はじまりと終わりの間婚

便葉

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まひるの誕生日

…9

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ミチャは目を細めたまま、まだ、私を見つめている。
 
「上手だった…?」
 
「うん、上手過ぎて、頭がクラクラしてる」
 
明らかに喜んでいるミチャがいる。
私はただ素直な感想を述べただけなのに。
 
「そっか… 嬉しいな」
 
そんな事を言っちゃうミチャは、本当に可愛い。
そして、ミチャのキスの余韻は、私の思考を暴走させた。
生温かい外気と部屋から漂うエアコンの冷気が入り混じるまろやかな空気は、そっと私達を包み込み、ブレーキをかけるはずの私の理性をどこかに追いやってしまう。
 
「ミチャ… またキスして…」
 
ほら、こんな事を言ってしまう…
でも、本当にそう思うんだもの…
でも、ミチャの目はもう笑っていない。
 
「…今日は。
…まひるの誕生日だから、特別だよ」
 
そう言うと、ミチャは体を起こし、私の体も優しく抱き起した。
私の髪を耳にかけながら、またくちびるを重ねてくる。
とろけるって、初めて実感した。
私は、情けないほどとろけて、とろけ過ぎて、ミチャのキスなしではもう生きていく自信がない。
そんな私の事をまるで分かっているように、ミチャのキスは容赦なく私の体も頭も心までぐちゃぐちゃにする。

「ミチャ…」
 
「うん…?」
 
ミチャの腕の中はもう私の居場所。
この私だけの場所を誰にも渡したくない。
 
「私… ヤバイかもしれない」
 
ミチャの口元の近くで私がそう言うと、ミチャは軽くキスをしてから私の顔を覗き込む。
 
「私…
ミチャの事を…
これ以上好きになっちゃうと、マジでヤバイの…」
 
いつの間にかミチャの胸に抱かれ、ミチャの程よい筋肉質の体にもたれかかる私は、私の中にある厄介なものが顔を出したがっているのを感じていた。
 
「何がヤバイの?」
 
私はミチャの胸の中に顔を沈める。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイよ…
思いがけないミチャの胸板の厚みに、変な意味でムラムラしてしまう。
私のこのヤバイ癖?病気?を、芸術家特有の性質として理解してもらいたいけど。
いや、芸術家特有の性質なんかじゃない。
私自身の特殊な一癖です、残念ながら…
 
「ミ、ミチャの裸を描きたいって言ったら?」
 
一瞬、ミチャの体が固まる。
私からは見えないけれど、きっと、一点を見つめて頭の中で言葉の意味を考えている。
 
「裸? 僕の?」

私はミチャの胸の中に顔をうずめたまま、大きく頷いた。
 
「わ、私、人を好きになったら、その人の裸の絵を描きたくなるの…
そんな変な病気を持ってて…」
 
「まひるは僕の事を好きになったの?」
 
ミチャは、私の変な癖より私がミチャを好きだという事の方が興味があるみたい。
それは、すごく嬉しい事だけど。
 
「ミチャが好き…
ミチャを好きになっちゃいけないなんて、そんな決まりはないよね?」
 
ミチャは苦笑いをしながら頷いた。
 
「僕がまひるの芸術魂に火をつけたみたいな?
そんな感じなのかな?」
 
そんな感じではありません。
ただの癖です。
でも、そんな事言ったら嫌われそうだから、言わないけど…
 
「ミチャ…
やっぱりいい、今の話は忘れて…」
 
私は自分の中の自制心を必死にかき集めてそう言った。
妙に昂っている抑えきれない欲望を頭の隅の方に追いやって、何もなかったふりをして静かに微笑んだ。
でも、ミチャは、コロコロ変わる私の言動にどうやらついていけていないらしく、まだ何かを必死に考えている。
 
「裸って、どういう感じなの?
上半身とか?」

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