君の左目

便葉

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彼の未来 …3

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「寧々…
俺は、寧々のご両親に、誠心誠意、謝りたい。
どんな事情があったとしても、俺は、許してもらえるまで謝り続けたい。
だから、寧々の両親に関しては、俺のしたいようにさせてほしい。
あの時、あの場所に連れて行ったのは、紛れもなく俺自身で、寧々を救えなかったのも俺なんだから…」

私は黙って聞いていた。でも、心ではそうじゃないと叫んでいる。

「近々、挨拶に行かせてほしい…
会ってもらえるかは、分かんないけど」

私が口を開こうとしたら、幹太は私のくちびるに優しく指を当てた。

「この話はまた東京に着いてからゆっくり考えよう。
ほら、もう、後一時間しかないよ。
しばらく寝ようか…
なんか、寧々にプロポーズしたら、ホッとしたのか急に眠くなってきた…」

幹太は本当にホッとしたのか、私の手を握りしめたまま静かに眠りについていく。
私は、そんな幹太の穏やかな寝顔を見ながら、これから先の事を考えて気分がブルーになった。

お父さんとお母さんに何て言えばいいのだろう…
私は、幹太には言わないけれど、心の中では覚悟を決めていた。両親の賛成がなくても私は幹太と結婚する。親子の縁を切っても、駆け落ちになっても構わない。私は、私のしたいようにする。もう、周りに振り回されたくない。

そして、何よりも幹太をこれ以上傷つけたくなかった。
そんな事を心の中で思いながら、私もつかの間の休息に入る。
大好きな幹太の温かい腕に包まれながら…


***  ***  ***


東京へ帰って来ると、また慌ただしい毎日が始まった。
でも、私も幹太も、もう以前の私達ではなくて、しっかりと二人で歩み始める未来の事を考えている。
過去は過去として、それぞれで区切りをつけた。私の左目の問題は、私と幹太の二人で向き合っていこうと話し合った。
必要以上に手を貸さない事、心配し過ぎない事、心配性の幹太にとっては酷な事かもしれない。でも、二人の未来にはきっと新しい家族が増えるはずで、新しい家族が増えた時に私は強い母でありたいとそう思っていた。
そんな話ばかりして、毎晩、楽しんだ。子供は何人ほしいとか、上が男の子で下が女の子がいいとか、名前は何にするとか。
でも、幹太は最後には決まってこう言った。

「子供は、まだ二年位はいらない。
寧々と二人の時間を過ごしたいから…
旅行行ったりして、たくさんデートしよう。
大人になってからの二人だけの思い出もたくさん作らなきゃだろ…?」って。


五月に入り、長いゴールデンウィークが始まった。でも、忙しい幹太は、その祝日でさえ会社へ出勤する事になっている。
私は、次の週末に私の両親に挨拶に行きたいという幹太のために、幹太の出勤日の祝日の日に、内緒で両親に会いに行くつもりでいた。

「寧々はお母さん達に会いに行かなくていいのか?」

私は幹太には黙っていようと思っていた私の計画を、やっぱり話す事にした。
きっと、幹太にとって、私の親に私達の結婚について話すことは、並大抵の勇気がなくては挑めない。幹太は幹太なりにしっかりと綿密に計画を立てているはずだし、それを邪魔したくはなかった。

「明後日の幹太が仕事の日に会いに行こうと思ってる。
それで…
幹太がいいって許してくれるなら、私、私達の結婚の事を、私の口から話したい」

幹太の表情が少し硬くなった。

「幹太…
幹太、うちの親は、きっと一筋縄じゃいかない…
あの事故以来、我が家は雰囲気が一変したの。
特に、お母さんは、怒りのぶつけどころを、あの街や小学校、そして幹太達に向ける事しか思いつかなかった。
私の記憶も曖昧で、そういう事も重なって、あの事故の日以前の話はタブーになった。
それが十五年続いたの…
その長い年月の間、きっと、真実を知ろうともせずに、ただ幹太達を憎む事だけに時間を費やしてきた。

まずは、私の方から話した方がいいと思う。
そうじゃなきゃ、幹太もうちの両親も、どっちも傷つく事になりそうなのが分かるから。
私が上手に話しをして、まずは幹太に会ってもらう約束を取り付ける」

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