55 / 69
彼の未来 …3
しおりを挟む「寧々…
俺は、寧々のご両親に、誠心誠意、謝りたい。
どんな事情があったとしても、俺は、許してもらえるまで謝り続けたい。
だから、寧々の両親に関しては、俺のしたいようにさせてほしい。
あの時、あの場所に連れて行ったのは、紛れもなく俺自身で、寧々を救えなかったのも俺なんだから…」
私は黙って聞いていた。でも、心ではそうじゃないと叫んでいる。
「近々、挨拶に行かせてほしい…
会ってもらえるかは、分かんないけど」
私が口を開こうとしたら、幹太は私のくちびるに優しく指を当てた。
「この話はまた東京に着いてからゆっくり考えよう。
ほら、もう、後一時間しかないよ。
しばらく寝ようか…
なんか、寧々にプロポーズしたら、ホッとしたのか急に眠くなってきた…」
幹太は本当にホッとしたのか、私の手を握りしめたまま静かに眠りについていく。
私は、そんな幹太の穏やかな寝顔を見ながら、これから先の事を考えて気分がブルーになった。
お父さんとお母さんに何て言えばいいのだろう…
私は、幹太には言わないけれど、心の中では覚悟を決めていた。両親の賛成がなくても私は幹太と結婚する。親子の縁を切っても、駆け落ちになっても構わない。私は、私のしたいようにする。もう、周りに振り回されたくない。
そして、何よりも幹太をこれ以上傷つけたくなかった。
そんな事を心の中で思いながら、私もつかの間の休息に入る。
大好きな幹太の温かい腕に包まれながら…
*** *** ***
東京へ帰って来ると、また慌ただしい毎日が始まった。
でも、私も幹太も、もう以前の私達ではなくて、しっかりと二人で歩み始める未来の事を考えている。
過去は過去として、それぞれで区切りをつけた。私の左目の問題は、私と幹太の二人で向き合っていこうと話し合った。
必要以上に手を貸さない事、心配し過ぎない事、心配性の幹太にとっては酷な事かもしれない。でも、二人の未来にはきっと新しい家族が増えるはずで、新しい家族が増えた時に私は強い母でありたいとそう思っていた。
そんな話ばかりして、毎晩、楽しんだ。子供は何人ほしいとか、上が男の子で下が女の子がいいとか、名前は何にするとか。
でも、幹太は最後には決まってこう言った。
「子供は、まだ二年位はいらない。
寧々と二人の時間を過ごしたいから…
旅行行ったりして、たくさんデートしよう。
大人になってからの二人だけの思い出もたくさん作らなきゃだろ…?」って。
五月に入り、長いゴールデンウィークが始まった。でも、忙しい幹太は、その祝日でさえ会社へ出勤する事になっている。
私は、次の週末に私の両親に挨拶に行きたいという幹太のために、幹太の出勤日の祝日の日に、内緒で両親に会いに行くつもりでいた。
「寧々はお母さん達に会いに行かなくていいのか?」
私は幹太には黙っていようと思っていた私の計画を、やっぱり話す事にした。
きっと、幹太にとって、私の親に私達の結婚について話すことは、並大抵の勇気がなくては挑めない。幹太は幹太なりにしっかりと綿密に計画を立てているはずだし、それを邪魔したくはなかった。
「明後日の幹太が仕事の日に会いに行こうと思ってる。
それで…
幹太がいいって許してくれるなら、私、私達の結婚の事を、私の口から話したい」
幹太の表情が少し硬くなった。
「幹太…
幹太、うちの親は、きっと一筋縄じゃいかない…
あの事故以来、我が家は雰囲気が一変したの。
特に、お母さんは、怒りのぶつけどころを、あの街や小学校、そして幹太達に向ける事しか思いつかなかった。
私の記憶も曖昧で、そういう事も重なって、あの事故の日以前の話はタブーになった。
それが十五年続いたの…
その長い年月の間、きっと、真実を知ろうともせずに、ただ幹太達を憎む事だけに時間を費やしてきた。
まずは、私の方から話した方がいいと思う。
そうじゃなきゃ、幹太もうちの両親も、どっちも傷つく事になりそうなのが分かるから。
私が上手に話しをして、まずは幹太に会ってもらう約束を取り付ける」
0
あなたにおすすめの小説
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
Short stories
美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……?
切なくて、泣ける短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる