メゾン・クローズ 光と闇のはざまで

平坂 静音

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「誰か、シスターを呼んできて」

 あたふたとアンナたちは逃げていった。背後ではアガットが泣きじゃくっている。

 騒ぎを聞きつけて他の生徒たちが集まっており、その後ろには数学教師のフーリエがいる。

「なにをやっているんだ、君たちは!」

 青白い顔をいっそう青くして、あわててペリーヌのうえに馬乗りになっているコンスタンスを引きはなそうとした。

 先夏さきなつの乙女の園に降りそそぐ陽光は、顔を真っ赤にして級友の髪をひっぱるコンスタンスを照らし出していた。




「君は停学処分になったよ。自宅で謹慎するようにと」
 
 誰もいない教室でぼんやりと座っていたコンスタンスは、フーリエのその言葉にかすかに頷いた。

 何度訊かれても、コンスタンスは喧嘩の原因を教師やシスターたちに言わなかった。

(私は何もしていないのに、コンスタンスがいきなり殴りかかってきたんです。まるで獣のようでした)

 と泣きながらペリーヌが学院長に訴えたのだ。

 いっしょに呼ばれていたアンナたちも口をそろえて言った。

(そうです、いきなりコンスタンスがペリーヌを殴ったんです)

 アンナよりかは気のちいさいジャンヌは目を伏せてつぶやいた。

(……コンスタンスが怒りだしてペリーヌを殴ったんです。……なんて言っていたかは、よく聞こえませんでした)

 気の弱いアガットは、なにも言わず泣きつづけることしかできなかった。コンスタンスもアガットに弁護してもらうことは望まなかった。真実を言えば、それはマリーを侮辱することになるのだ。

「なぁ、本当に理由は何だったんだい? 君がなんの理由もなく暴力をふるうなんて思えないんだ」

 フーリエが右腕にかかえている教科書を抱えなおすようにして問いかけてきた。コンスタンスは首を振った。

「なぁ……なにか、悩みでもあるのかい? 僕で良かったら相談にのるよ」
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