闇より来たりし者

平坂 静音

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家の秘密 三

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 未婚の娘が子どもを妊娠してしまい、しかたないので両親の子として育てるという、似たような話を小説かドラマで読んだか見た記憶があったけれど、まさか自分の家におなじ事情や秘密があったなんて……。
 そういう事は、案外むかしはけっこうあったのかもしれないけれど、私はかなりびっくりしてしまった。 
 そして、肝心なことが気になった。
「それじゃ、私の本当のお祖父ちゃんは? お母さんのお父さんていう人は誰なの?」
 母は黙ってしまった。
 私はドキドキしてきた。
 なんだか、一気にシリアスなドラマの世界に入ってしまった気分。訊いちゃいけなかったかなぁ……。
『家で働いていた人らしいんだけれど』
「え? 会社の従業員?」
『そんなんじゃなくて、下働きみたいなことしていた人』
 長崎の舟木の家は改築もかさねて、かなり縮小したと聞いたけれど、今でも充分大きな家で、豪邸と呼んでもさしつかえない。あんな大きな家なら、下男の一人や二人いてもおかしくないかも。
「その人、どうしてるの?」
『……お母さんが聞いた話ではね、舟木家からいくらかお金をもらって……つまり手切れ金ね。それをもらって、東京か大阪へ行ったらしいけれど。後は知らないわ』
 母の声はひどく素っ気なかった。
「生きてるの?」
『さあ。二度と連絡は無かったそうだし。まぁ、舟木家の方で、そう命じたのかもしれないけれど』
 命じる、という言葉に奇妙な違和感をおぼえて、私は一瞬沈黙した。母はそれに気づいたようだ。
『昔はね、家長の命令というのはとても重たかったのよ。まして舟木家みたいな田舎の大家になると、ちょっとしたお殿様みたいなものでね。お殿様がこうしろ、ああしろ、って言ったら、使用人はもちろん妻や子どもだって反対なんてできないものなのよ』 
「……ふうん」
 母の実父、つまり私の祖父という人はその後どうなったのだろう? 
 私はひどく好奇心がわいたけれど、考えてみれば、母にとっては、当たりまえながら辛い話だ。それ以上詮索するのはやめた。 
『ご免ね。変な話聞かせて』
「ううん。ちょっとびっくりしたけれど」
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