はじまりと終わりの間婚

便葉

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まひるの誕生日

…7

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ミチャは椅子を引いて、私を特等席に座らせた。
そして、ワインクーラーに入った冷えたワインを取り出し、器用にコルクを抜き、私のグラスにワインを注ぐ。
ミチャは自分のグラスにもワインを注ぐと、私の目の前に座った。
テラスの窓は開いているけれど、日が暮れた海は真っ暗で何も見えない。
でも、かすかに聞こえる波の音と、ふんわり漂う潮の香りに、私の五感は気持ちよく満たされた。
 
「まひるの二十五回目の誕生日が、いい思い出になりますように…
 
まひる…
本当に、誕生日おめでとう」
 
私は胸いっぱいで返す言葉が見つからない。
ミチャの柔らかい笑顔が本当に大好きで、次から次へ涙が溢れ出す。
 
「まひる、何で涙が出るの…?」
 
ミチャは心配そうに私の顔を覗き込む。
私はタオルで涙をぬぐうと、泣きながら笑った。
 
「ミチャ、乾杯しよう。
この沖縄の夏を絶対に忘れないように」
 
ミチャは笑顔で頷くと、私のグラスに自分のグラスを合わせた。
私は、テーブルに座るロボット君にもグラスを向けて「ありがとう」と囁いた。
 
そして、夕食を済ませた私達は、外のテラスで食後のコーヒーを飲んでくつろいでいる。
もちろん、ミチャが淹れてくれた美味しいコーヒーは、沖縄のホテルでも味は変わらない。
あっという間に楽しい時間は過ぎて、もう、外は、完全に夜の世界になった。
私達は、リクライニングチェアをフラットにして、今にも落ちてきそうな満天の星空にため息をつく。
 
「本当は、まひるが喜びそうなプレゼントを、色々考えてたんだ…
でも、何がいいのか分からなくなって、結局、こんな感じで納まった」
 
「もう、最高の誕生日だよ。
心から感動してる」
 
私はそう言いながら、でも、ミチャが思いついたプレゼントの内容を知りたくなった。
片肘をついて、ミチャの方へ顔を向ける。
 
「ちなみに、どんなプレゼントを考えてたの?」

ミチャは真上に見える星空を見ながら、ちょっとだけ笑った。
 
「もしかしたら、まひるはそっちの方が良かったかもしれないよ」
 
「え? 何、何?」
 
ミチャはまた含み笑いをする。
 
「まひるって、コスプレが大好きだろ?
だから、沖縄の海にちなんだコスプレを二人でして、記念写真を撮ろうかと思ってたんだ」
 
え、それでも良かったかもなんて、口には出しません。
でも、ミチャがそんな事を思いついてくれたのが、本当に嬉しい。
 
「だけど、そういうプレゼントって極秘に進めなきゃならないのに、僕はコスプレのノウハウを全く知らないし、果たして、ホテルの人達がそのイベントに付き合ってくれるかも分からなくて、悩んだ末にやめた」
 
「それって、どんなコスプレだったの?」
 
ミチャは自分の名案を早く教えたいらしく、私を真っすぐに見た。
そして、口角を器用に上げて、私の大好きな笑顔になる。
 
「シーサーになりたかったんだ…」
 
「シ、シーサー??」
 
シーサーって、沖縄特有の伝説の獣像。
沖縄では家の門や屋根に据え付けられ、悪霊を追い払う魔除けとして大切なアイテムの一つ。
で、でも、シーサーって、怪獣みたいな犬だよね?
いや、最強の獅子、ということはライオン?
私が戸惑っていると、ミチャはしたり顔で更に付けくわえる。
 
「シーサーって、いつも二対だろ?
それってオスとメスで、オスは災難を防いで、メスは幸せを呼び込むらしい。
なんか、いいなと思った。
まひるは、猫とか豹とかそんなコスプレが好きみたいだし、ピッタリだと思ったんだけど…」
 
私はミチャの突拍子もない名案に驚きながら、でも、感動している。
ミチャって、私達の事を本物の夫婦って思ってくれてるの…?

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