23 / 141
家の秘密 三
しおりを挟む
未婚の娘が子どもを妊娠してしまい、しかたないので両親の子として育てるという、似たような話を小説かドラマで読んだか見た記憶があったけれど、まさか自分の家におなじ事情や秘密があったなんて……。
そういう事は、案外むかしはけっこうあったのかもしれないけれど、私はかなりびっくりしてしまった。
そして、肝心なことが気になった。
「それじゃ、私の本当のお祖父ちゃんは? お母さんのお父さんていう人は誰なの?」
母は黙ってしまった。
私はドキドキしてきた。
なんだか、一気にシリアスなドラマの世界に入ってしまった気分。訊いちゃいけなかったかなぁ……。
『家で働いていた人らしいんだけれど』
「え? 会社の従業員?」
『そんなんじゃなくて、下働きみたいなことしていた人』
長崎の舟木の家は改築もかさねて、かなり縮小したと聞いたけれど、今でも充分大きな家で、豪邸と呼んでもさしつかえない。あんな大きな家なら、下男の一人や二人いてもおかしくないかも。
「その人、どうしてるの?」
『……お母さんが聞いた話ではね、舟木家からいくらかお金をもらって……つまり手切れ金ね。それをもらって、東京か大阪へ行ったらしいけれど。後は知らないわ』
母の声はひどく素っ気なかった。
「生きてるの?」
『さあ。二度と連絡は無かったそうだし。まぁ、舟木家の方で、そう命じたのかもしれないけれど』
命じる、という言葉に奇妙な違和感をおぼえて、私は一瞬沈黙した。母はそれに気づいたようだ。
『昔はね、家長の命令というのはとても重たかったのよ。まして舟木家みたいな田舎の大家になると、ちょっとしたお殿様みたいなものでね。お殿様がこうしろ、ああしろ、って言ったら、使用人はもちろん妻や子どもだって反対なんてできないものなのよ』
「……ふうん」
母の実父、つまり私の祖父という人はその後どうなったのだろう?
私はひどく好奇心がわいたけれど、考えてみれば、母にとっては、当たりまえながら辛い話だ。それ以上詮索するのはやめた。
『ご免ね。変な話聞かせて』
「ううん。ちょっとびっくりしたけれど」
そういう事は、案外むかしはけっこうあったのかもしれないけれど、私はかなりびっくりしてしまった。
そして、肝心なことが気になった。
「それじゃ、私の本当のお祖父ちゃんは? お母さんのお父さんていう人は誰なの?」
母は黙ってしまった。
私はドキドキしてきた。
なんだか、一気にシリアスなドラマの世界に入ってしまった気分。訊いちゃいけなかったかなぁ……。
『家で働いていた人らしいんだけれど』
「え? 会社の従業員?」
『そんなんじゃなくて、下働きみたいなことしていた人』
長崎の舟木の家は改築もかさねて、かなり縮小したと聞いたけれど、今でも充分大きな家で、豪邸と呼んでもさしつかえない。あんな大きな家なら、下男の一人や二人いてもおかしくないかも。
「その人、どうしてるの?」
『……お母さんが聞いた話ではね、舟木家からいくらかお金をもらって……つまり手切れ金ね。それをもらって、東京か大阪へ行ったらしいけれど。後は知らないわ』
母の声はひどく素っ気なかった。
「生きてるの?」
『さあ。二度と連絡は無かったそうだし。まぁ、舟木家の方で、そう命じたのかもしれないけれど』
命じる、という言葉に奇妙な違和感をおぼえて、私は一瞬沈黙した。母はそれに気づいたようだ。
『昔はね、家長の命令というのはとても重たかったのよ。まして舟木家みたいな田舎の大家になると、ちょっとしたお殿様みたいなものでね。お殿様がこうしろ、ああしろ、って言ったら、使用人はもちろん妻や子どもだって反対なんてできないものなのよ』
「……ふうん」
母の実父、つまり私の祖父という人はその後どうなったのだろう?
私はひどく好奇心がわいたけれど、考えてみれば、母にとっては、当たりまえながら辛い話だ。それ以上詮索するのはやめた。
『ご免ね。変な話聞かせて』
「ううん。ちょっとびっくりしたけれど」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる