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世界大戦そして終戦
実験
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皇国と件の帝国の国境領域にいわゆる魔窟を中心とした魔物地帯があり、それが両国の交流と侵攻を止めていた。
今回の殲滅作戦で皮肉なことに、良くも悪くもそれらの制約を取っ払う形になってしまった。
したがってその地帯の領有が急務であった。
しかし、現地は極小ブラックホール爆弾(シュン曰く)が炸裂しただけあって、クレーターが生成されていた。
その極小な特異点は地中の洞窟内で発生したがためにまわりの岩盤が崩落し、クレーターといってもきれいな形ではなかった。
そのクレーターはのちにカルネアデス・クレーターと呼ばれることになるのだがそれはまた別の話だ。
(カルネアデスは当然、緊急避難という意味の『カルネアデスの板』からの引用である。)
皇国はこの地に軍隊を派遣するが、当然帝国側も黙ってることはない。
数万の大軍がクレーターの両側に陣取る形となった。
皇国側の総司令官は現皇帝の弟君、ドレル・レ・ラール公爵。
シュン(ネビラ)からすれば叔父上にあたる。
こんな事態になってしまったがゆえにシュンは認識阻害魔法をかけたまま、この軍事行動に参加していた。
身分は今のところ明かす気はない。
バカ皇女が何しに来たかとあざ笑われるだけだ。
もっとも禁呪・黒い深淵を使えばそんな空気など吹き飛ぶかもしれない。
しかし間近にあの魔法の作動プロセスを見て、自分には今のところ無理だと思ったのだ。
あれはまさに神の魔法だった。
自分がやったら制御できずにこの星を滅亡させてたのかもしれないと思ったのだ。
いや、この星どころか、この星系そのものを。
ぶっちゃけ、ビビったのだった。
真の意味でNOAの懸念を自覚したのだ。
覚醒してからというもの、貪欲に使える魔法を開発しようとしてきた。
それは劣等感で自分が大嫌いだったネビラの意思でもあったのだ。
それに地球時代の知識が加わったものだから、どうしても最強の殲滅魔法を作りたいという思いがあった。
そこで参考になったのは知ってる限りの宇宙論や理論物理学である。
相対性理論や量子力学、中二なら泣いて喜ぶシュレーディンガーの猫などだ。
それにテレビの宇宙関係の番組で見た、例えば超新星爆発モデルや中性子星衝突モデルのCGなども脳内でシミュレートした。
しかしそれらは結局、地上では使えないのだ。
敵だけならともかく、自分らすら危ない。
どう見ても星間戦争用の攻撃魔法だろう。
この世界の遠い未来なら必要かもしれないが、今、この時代にはいらない。
そういうわけでいくつか、現実的な攻撃や防御魔法を考え付いた。
深夜に起きだしたシュンは軍を抜け出し、空中に飛翔する。
敵前逃亡は死刑だがバレなきゃいいし、いざとなれば瞬間移動魔法で逃げる。
その前に皇女の権限ってのもあるが、それは使いたくはない。
1時間ほど飛翔したシュンは荒野に降り立つ。
ここなら遠慮なく開発できるってことである。
(・・・東京大空襲は民家を炎上させて上昇流を作り火災を拡大させた。とすると。)
シュンは小さな火を起こした。
それをいくつも作る。
(あとは風・・・か。)
普通は風の発生は温度差が関係していた。
これは普遍的なことだ。
地球での気象も木星や土星や天王星、海王星の気象も変わりない。
いわゆるホットジュピターでも理屈は一緒だ。
(よし)
脳内で一般的な大気循環モデルを作ったシュンはそれを魔法に当てはめていく。
空気が流れ始めた。
やがて小さな火が成長していった。
風も加わりやがて上昇流が生まれ、風の魔法を止めても火炎が消えないようになっていく。
この段階で必要なのは燃料・・・つまり火の魔法だけだ。
可燃物さえあれば、これも止めても大丈夫なような気がした。
火炎は竜巻にまで成長していた。
その時、背後から拍手が聞こえてきた。
「!!」
後ろを振り返ると・・・・。
そこに叔父貴が立っていた。
「・・・ドレル公爵殿下・・・・。」
「2人きりの時はよせよ。皇女殿下?」とどや顔でドレル公爵は言った。
「・・・!誰に聞かれましたか?」
シュンの問いに答えずドレルは言った。
「なるほど、ファイアーストーム、火炎旋風か。」
「・・・・。」シュンの警戒レベルが一気にMAXに跳ね上がった。
「よせよ。以前のヤム○ャ状態のお前ならともかく、覚醒したお前とはやりあいたくねえ。同郷だしな。いろんな意味で。」
顔色を変えたシュンを見て慌ててドレルは言う。
「・・・・まさかあなたも日本人なのですか。」
シュンは冷静に聞く。
「ああ、そうだよ。」あっさりと彼は認めた。
「叔父上、今までとキャラが違いすぎますね。」
「これが前世からの俺の地なんだよ。それにしても、面白いことやってるじゃねえか。」
「マイクロブラックホール生成魔法は開発中止しましたので。」
シュンは皇女の姿に戻った。
「ああ、やっぱりそういう物騒な魔法だったわけか。名前からやべえと思ったんだ。」
ドレルはうなずく。
「下手すりゃこの星・・・いや、太陽ごと吸い込まれる。」
「それで、大軍を率いる将軍閣下が一兵卒に何の御用でしょうか。」
