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加恋はささやかな夢を見る
③
しおりを挟むトオルさんはフフッと鼻で笑う。
そして、逆転して、私を強く抱きしめた。
「俺が加恋ちゃんを見つけた日から、加恋ちゃんは俺の全てなんだ。
加恋ちゃんのためなら、俺はこの命を投げ出しても構わない。
あ、こんな俺って、やっぱり重い?」
重い…
重すぎます…
「でも、一番に願うのは加恋ちゃんの幸せだから、加恋ちゃんが望む事は何でも叶えてあげたい。
でも、それは俺の手のひらの上でだけどね。
加恋ちゃん以上に美しい女性はいない。
どんな男も加恋ちゃんの魅力にひれ伏す中で、俺は加恋ちゃんを俺のものにしたんだ。
あ~、でも、こんな俺の愛って、セメント四個分より重いよな…」
いえ、四個分とかより四億個分だと思いますが…
「重くなったら、重いって言って…
その時にはちゃんと考えるからさ…」
はい…
でも、そんな素直なところが大好きです。
「うん、分かった。その時にはちゃんと言う」
トオルさんは満面の笑みを浮かべ、私に優しくキスをする。
それは最高に素敵な大人のキス…
私の方こそ抗えない…
涼し気な微笑みと余裕に満ちたキスと抱擁は、私の思考を一瞬でトオルさん一色に変えてしまう。
それは、まるで魔法のように…
そして、そんな幸せで愛に満ち溢れた日々の中で、私はトオルさんに大切な事柄を告白する事を決めた。
それは、モデルの仕事の事…
実は、私は、モデルの仕事を辞めていないという事。
今の私はモデルとして自他ともに認めるくらいに脂がのっている状態で、でも、事務所へはモデルの仕事は結婚のためしばらくお休みを下さいとお願いしてあった。
私の方では休みの期間は期限を決めず、何となく長期でとほのめかしていたのだけれど。
ところが三日前、事務所から久しぶりに連絡があった。
パリコレに続く三大ファッションショーの一つ、ニューヨークで行われる有名ブランド、ジェイクハミルトンのファッションショーの最終オーディションへの参加の案内状が届いたらしい。
最大の難関と言われている写真動画審査をパスし、日本人では私を含め三人しか選ばれていないという事。
私はこのチャンスをものにしたかった。
合格するなんて夢にも思っていない。
でも、チャレンジする事に夢がある。
私は、夢を叶えるために前へ進みたい…
トオルさんに相談があると連絡をすると、東京タワーの近くにある行きつけのレストランで食事をする事になった。
私は最上級のお洒落をして、その店へ行く事にした。
私がまだモデルだという事を、今の私を見て納得してもらいたい。
そして、約束を破った事をちゃんと謝りたかった。
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