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聖処女 一
しおりを挟む寮に帰りついたころ、友哉君からメールが来ていた。
(久しぶり。近くまで来てるんで、会えない?)
私はすぐ返信を送って、寮へ来てもらうことにした。
この寮の決まりでは、事務所に申請すれば部外者との面会がみとめられるけれど、家族以外は寮生の部屋のある二階以上には行けないことになっており、食堂か、ガラス張りの面会室で話すことになっている。こういうところは名門だけあってきびしいのだ。それとも女子寮というものは、たいていそうものなのかも。
私ははずんだ気持ちで、入り口で友哉君が来るのを待った。秋の日は暮れるのがはやくて、すでに辺りは薄暗い。
花壇や並木の向こうに来るはずの人を待つ自分が、なんだか、まるで、つい昨日までの、ううん、お昼に美菜としゃべっていたときの、ほんの数時間前までの自分とは別の人間になった気分。ちょっと照れくさい。でも、ちょっと得意。
並木道を、こちらへ向かってくる人影が見えた。
ちらほらと来る女子学生たちとは明らかにちがうシルエットに、私の胸はちいさく高鳴る。なんだか少女漫画のヒロインみたいで、内心照れくさくてたまらない。それをごまかすように、私はわざと大きな声をあげて、手をふった。
「ヤッホー、友哉君、久しぶり!」
「やあ、相変わらず元気そうだね、恵理ちゃん」
黒いシャツにジーンズすがたの友哉君が手をふりかえした。片手には紙袋をさげている。
「あれ、髪、切ったんだぁ」
通りすがりの寮生が、ちらりと視線を投げていく。ますます得意な気分。
私たちぐらいの年齢の女の子にとって、そばに男の子が――それがたとえ兄のような存在の親戚であっても、異性がいるという状況がとても心地良いのだ。
まったく男っ気の無い十九の女の子なんて、やっぱり寂しくて、物足りない。友達でも兄代わりでもいいから、やっぱりそばに異性の存在があって欲しいときがあるんだ、やっぱり。正確に言うと、まわりから、あの子は男とつきあったことが無いと見られるのが、少し気が重たいときがあるのだ。遊んでいると思われるのは絶対嫌だけれど、微妙なもので、まったく男づきあいが無いと思われるのもしんどいものなのだ。
こういうふうに人からどう思われるかばかり気にしているのは、結局幼稚だってわかってはいるんだけれど、それでもやっぱり人目を気にせずにいられないのだからしょうがない。
「うん。やっぱ、髪長いと、料理に落ちたりしたらまずいからね。あ、これ、母さんが持っていけって」
「うわぁ、稲荷寿司。ありがとう。夕食まだでしょう? いっしょに食べない?」
久しぶりにみた友哉君は、髪型が変わったせいもあって、ちょっと男らしくなった気がして、ちょっとときめいたものの、差し出されたお土産に、やっぱり異性ではなく、兄を感じてしまい、内心苦笑した。
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