「お前の妹から連絡を受けてたし、何より、お前のその魔法力、隠しきれてねえ。まるで超サ○ヤ人3だ。」
喩え方が日本人そのものの公爵殿下である。
今回の殲滅作戦で皮肉なことに、良くも悪くもそれらの制約を取っ払う形になってしまった。
したがってその地帯の領有が急務であった。
しかし、現地は極小ブラックホール爆弾(シュン曰く)が炸裂しただけあって、クレーターが生成されていた。
その極小な特異点は地中の洞窟内で発生したがためにまわりの岩盤が崩落し、クレーターといってもきれいな形ではなかった。
そのクレーターはのちにカルネアデス・クレーターと呼ばれることになるのだがそれはまた別の話だ。
(カルネアデスは当然、緊急避難という意味の『カルネアデスの板』からの引用である。)
皇国はこの地に軍隊を派遣するが、当然帝国側も黙ってることはない。
数万の大軍がクレーターの両側に陣取る形となった。
皇国側の総司令官は現皇帝の弟君、ドレル・レ・ラール公爵。
シュン(ネビラ)からすれば叔父上にあたる。
こんな事態になってしまったがゆえにシュンは認識阻害魔法をかけたまま、この軍事行動に参加していた。
身分は今のところ明かす気はない。
バカ皇女が何しに来たかとあざ笑われるだけだ。
もっとも禁呪・黒い深淵を使えばそんな空気など吹き飛ぶかもしれない。
しかし間近にあの魔法の作動プロセスを見て、自分には今のところ無理だと思ったのだ。
あれはまさに神の魔法だった。
自分がやったら制御できずにこの星を滅亡させてたのかもしれないと思ったのだ。
いや、この星どころか、この星系そのものを。
ぶっちゃけ、ビビったのだった。
真の意味でNOAの懸念を自覚したのだ。
覚醒してからというもの、貪欲に使える魔法を開発しようとしてきた。
それは劣等感で自分が大嫌いだったネビラの意思でもあったのだ。
それに地球時代の知識が加わったものだから、どうしても最強の殲滅魔法を作りたいという思いがあった。
そこで参考になったのは知ってる限りの宇宙論や理論物理学である。
相対性理論や量子力学、中二なら泣いて喜ぶシュレーディンガーの猫などだ。
それにテレビの宇宙関係の番組で見た、例えば超新星爆発モデルや中性子星衝突モデルのCGなども脳内でシミュレートした。
しかしそれらは結局、地上では使えないのだ。
敵だけならともかく、自分らすら危ない。
どう見ても星間戦争用の攻撃魔法だろう。
この世界の遠い未来なら必要かもしれないが、今、この時代にはいらない。
そういうわけでいくつか、現実的な攻撃や防御魔法を考え付いた。
深夜に起きだしたシュンは軍を抜け出し、空中に飛翔する。
敵前逃亡は死刑だがバレなきゃいいし、いざとなれば瞬間移動魔法で逃げる。
その前に皇女の権限ってのもあるが、それは使いたくはない。
1時間ほど飛翔したシュンは荒野に降り立つ。
ここなら遠慮なく開発できるってことである。
(・・・東京大空襲は民家を炎上させて上昇流を作り火災を拡大させた。とすると。)
シュンは小さな火を起こした。
それをいくつも作る。
(あとは風・・・か。)
普通は風の発生は温度差が関係していた。
これは普遍的なことだ。
地球での気象も木星や土星や天王星、海王星の気象も変わりない。
いわゆるホットジュピターでも理屈は一緒だ。
(よし)
脳内で一般的な大気循環モデルを作ったシュンはそれを魔法に当てはめていく。
空気が流れ始めた。
やがて小さな火が成長していった。
風も加わりやがて上昇流が生まれ、風の魔法を止めても火炎が消えないようになっていく。
この段階で必要なのは燃料・・・つまり火の魔法だけだ。
可燃物さえあれば、これも止めても大丈夫なような気がした。
火炎は竜巻にまで成長していた。
その時、背後から拍手が聞こえてきた。
「!!」
後ろを振り返ると・・・・。
そこに叔父貴が立っていた。
「・・・ドレル公爵殿下・・・・。」
「2人きりの時はよせよ。皇女殿下?」とどや顔でドレル公爵は言った。
「・・・!誰に聞かれましたか?」
シュンの問いに答えずドレルは言った。
「なるほど、ファイアーストーム、火炎旋風か。」
「・・・・。」シュンの警戒レベルが一気にMAXに跳ね上がった。
「よせよ。以前のヤム○ャ状態のお前ならともかく、覚醒したお前とはやりあいたくねえ。同郷だしな。いろんな意味で。」
顔色を変えたシュンを見て慌ててドレルは言う。
「・・・・まさかあなたも日本人なのですか。」
シュンは冷静に聞く。
「ああ、そうだよ。」あっさりと彼は認めた。
「叔父上、今までとキャラが違いすぎますね。」
「これが前世からの俺の地なんだよ。それにしても、面白いことやってるじゃねえか。」
「マイクロブラックホール生成魔法は開発中止しましたので。」
シュンは皇女の姿に戻った。
「ああ、やっぱりそういう物騒な魔法だったわけか。名前からやべえと思ったんだ。」
ドレルはうなずく。
「下手すりゃこの星・・・いや、太陽ごと吸い込まれる。」
「それで、大軍を率いる将軍閣下が一兵卒に何の御用でしょうか。」
「お前の妹から連絡を受けてたし、何より、お前のその魔法力、隠しきれてねえ。まるで超サ○ヤ人3だ。」
喩え方が日本人そのものの公爵殿下である。
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