君の左目

便葉

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彼の未来 …12

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幹太のお母さんは、幹太の事を想い涙が止まらない。そんなお母さんの代わりに今度はお父さんが話し出した。

「幹太が寧々ちゃんのご両親に挨拶に行く前に、僕達が先に寧々ちゃんに会っておくべきだと思って、こんなに急に会ってもらったんだ…

寧々ちゃんのご両親が幹太の事を許してくれるのなら、僕達はまた飛んででもご両親に挨拶に行くつもりでいるから。
どうか、どうか、寧々ちゃんのお父さんとお母さんにもよろしく伝えてほしい。
幹太を認めてほしいと…
幹太の寧々ちゃんへの想いは今に始まった事じゃない、本物だと…」

私は涙を拭った。もう、過去の事に縛られるのは、今日で最後にしたい。特に、幹太の両親に限っては、私との間には何もわだかまりはないのだから。

「お父さん、お母さん、私の方こそどうぞよろしくお願いします。
幹太さんが言うには、私達の中に、もしあの事故がなかったとしても、絶対に二人は結婚してたそうです。

だから、もう、事故の事は忘れて下さい。
その方が私も楽になりますので…」

幹太のエピソードで二人は顔を見合わせて笑った。
そこから、私と幹太の両親は、色々な話をした。幹太がどれだけ私を想って涙を流したか、面白おかしく、でも、時には目には涙を浮かべて話してくれた。

「こんな事、幹太の前では絶対に話せないけどね」って、肩をすくめて笑いながら。

そして、私達は琥珀亭の一押しディナーをいただき、楽しいひと時を過ごした。
私達は幹太が帰って来るのをしばらく待っていたが、日帰りで帰る予定の二人は、幹太を待たずに帰る事にした。

「幹太にはいつでも会えるし、大丈夫よ。
それに、今日、私達は、寧々ちゃんに会いに来たんだから」

そう言ってくれる二人を、私は駅まで送った。
改札を通って何度も手を振る二人を見ていたら、胸が苦しくなった。
どこの親も子供の事だけを心配して生きている。
幹太の両親も、私の両親も、子供を想う愛情に何の違いもない。

私はお母さんの顔が頭に浮かんだ。お母さんにも認めてもらいたい。お母さんを過去の呪縛から解放させてあげたい。

幹太の両親の笑顔を見ながら、私はお母さんの事を思い途方に暮れた。

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