はじまりと終わりの間婚

便葉

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道也の誕生日

…4

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レースのカーテン越しに見える外の景色は、もう夕暮れが迫っている。
という事は、ミチャが桜子と会う時間も迫っているという事。
 
私は体を起こしちゃんとした姿勢でソファに座ると、風磨に全てを話した。
全てといっても大して何も知らないけれど、とりあえず、今日までの経緯を事細かく話した。
風磨は神妙な顔をして静かに聞いている。
そして、私の話を全部聞き終わると、今度は桜子さんの情報を、風磨は淡々と私に話し始めた。
 
「俺が桜子に初めて会ったのは、ミチャの家に遊びに行った時だった。
その頃、ミチャに彼女ができたって風の噂で聞いてた。
それも、すごい美人だって」
 
私は顔をしかめる。
そういう情報は、できるだけ省略してほしいんですけど。
 
「ミチャってあんなだろ?
彼女ができたからって、何も変わらない。
その頃は会社を立ち上げたばかりで、とにかく忙しい時だった」
 
「どっちから告白したの?」
 
ミチャのあの性格で、それでそんな忙しい時期だったのなら、何で付き合ったりしたのだろう?
私は、ミチャの過去が知りたかった。
子供の時のミチャ、高校生、大学生、いろいろな頃のミチャを知りたい。
そんな私は、もう完全にミチャに惚れている。
私以外の女性と会ってると思うだけで、息をするのも苦しいくらいだから。
 
「桜子だよ、決まってるじゃん」

風磨もミチャを愛している。
だから、今の私達は同志だ。
それはそれで心強いけれど。
 
「ミチャはどうでもよかったんだ。
でも、あの性格だから、来るものは拒まず。
それでいて、綺麗で可愛い桜子だから、ミチャは、皆から羨望の眼差しで見られてちょっと浮かれてた」
 
浮かれるな、ミチャ!
好きでもないのに、付き合うな!
もう、私、完全に怒っている。昔のミチャに…
 
「桜子って、結構あざとい。
見た目は、儚げで控えめで、いわゆる守ってあげたいって思われるタイプ。
ミチャがどう思ってたかは知らないけど」
 
儚げ… 控えめ…
私の中には存在しない言葉達。
その言葉を聞いただけで、もう負けた気がした。
そういう女の子の魅力は、私達女子はよく知っている。
 
「俺がミチャの家に突然遊びに行った時、ミチャは家に居なかった。
っていうか、その頃のミチャはよく職場に泊まってたんだ。
ミチャが夢中なのはロボットだけだから。
 
俺は、ミチャに貸してたCDを取りに家に行った。
鍵は持ってたし、ミチャが居ない事も知ってた。
 
でも、部屋に入ると、電気がついてて桜子が居て」
 
私の特技は、絵を描いているせいか、様々な場面がパラパラ漫画のように頭に浮かんでくる事。
それは動画だったり線画だったり、でも、今、私の頭を占めているのは、動画のミチャと線画の桜子だった。
特に、桜子は少女漫画に出てくるヒロインのように、儚げで麗しくて…

「それで?」
 
風磨は呆れかえって天井を見上げた。
 
「その時、桜子は、一人でビールを飲んでた。
急に部屋に入って来た俺を見て、面食らってたよ」
 
ビ、ビール??
儚げで控えめで、少女漫画のヒロインの桜子が?
 
「ま、ビールは誰でも飲むもんだし、好きなら好きで全然いいと思ってたんだけど、その時、桜子は俺にこう言ったんだ。
 
道也には黙っててって」
 
私は、噴き出る怒りで具合の悪さも吹っ飛んだ。
その証拠に、風磨が持ってきたオレンジジュースを一気に飲み干すくらい。
 
「その人ってどんな性格の人なの?
儚げで控えめで美人さんなんでしょ?」
 
風磨はその桜子が相当嫌いらしい。
だって、風磨には似合わない冷めた目つきで遠くを見ているから。
 
「俺の考えでは、桜子ってめちゃくちゃプライドが高いんだと思う。
ミチャに関しては、自分から告白して付き合い始めたけど、今までの男みたいに、ミチャは中々自分の思い通りにはいかない。
だって、その時もビールを飲みながら、ミチャのスケジュール帳を見てたくらいだから」
 
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