
メールから、彼らの詳細が少しでも把握できたので、二人は少し安心した。
「デンジ君がいてくれて助かりましたね・・・こ、これでゴーシュ君達の方は大丈夫そうですね」
「だと、いいんだがなぁ・・・」


「ちょっと、サナ。どこに連れてくのさ」
サナは無言のままゴーシュの手を引き、ずんずん進んでいく。ノヴァリスたちが見えなくなったところで、サナは立ち止まりゴーシュと目と目を合わせた。
「あの子は何?ゴーシュ」
「・・・ノヴァリスさんのこと?」
「そう・・・・・・」
短いフレーズをそれぞれ紡いでいく。
「ノヴァリスさんはノヴァリスさんでしょ」
「そういうことじゃなくて・・・、ゴーシュにとって、あの子はどういう存在?」
「どんな存在、か・・・」
ゴーシュはしばし虚空を見つめ、考えていた。
「彼女は本気でこの闘いと向き合っているんだよ。力が足りなくとも、それでも想いだけでもってね」
「それじゃあ、答えになってないよ・・・」
「ん、それもそうだね・・・・・・有り体に言えば、友達だよ、友達」
ゴーシュのありふれた回答に、サナはムッとなり彼を黙って見ていた。
その時、遠くから微かに声が聞こえ、振り向くとデンジとノヴァリスが息を切らしこちらへ向かってきていた。
「ハア・・・探したぞ。二人とも急にいなくなるなよ・・・」
「ひ、久しぶりにこんなに走りました・・・。今まで走る必要なんてなかったから・・・」
デンジは乱れた呼吸を整え周りを見渡すと、あることに気付いた。
「ここって、あの時の高台じゃないか?」
ノヴァリス以外の二人にはピンと来ていた。
「懐かしい、何も変わってない・・・」
「そういえば僕が二人に出会ったのって、ここだったね」
三人が懐かしんでいる中、ノヴァリスは一人蚊帳の外で、あたふたしていた。
「あ、あの!私もいますっ!三人の世界に入らないでくださーい!」

                                      ◯

「あいつら、戻ってくるまでどうする?」
シエルは急なイレギュラーにより、分かりやすく動揺している。
「ま、こっちはこっちで楽しもうぜ。折角のお出かけ、なんだからな」
「そ、そうですね」
花園に囲まれ笑顔を零すシエル。その姿を遠目に眺め、ハルスも自然と笑みを浮かべている。
(よかったな、シエル)
と、遠巻きに彼女を見つめていた。その時、突然彼女が悲鳴を上げた。その悲鳴を聞き、ハルスも彼女の元へ駆けつけた。
「シエル、どうした!」
「ひ、人が・・・倒れてます」
ハルスはシエルの指差す方を見た。綺麗な花園に不釣り合いな風貌で、その男は地面に突っ伏していた。ボソボソと何かを呟いて、得体の知れない不気味さを醸し出している。
「・・・どうやら息はあるみたいだな」
「あ、あの、あなたは何を・・・」
と、シエルが心配そうに声をかけ、彼の呟きに耳を傾けた。ぐぅーっと音が鳴った。その音を聞いた二人はどこか安堵を覚えた。
「なんだよ、腹減って倒れてたのかよ」
「で、でも、何か食べさせた方がいいんじゃ・・・」
「しょうがねぇ。俺なんか買ってくるわ。シエルはそいつのこと見てて」
ハルスは走って店を探しに行った。
「だ、大丈夫ですかぁ?待っててくださいね、今食べ物持ってきますから・・・」
恐る恐るシエルが安否を確かめようと、再び呼びかける。すると、薄らとだが男の言葉がはっきりと聞こえてきた。
「・・・に・・・るな」
「え、い、今何か言いましたか?」
「僕に触るな・・・!」
「きゃっ!!」
シエルはその男に突き飛ばされた。そこにタイミングよくハルスが戻ってきた。
「おーい、パンしかなかったけど大丈夫だよ・・な・・・」
一目見て状況を呑み込んだハルスは、その男に睨みを効かせる。
「おいおい、女に手をあげたのかよ。男の風上にも置けねぇやつだな」
お互いの眼光を光らせ、二人は膠着している。すると、気力が切れたのか、その男は再び倒れそうになった。そのところをシエルは体で受け止めた。
「だ、大丈夫ですか?お腹、空いてるんですよね?」
否定できないと言わんばかりの表情を浮かべ、視線を二人から逸らした。溜息をついてハルスが近づき、視線を合わせる。
「とりあえずこれ食えよ。今のお前に何かする気力もねぇだろうからな」
と、持っていた紙袋を男に差し出す。

                   ◯

「・・・で、お前何者?避難し損ねたのかい?」
パンを口いっぱいに頬張る男が一気に呑み込み、口を開いた。
「避難?何からだ?」
「はぁ?お前そんなことも知らないのか?」
「し、知らないものは知らないんだよ!僕を馬鹿にするな!」
「いや、してねぇよ、別に。命の恩人になんて口利いてんだよ、お前」
二人の男がバチバチと火花を散らしていたところに、シエルが仲裁に入り、ひとまずは収まった。
「ったく、この辺りはヘレネスからの被害が凄くてな、避難勧告が出されてんだよ。んで、ここに取り残されたお前はその避難民ってやつだ」
「・・・・・・ヘレネス?」
「もしやそれすらも分かんないのかよ。ヘレネスってのはな、簡単に言うと、人類の敵だ。そいつらのせいで俺らは迷惑被ってるわけよ」
「・・・なるほど?まあ、それくらい分かればいいか。それで僕はどこに行けばいいんだ?」
ハルスは彼の傲岸不遜な態度に非常にやきもきしながらも、丁寧に接した。
「まあ、いいや。付いて来いよ。案内してやる」
それだけ言うと、ハルスは二人を置いて歩き始めた。分からないことだらけで戸惑っている彼を見かねた、シエルが声をかけた。
「あ、あの・・・?」
「な、何だ・・・!」
「ひうっ!・・・お、お名前は何ていうんですか?私、シエル・ユーグっていいますっ・・・」
彼女が名乗ると、その少年も無愛想ではあるが名乗った。
「・・・・・・ゼナム・メガロフィアだ」
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